特別休暇の日数、退職金の額など、会社の規模や時代の流れに合わせて「就業規則を変更したい」と考える経営者は少なくありません。しかし、その変更が従業員にとって不利益なものである場合は注意が必要です。今回の無料メルマガ『採用から退社まで! 正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』では著者で社労士の飯田弘和さんが、「就業規則の見直し」について詳しく解説しています。
御社では、就業規則の見直しを行っていますか?
就業規則を変更しようとすると、多くの場合、「不利益変更」となります。なにか1つでも、従業員にとって不利益となる変更箇所があれば、あるいは、誰か一人でも不利益を被ることがあれば、それは、「不利益変更」として法の規制を受けます。
就業規則の不利益変更は、基本、禁止されていますが、「条件」付きで認められます。その「条件」について、今回お話します。
まずはじめに知っておいて欲しいことがあります。就業規則を「変更」しようとする場合には、労基法第90条で、「労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない」ということ。これは、「意見を聴け」ば良いのであって、「合意」を得る必要はありません。
しかし、「就業規則の不利益変更」を行うには、さらに、労契法第10条の適用も受けます。ですから、これから挙げるいくつかの条件をクリアしないと、変更が有効にはなりません。
そこで最初に考えなければならないこと。就業規則の不利益変更に、従業員が「合意」しているかどうか? 「合意」していれば、不利益変更でも問題なし、OKです。
問題となるのは、「合意を得られない」場合。この場合には、次に挙げる6つの条件を総合的に判断します。判断の結果、「不利益ではあるけれど、それでもなお、合理的である」場合には、不利益変更がOKとなります。
- 条件1:変更後の就業規則が周知されている(これは絶対条件です。周知されていなければ、そもそも就業規則に効力はありません)
- 条件2:労働者の被る不利益の程度
- 条件3:業務上の必要性
- 条件4:変更後の規定の相当性
- 条件5:労働組合等との交渉状況
- 条件6:その他、変更に関わる諸事情
以上2~6の条件からなる「就業規則の変更の必要性」と、「労働者が受ける不利益の程度」を比べます。バランスが取れていれば、「就業規則の不利益変更」が効力を持ちます。バランスを欠いていれば、その変更は「無効」です。このバランスの良し悪しを判断するのは司法です。裁判になって判決が出るまでは、いくらバランスを欠いていても、その就業規則は一応有効です(もちろん、労基法等の法違反があってはダメです)。
就業規則の変更は、場合によっては大変な作業となります。特に、反対が強く取り付く島もない場合、就業規則変更作業は困難を極めます。しかし、就業規則を見直すことで、御社が目指す会社の姿を実現し、御社が求める人材が、「集まりやすい」「働きやすい」「定着しやすい」会社へと変貌するチャンスでもあります。御社の明るい未来のために、ぜひ、チャレンジしてみてください。
以上を踏まえて、あらためてお聞きします。
「御社では、就業規則の見直しを行っていますか?」
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