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学級崩壊の原因は教師にあり。なぜ優秀な先生は体罰を与えないのか

いじめと違い、体罰などによる指導死や学級崩壊となると、被害に遭った側に非があったような見方をされるケースが多々あります。しかし、無料メルマガ『いじめから子供を守ろう!ネットワーク』では、それらの原因はすべて「教師」にあると断言。その理由と、保護者の心得についても詳しく記しています。

教師の体罰やパワハラから子どもを守るには

体罰については、これまでも色々と意見が交わされています。「体罰はいけない」、「暴力だ」、「スポーツのチームをよくするため体罰は必要だった」、「子どもから感謝されてきた」等々です。ここでは、かくあるべしの見方ではなく、別の視点でひも解いてみたいと思います。

体罰死について

体罰や教師による指導死は、これまでも学校の中で一定の割合で存在しています。各報道によれば、今年4月、仙台市で、中学2年の男子生徒が飛び降りて死亡しました。教師が授業中に生徒の口にガムテープを貼ったほか、自殺前日にも生徒の頭をたたくなどしたことを仙台市教委が市議会に報告しています。

また、記憶に新しい事件では、福井県池田町で、担任による厳しい指導を受けて中学2年の男子生徒が自殺しています。町教委の調査報告書では、叱責を受けていた際に、生徒が過呼吸の症状を訴えていたり、土下座しようとしたりするなど、精神的に追い詰められていたことが明らかにされています。自殺した生徒は、母親に「僕だけ強く怒られる。どうしたらいいかわからない」と泣きながら訴えて登校をしぶることもあった、と報道されています。逃げ場のない状況下でのこの生徒の気持ちをおし量ると涙を禁じえません。

さらに、保護者へのインタビュー報道の中で、「調査委員会の報告の中で、息子が発達障碍の疑いがあったことが言われているが、小中学校からそんなことは一度も指摘されたことはなく家庭内でも問題はなかったので、今さらそのようなことを言われても…」という発言があったことが印象に残っています。

一般的に、いじめ自殺の時と同様に、体罰死においても、第三者機関が設置され、調査します。その調査では、「なぜ、教師がそのような指導に至ったか」に対する分析よりも、「児童生徒やその家庭側にいかに問題があったか重点が置かれてしまうのが一般的です。

教育委員会や第三者委員会は、決して隠しているつもりはありません、もちろんそうでしょう。しかし、調査報告書を読むと、教師の資質や性格、クラスを崩壊させた経歴などに、読み手の意識が向かないようにできています。そういう意味で、教師は守られていると言えます。

民間会社で、重大な事故があったとき、会社側ではなくクライアント側ばかりに責任を求めるのはおかしいでしょう。しかし、教育界においては、それが当たり前のように行われています。それぞれの問題点を深めてみましょう。

体罰に至る理由について

なぜ、教師は体罰に及んでしまうのでしょうか。以下のような理由が挙げられます。

  1. クラス運営は担任の責任で、クラスが荒れると力量がないとみなされる。したがって、指示に従わない児童生徒に注意を集中させることになる。
  2. 同じ指導をしているのに、素直に従う生徒が存在している一方で、指導に従わない、注意散漫や行動優先の子どもがいる。そのため、子どもに原因があると思いがちになる
  3. 児童生徒に理解させるスキルを磨く方向ではなく、排除の理論に向かう。注意や指導が重なり、徐々にエスカレートしていく。

教師の大きな声やアクションは、一時、生徒を畏怖させ、行動を中止させます。しかし、生徒には「自分だけが怒られる」と認知されるだけで、大方は効果を有しないのです。

これらの行動に走りがちな根底には、「自分は正しい。自分は悪くない。変わらない子どもが悪い。自分はこのやり方で成功してきた」という教師側のごう慢さがあったりします。公立学校は1年間でリセットされる組織です。よほど優秀な上司がついて、軌道修正に当たらない限り、教師個人が反省したり軌道修正されることはほぼない、と見ていいでしょう。

しかも、残念なことに、大きな事件になってしまっても、先生は、たいていは病休に入り逃げるのが常です。周囲の教員仲間も「たいへんだったね、運が悪かっただけ」と同情的です。

そこまで大きく報道されなくとも、小さな学級崩壊は日常的にあります。崩壊させた先生は、過去にも、別の学校で担任の時に崩壊させていることが多いのです。授業参観してみれば、一目瞭然です。「授業がわかりにくい」、「指示が明確でないという特徴を持っている教師のクラスで学級崩壊が起きやすいのです。コミュニケーションが児童生徒側に理解されているかどうかではなく、いかにも自分本位なのです。

ここまで、仙台市や福井県池田町など、体罰や教師による指導により子供たちが自殺する事件が相次いでいること、教師が体罰などに走る根底には、「自分は正しい。自分は悪くない。変わらない子どもが悪い。自分はこのやり方で成功してきた。」という教師側のごう慢さがあるように感じる等と述べました。さらにもう少し掘り下げたいと思います。

調査委員会、第三者委員会の問題について

一般的に、いじめ自殺の時と同様に、体罰死においても、第三者機関が設置され調査します。しかし、調査の角度や視点が気になります。いじめ自殺や体罰、指導死による調査委員会報告書は公開されています。自死した生徒本人の学習成績や部活や生活態度など、学校生活から得たデータや分析、生徒の家族からの聞き取りによる家庭生活での様子、本人の資質や性格、クラスや部活での人間関係など膨大な情報量です。

もちろん、「家族のご協力に感謝する」とも記載されていますが、「指導してきた先生の資質や力量、その指導内容、受けてきた研修や上司の指導や教育員会からの助言」等々の本来、明らかにしなくてはならない部分は公表されません。被害生徒と教師とでは、比較対象にならないくらい、学校側が持っている教師の情報は公開されないのです。そのため被害者に不利な情報ばかりが目立つこととなるのです。

