トランプ「中国とロシアは、米国の国益を損なう」宣言で再び窮地に

 

勝てない国家安全保障戦略

この国家安全保障戦略ですが、「表向き」はこれでいいかもしれません。しかし、本気で、「これがアメリカの戦略だ」と考えているのなら、かなりヤバいです。なぜでしょうか?

この戦略は、要するに「中国とロシアはアメリカの敵だ!」ということでしょう。そう言われた中国とロシアは、どうするでしょうか? そう、「アメリカに敵視される者同士一体化していこう」となるでしょう。いくらアメリカとはいえ、中国とロシアを同時に敵にまわして勝てるはずありません

今よりずっとパワーがあった、戦後のアメリカ。それでも、1960年~70年代は、「ソ連に勝つのは難しい」と考えられていた。それでどうしたかというと、中国と組むことにした。1970年代初めの話です。

1991年末にソ連は崩壊しました。その後、しばらくアメリカ一極時代が続いた。しかし、08年以降、中国のパワーが強大になってきた。中国、いまではGDPでも軍事費でも世界2位になっています。

もしアメリカが中国に勝ちたいのなら、「ロシアと組むこと」「中ロを分裂させること」が必要です。しかし、「国家安全保障戦略」で、「中国も敵」「ロシアも敵」と宣言した。それで、中ロの仲はますます良くなるでしょう。

アメリカが、中ロを分断すべき理由

以前書きましたが、中国にも弱点はあります。そう、中国は、石油を主に中東から入れている。しかし、中東と中国を結ぶ海は、事実上アメリカの支配下にある。もし米中対立が激化すれば、アメリカは、中国が中東から石油を買えない状況をつくりだすことができる。

ところが、中国は、陸続きの大国ロシア、あるいは中央アジアから石油ガスを買うことができる。このルート、いくらアメリカでも、止めることはできません。だから、アメリカは中ロを分裂させなければならない。しかし実際は、逆に「中ロを一体化」させています。

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