ビジネスの現場において、営業スキルや接客術など実務的なことももちろん大切ですが、そこに「品格」が加われば企業やショップの価値がより向上するのではないでしょうか。今回の無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』では著者でコンサルタントの梅本泰則さんが、新渡戸稲造の『武士道』を引きながら、品格を高めるために必要な3つのポイントを紹介しています。
お店の品格
連日、角界の騒動がニュースになっています。その中で、「横綱の品格」ということも話題に上りましたね。横綱には、それ相応の品格が求められるのです。「品格」とは、いったいどんなことを指すのでしょう。相撲協会では、「品格」について具体的には示していないようです。ネットで検索してみると、横綱の品格についていろいろな人がさまざまな意見を述べています。「品格」について、とらえ方は人それぞれです。
また、相撲には「相撲道」という言葉があります。これは、力士が守るべき考え方や行為ということでしょう。その「相撲道」を実践する模範となるのが横綱で、そこに「品格」が必要だということです。とはいえ、この「相撲道」も明文化はされていません。ですから、「相撲道」の解釈も人それぞれです。相撲協会は一刻も早く「品格」や「相撲道」について詳しく説明をする必要があります。
そこで、私なりに「品格」について考えてみました。もしかしたら、スポーツショップ経営者の「品格」につながるかもしれません。そして、そのことを考えるのに参考になる本がありました。新渡戸稲造の『武士道』です。ご存知のように、新渡戸稲造は明治の教育者で、旧五千円札の肖像にもなっています。
新渡戸は、外国の人達に日本人や日本人の心を理解させるために英語で『武士道』を著わしました。当時ベストセラーになり、その後日本の理解者が現れます。米大統領のルーズベルトもその一人です。
実は、この『武士道』の中に、「武士の品格」が書かれています。これは、「横綱の品格」としてもとらえることが出来るのではないでしょうか。
武士の品格
読んでみると分かりますが、日本人の精神が実にうまく説明されている本です。今の日本を作っているのが「武士道」であることも分かります。
もちろん「武士道」は、江戸時代に形作られたものです。その時代、庶民は武士にあこがれをいだいていました。そのため、次第に「武士道」が庶民の中にも浸透していきやがて、日本人の文化ともなっていったのです。
それはともかく、武士の教育で最も重んじられていたのは、「品格の形成」でした。そして、その品格の形成に必要な柱は「知」「仁」「勇」の3つだと言っています。「知」「仁」「勇」の考えは、儒教から来たものです。儒教の書『中庸』に、「知、仁、勇の三者は天下の達徳なり」とあります。
「知」とは知識ではなく、「叡智」「知恵」のことです。そして、富は知恵を妨げるものとして、武士は損得勘定をしないことを教えられています。
「仁」とは、優しく柔和で母親のような徳で、他人を思いやる仁愛の心のことです。そして、その思いやりの心が外に現れたものとして「礼」があります「礼」とは、寛容にして慈悲深く、人を憎まず自慢せず、高ぶらず、相手を不愉快にせず、自己の利益を求めず、憤らず、恨みを抱かないという態度のことです。
また、「勇」とは、正しいことを行う勇気を言います。そして、その行動をする勇気もありますが、どんな時でも冷静に落ち着いた心の状態を保つことも勇気だと、書かれています。
私には、この「知・仁・勇」の考え方が腑におちました。これが「品格」なのです。この「品格」は、スポーツショップの経営者にもあてはまるのではないでしょうか。少し具体的に考えてみます。
スポーツショップの品格
「知」とは、「叡智」「知恵」のことでした。スポーツショップの経営者に必要な知恵で最も重要なのは「志」です。社会に対してどのような役に立ちたいか、という思いといっていいでしょう。また、どうしたらお客様や従業員に喜んでもらえるかということでもあります。その方法は「知恵」から生まれるのです。
そして、武士道では、損得勘定を考えないということでした。これは、経営では難しいことのように思えます。しかし、決して儲けてはいけないと言っているのではありません。手にした富でぜいたくをしてはいけないと言っているだけなのです。そして、その富を社会に還元することが「知」であると言っています。
「仁」は、思いやりの心を持って他の人達に接する、ということです。従業員への思いやりは、給与や待遇にも現れるかもしれませんが、重要なのは、普段の接し方でしょう。お客様への思いやりは、価格を安くすることではありません。そのお客様に合った商品を提供し、うまく使う方法を伝えることです。そのためには、お客様のことをよく知っておかなくてはなりません。取引先に対しても、同じことです。どうしたら取引先のためになるかを考えましょう。決して、自分のためだけを考えてはいけません。
その次は「勇」です。「勇」とは、新しいことに挑戦する勇気のことではないでしょうか。変化をする勇気かもしれません。また、何事にも冷静に対処できる心構えも必要です。今こそ「勇」が求められている時代だと思います。
いかがでしょうか。「品格」のあるお店であるには「知・仁・勇」の3つをこころがけることだと分かります。ぜひ、「武士道」を読んで、その中身を理解しましょう。
■今日のツボ■
- 「品格」の柱は「知・仁・勇」である。
- スポーツショップにも「知・仁・勇」は必要である。
- 「武士道」を読んで、お店のあり方を考えると良い。
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