ある指導死の調査委員会の報告書では、「専門家による適切な助言を受けずに、指導を続けていた教員と学校の責任」を述べています。第一義的には正当な面もありますし、日本のマスメディアもそういった報告書が出ることで納得してきた面が相当にあります。

しかし、よくよく考えてみてほしいのです。こんなに簡単にすまされる報告書では意味がないのではないでしょうか。実は、調査委員会のメンバーを選ぶのは教育委員会ですし、報酬もそこから出ています。遠慮や忖度(そんたく)という隠ぺいは確かにあります。

本当に大切なことは、「どんな教育と指導がなされたのか、そして教師のスキルは充分だったのか」「それは個々の能力の問題なのか、組織マネジメントの問題だったのか」といった、本質的な内容の検討が欠かせません。

自殺した生徒の個人の問題に起因することなのか、それとも、教員の不適切な指導による事件、不適切な教師と知っていながら放置してきた学校や教育委員会の問題なのか、という点が重要です。その上での、指導内容の検討なのではないか、と問いたいと思います。

保護者から見た教師

教師には厳しい言い方になりますが、幼稚園や保育園、小学校や中学校、高校へと子どもを託して、子どもの発言や保護者面談を通して、教師と向かいあってきた保護者の視点から見れば、教師に力量の差があることは明らかです。

私が見た事例では、荒れた学級、崩壊学年の建てなおしができたのは、力量のある教師陣が転勤してきたことが最大の理由でした。あっというまにシフトを組んで、立て直し体制をとったことで、すぐに正常なクラスになりました。

優秀な先生方は怒りません体罰を用いません完全にアンガーマネジメントを体得しています。経験値も多く、指導に自信にあると同時に自戒の意識もあります。謙虚な方々です。教師間の連絡、報告、相談体制がとれ、教員同士に信頼関係があり、指導の目的を一致させています

かつて、教師は尊敬の的でした。今後もそうあってほしいと思いますが、学歴の差が激しかった過去の時代と異なり、高学歴で職業体験もある母親からも厳しい目で教師が見られている時代です。教師は高度な研鑽を通じて、自己覚知をして、つねに振りかえり、反省し、教育力、指導力をアップさせていく努力を怠ってはならないと思うのです。

保護者として気を付けるべきこと

一方で、保護者にも気を付けるべきことがあります。少子核家族化の現代では、子どもたちは基本的に欲求が充足され、友だち感覚の家族関係の家の中で、育っていきます。よほど規律重視でない限り、ぶつからないのです。

しかし、学校に入学したとたん、コミュニケーション上の様々な課題が浮かび上がってきます。その行動や発言が、その子自身の個性であり、魂の奥底深くから出てくるものであったり、また正義感やその熱情からくるものであれば、親は真剣に子どもを守るために腹をくくらねばならないでしょう。安直な「病院受診のすすめ」、「発達障碍というレッテル張り」、「投薬づけ」等には、一定の注意を払う必要があります。セカンドオピニオンを求めることも検討する必要も出てきます。大切なことは、「いじめや体罰から子どもを守るという強い決意です。

知り合いの太郎君(仮名)から、「中2の時に、実はいじめに遭っていた」と聞いたのは、大学生になってからです。いじめ不登校の親友をかばって発言したことが担任の不快を買い、その後、女性担任から、ねちねちと言われ続けてきたこと、その空気を読んで、成績不振の暴れん坊たちから暴行を加えられるようになったこと、しかも、周囲の友達も見てみぬふりをし続けていたということでした。教師の態度がこのような事態を招いたのです。

教師も人間です。好き嫌いがあり、時として「クレームをつける悪い生徒には体罰も然り仕返しも当然」と考えるかもしれないのです。

さらに、太郎君はテストの成績は一番でしたが、提出物の様態が悪いとして、かなり低い採点をされていました。気に入らない生徒なので、内申書を低くされたのです。太郎君について、「変わっている個性の持主だけれども、親として気が付いているところを教えてください」とレッテルを張らず、真剣に聞かれたのは、公立高校1年の最初の保護者会でした。高校の教育の結果は、大学受験合格の実績そのものです。この学校で強みを伸ばしてもらった太郎君は、のびのびと高校時代を謳歌し次々と大学合格をかちとりました。今、太郎君は、理系の大学院を卒業し、一部上場企業の技術者として、日本の最先端産業の屋台骨を支えています。

文部科学省の職員の皆様や教員で、このメルマガを目にしている方がいらっしゃいましたら、ぜひ聞いていただきたいのです。

自己保身を捨てさり徳力のある聖なる教師を育ててくださいそのような教師をめざしてください。失敗からも学び、失敗を成功に変えていく勇気をもってください。その教師は必ず尊敬されるはずです。

また、教育委員会は、たった一度の失敗で教師を評価するのではなく、経験からいかに学んだか、研鑽努力したか、多くの生徒の個性を伸ばしたかを評価する制度に改革してください、ということです。

保護者の皆様にも、申し上げたいと思います。子どもの善性を信じてその個性を解き放つことが親の使命である、と心得てほしいのです。子どもの未来を信じて、子どもや子どもたちを取り巻くこの世界が永遠に美しく光り輝くものとなりますように、願ってやみません。

教育委員会 スクールソーシャルワーカー 村崎京子
元教員、精神保健福祉士、社会福祉士 そして母親

image by: Shutterstock.com

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【著者】 いじめから子供を守ろう!ネットワーク 【発行周期】 週刊

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