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日本企業はどの分野で負けはじめ、どの分野でまだ勝っているか?

トランプ大統領の登場や中国のさらなる勢力拡大など、混乱を極めた2017年。国内でもさまざまな問題が顕在化しています。世界は、そして日本はこの先どうなってしまうのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では著者の津田慶治さんが、政治経済・異常気象などますます不安定化する世界と日本の現状を詳細に分析し、今後の景気の行方や日本が選択すべき政策について持論を展開しています。

不安定化する世界と日本

トランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都と承認したとか、ビットコインが乱高下しているとか、この頃、不安定な世界になってきた。この原因と結果を見よう。

異常気象の多発

世界的な温暖化というが、今年の夏は、雨が多く気温が低かった。中川毅著『人類と気候の10万年史』を読むと、温暖な気候の時期は、地球の気候では、高々10%の時期しかない。このため。この温暖な時期を間氷期という。

現在、本来なら氷河期になってもおかしくないが、二酸化炭素の濃度が高く温暖化になり、今後の予想が困難になっているという。

氷河期に向かう寒冷化と二酸化炭素濃度による温暖化の真逆な要素のぶつかりで不安定化しているようである。中川先生によると寒冷化とは気候の不安定化ともいえるというので、現在そのような状況にあり、異常気象が多発しているようである。

しかし、この気候現象と同じような状況が、いろいろな経済面政治面に出ているように感じる。

不安定化する世界情勢

トランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都と承認したが、この大きな根底は、自身の支持層を維持するためである。ロシアゲートで、娘婿のクシュナー氏が危ないので、ユダヤ人とキリスト教右派の支持を強固にする必要からおこなったようであるが、世界からの反発で米国の孤立化を進めてしまった。

米国の指導力がなくなると、世界の問題を解決する能力が落ちるのと、ロシアと中国は内政不干渉という方針で世界の混乱を止めないし、東南アジアなどでは中国への対応力がなくなり、中国の要求をのまざるを得なくなる。中国の勢力拡大を止める手段がなくなる

一方、中国の経済成長が7%を持続して、世界的な経済拡大が続き、経済的な繁栄を世界は享受している。このため、世界の株式市場は高値を追う展開になっている。政治的な混乱と経済的な繁栄という真逆な状態が出現している。このような現象で、不安定な世界が来年も続くことが予想できる。

不安定化する中国経済

中国は「一帯一路」政策で、中国製品の販路を拡大している。中欧の鉄道貨物便が定期化して、安価な中国製品の市場が東欧に拡大し輸出が伸びて、中国国内の欧州製高級品需要で輸入も拡大しているし、「一帯一路」の建設ということで海外に積極的に進出している。

しかし、「一帯一路」の海外の道路・鉄道建設などで建設中断になるケースや安価な建設費で受注したが、建設費用が倍以上になるケースが多発しているために、銀行の貸出基準が厳しくなってきた。また、国有企業の借入額が膨大になり、これ以上借りることができないようである。債券市場も金利が上昇しているし、商品市場でもチャイナショックが起きている。

というように、一帯一路のメリットとデメリットが拮抗してきている。中国経済の今後は不安定化することが考えられるようだ。中国経済が不安定化すると、世界経済も不安定化する。

日本の現状

日本企業の業績は、最高益を叩き出す企業が増えて絶好調である。日本国内の消費はほとんど増えていないので、この売り上げの伸びは、全て外需である。

日本企業はテレビなどのAV系で負け、半導体やIT分野でも負け始めているが、素材系・化学系・重機・輸送機器などの分野では優位にある。川重や日立の鉄道車両、コマツの土木建築系機械、安川のロボット、日本電産の小型モーター、日本精工のベアリング、東レの機能性素材など、日本のものづくりは他を圧倒しているから世界経済が成長すると、日本企業の受注も増えるのである。

鉄道車両で負けたのがGEであり、鉄道車両では中国の低価格車両と日本の高品質な車両の二者が勝利している。このため、欧米メーカーは、生き残りをかけて合併している。

というように、欧米企業はこの分野で負け始めている

米国企業はIT化などで差別化を図るが、H1Bビザ発給制限で中国・インド企業に負ける可能性も出ている。

日本もIT化に必要なSTEM人材が少なく中国やインド企業と組む必要があるようだ。日本16万人、米国60万人、中国460万人、インド260万人が、1年間のSTEM系大学の卒業生である。プログラム作りには論理思考ができるSTEM系人材が必要である。

もう1つ、バーゼル3完全合意により、2019年から完全適用になり、年金基金などが買える国債は国債の格付けがAランクまでとなり、日本国債の格付けA+から下がると海外の年金機構が買えなくなるので、格付けを維持する必要になっている。

すでにノルウェーの年金運用機関が日本国債を売却しているし、三菱UFJ銀行も国債の買取をしないと宣言した。現時点でも国債は安全資産ではなく、2019年にはリスクウィイト20%になる。

財政均衡化を行わないと、国債の格付けは下がるので、国債の金利上昇が起きる可能性もあるが、日銀が市場介入して金利を0%に維持しているので、格付けが下がっても金利は上昇しないが、円安になる可能性は高い。2019年には円高を心配する必要はなく、円安を心配することになる

このように日本経済は好調なのに、財政均衡化を図らないと国債の格付けが低下するという危機になる。このため、増税をしないといけない状況にある。増税すると国内消費は下がることになるので、日本経済も好調な部分と増税という経済的に心配な部分が出て来る。

ということは、日本経済も不安定化する可能性が高いことになる。特に、2019年からバーゼル3の完全適用で増税ラッシュになると景気を押し下げる可能性が高いし、その時に世界景気が下がるとダブルパンチになる可能性もある。

日本の選択

日本国家は2050年では1億人程度になり、15歳から64歳未満の人口が50%で、従属人口も50%と半々になる。人口減少は仕方がないが、人口の高齢化は待ったなしである。

国家の人口構成で移民を認めないという国民の合意を尊重して、高質人材流入以外は日本人だけとすると、それなりに国家構造を変える必要がある。高齢者優遇ともいえる社会保障制度を見直し、勤労者には増税をお願いして、特に高額所得者にはより増税をお願いして、中福祉高負担という政策になる。日本は近傍に仮想敵国があり、防衛費も必要になるからである。米国とも同盟関係を持続することが重要である。

それを国民に理解してもらう必要がある。円安になり日本国民は、全体的に貧しくなる。しかし、世界的な高品質なニッチ製品を生む工業国家と世界企業の本社・研究機関があるが、工場はないという企業国家であり、大規模で機械化した農業国家という側面を持つ国家になる可能性が高い。

もし、移民を今後もしないなら、持続可能な国家像を作り、政府は国民に理解させることが必要である。金融緩和だけに頼り国家産業・社会政策の無策は、そろそろ限界である。

さあ、どうなりますか?

image by: 自由民主党 - Home | Facebook

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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