大小合わせて1万基以上とも言われる鳥居が立ち並ぶ伏見稲荷大社。まさに「別世界の入り口」を思わせるその雰囲気が人気のスポットです。今回の無料メルマガ『おもしろい京都案内』では著者の英学(はなぶさ がく)さんが、その奥に続く神聖な世界・稲荷山を往く「お山めぐり」を紹介してくださっています。
お山めぐり
伏見稲荷大社は、全国に3万ある稲荷神社の総本山です。朱塗りの鳥居が整然と立ち並ぶ境内は、まるで別世界に誘われたような景色です。今回はその奥に続く稲荷山をめぐるお山めぐりをご紹介します。
お山めぐりは伏見稲荷大社の祭神・稲荷大神が鎮座する稲荷山の一ノ峰から三ノ峰を参拝するものです。稲荷山には鳥居や伏見稲荷大社の末社のお塚などが各所に点在しています。
参拝とはいえ山登りなのでそれなりにキツいです。それだけに下山してきた時は心の中がスッキリとして清々しい気持ちになります。その時の気持ちはただの登山とは違った達成感もあります。
伏見稲荷大社といえば千本鳥居ですよね。実はその先にさらに神聖な世界が広がっているのをご存知ですか? 通常は千本鳥居を抜けた場所にある奥社奉拝所まで行くと引き返しまいますよね。しかしお山めぐりをする場合は、奥社奉拝所からさらに1周約4キロおよそ2時間の道のりが続いています。
山を巡るので、歩きやすい靴と服装でお参りしましょう。道のりには沢山の道標が用意されているので安心ですよ。
それではルート順に見どころを紹介していきます。千本鳥居を抜けた場所にある「奥社奉拝所」を左へ行くと、「稲荷お山めぐり」のスタートです!
奇妙大明神
最初のポイントは、「奇妙大明神」という松の木が祀られている場所です。「膝松さん」とも呼ばれています。枯れた松の根が持ち上がって左右二股に分かれています。この木の根元をくぐると足腰の病が治るといわれていました。ただし、危険なため今はくぐるのは禁止されてしまいました。また別名「根上がり松」とも呼ばれています。「根」と「値」をかけ「ねあがり」の名から、給料や株の値上がりを願う人たちの信仰を集めています。
新池
元の道に戻って山を登っていくと、「新池」が見えてきます。家出人など尋ね人がいる場合、この池のほとりで手を打ってこだまが返ってきた方角にその人の手がかりがあるとの言い伝えがあります。
熊鷹社
熊鷹社は新池の畔にたっています。一発勝負をしたい時にお参りする人が多いといわれています。熊鷹社で願い事をして、新池で2拍手すると幸運を示す方角からこだまが返ってくるそうです。こだまが近くから返ってくれば願いは早く叶うと言われています。
三ツ辻
さらに登ると三ツ辻に到着です。ここから四ツ辻までは、「三徳さんの石段」と呼ばれる400段の石段が続きます。途中には「大松大神」の塚があります。そのひょうたんのような形から、お酒の神様として崇められています。
また近くに三徳大神を祀る「三徳社」があります。三つの特、すなわち衣・食・住に関するご利益があるといわれています。
四ツ辻
四ツ辻からは伏見から西の景色が一望できます。絶景を見ながらここでひと息つきましょう。四ツ辻から先は道が分かれますが、時計回り、反時計回りとどちらへ進んでも、また四ツ辻に戻ってきます。時計回りで紹介します。
眼力社
眼の病が良くなる、先見の明・眼力を授かるというご利益があるといわれています。そのため、商売人・企業経営者・相場関係者が沢山お参りに来ます。
薬力社
無病息災、身体健康のご利益があるといわれています。眼力社とともに、健康を願う多くの人たちが訪れる場所です。医学技術向上や商売繁盛(薬関係のお仕事、薬局、製薬会社など)のご利益から、医師や製薬会社の方の参拝も多いとか。
長者社
刀鍛冶や刃物業者の信仰が篤い社です。謡曲で有名な三条小鍛冶宗近が名刀「小狐丸」を鍛えた場所といわれています。この故事にちなんで、日本刀型の手水が奉納されています。その時名刀を鍛えるのに用いたのが、ご神体の岩「劔岩」だったと伝えられています。
長者社から山頂の一ノ峰へは、急勾配の階段が続きます。稲荷山の最高峰の一ノ峰は、標高233メートルで、そこに祀られているのは末広大神です。末広大神は、何事も末広がるという神様で、とても縁起の良い神様が祀られています。
千本鳥居を抜けた場所にある奥社奉拝所までで引き返していた方は是非一度お山めぐりしてみて下さい。
お正月の初詣で全国的に有名な伏見稲荷大社。その奥には表の顔とは全く違った神聖な参道が山頂まで続いています。
いかがでしたか? 京都は日本人の知識と教養の宝庫です。これからもそのほんの一部でも皆さまにお伝え出来ればと思っています。
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