MAG2 NEWS MENU

歴史文化を守ろうとする日本と台湾、政治利用で破壊する中国と韓国

先日掲載の「台湾では今、古き良き『日本統治時代の建物』が観光地化されている」などでもお伝えしたように、かつて日本が彼の地に残した建造物等を「歴史遺産」として保存する台湾。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では著者で台湾出身の評論家・黄文雄さんが、日本統治時代の蒸気機関車2両が台南市により修繕・一般公開されるというニュースを取り上げながら、歴史文化を守る日台と政治利用で破壊する中国との決定的な差について解説しています。

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2018年1月10日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め1月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

【台湾】歴史文化を守る日本と台湾、政治利用で破壊する中国

放置されていた日本統治時代の蒸気機関車、台南市が修繕へ/台湾

「フォーカス台湾」によれば、今年、南部・台南市内の公園に30年余りにわたり放置されていた日本統治時代の蒸気機関車2両が、同市政府によって修繕される見通しとなったそうです。文化局の担当者は、修繕作業を通じて機関車の価値を引き立てたいと語っているとのこと。

以下、報道を引用します。

修繕されるのは、旧台湾総督府鉄道「C55 1」と「D51 2」。C551号機は1935年、始政40周年記念の台湾博覧会開催に合わせて日本から持ち込まれ、台湾に初めて導入された最新型の蒸気機関車として同年から走行を開始。D512号機は1940年に投入された。戦後は2両とも台湾鉄路管理局に引き渡され、C551号機はCT251号機に、D512号機はDT652号機に改称された。台湾に現存するC55形は2両、D51形は4両のみ。

 

2両は引退後の1983年に台南市政府に寄贈され、体育公園に設置された。だが、雨風から車体を守る囲いは取り付けられていたものの、解説板も立てられておらず、ひっそりと置かれているのみだった。市は2015年、その希少性などから、2両をそれぞれ市の有形文化財(古物)に登録。2016年には日本統治時代のプラットホームの雰囲気を再現しようと、周辺設備の改善工事に着手した。工事は先月完了し、今月15日から一般公開される。

台南市は台湾南部の古都として知られており、大都市である台北市とは対照的で、日本の京都を連想させる地域です。また、台南市は戦後になってから国民党軍の虐殺が行われた悲劇の都市としても知られ、歴代の市長たちは名勝古跡の保存にかなり力を入れてきました。

台南市は、台湾の古都として多くの古い資料を保存しています。私はかつて大学関係者とシンポジウムに参加し、縄文文化最南端の台南縄文文化の遺跡を見学したこともありました。

台南政府は、台湾を最初に統治したオランダ時代の遺跡「紅毛城」(ゼーランジャ)をはじめとした戦前までの古跡を、どのように保存するかにずっと腐心してきました。記録によれば、オランダ人が台南の安平港に築城する前に、すでに日本人村があったという説もあります。ただ、その後、その日本人たちがどこへ消えてしまったのかについて、司馬遼太郎は『台湾紀行』を執筆する前にかなり調べたということですが、今でも謎として残っています。

江戸の鎖国以前に、海外に進出し南洋に出た日本人は約10万人と推定されており、江戸の鎖国時代になると帰国することさえ禁止されていたため、南洋に出た日本人は各地の土となって消えてしまったのでしょう。

日本統治時代の建造物は、もともとの造りが強固であるため、いまでも多くの建物が保存されています。しかし、それでも修繕は必要で、古いものを保存しようとすれば修繕費の発生は必須です。それも少なくない金額が必要となります。蔡英文政権は、文化面にも力を入れているため、そうした予算はしっかりと確保しているということなのでしょう。

台湾にとって日本統治時代は重要な転換期でした。それを象徴する文物を、保存して後世に語り継ぐという作業は、台湾がどのような歴史を辿ってきたのかを語るために、また、台湾人のアイデンティティを形成するためにもとても重要なことです。今回の蒸気機関車の保存と展示にも、そうした意図があるから行われるのであり、決して単に観光地を増やしたいからというわけではありません。ただ、それが結果的に日台友好の証となり、絆を深めることにつながるならば、一石二鳥というものです。

台湾が発現した「歴史文化」の保存と継承について、日本人と中国人との考え方には大きな違いがあります。日本人は命をかけて保存」したいという心意気がありますが、対照的に中国人は目先の政治的都合に合わせて徹底的に破壊しつくして根絶させてしまうのです。この習性は大中華だけでなく小中華の韓国も同じです。韓国歴代大統領の交替も、「易姓革命」のように「更地の思想」を繰り返しているのです。

国民党が台湾に入ってきてからは、ほとんどの古跡をつぶし、そのかわりに台湾各地の幹線道路に孫文や蒋介石の号である「中山」を冠した道「中山路」「中正路」と名付けました。さらに、蒋介石の銅像を台湾各地に4万5,000体も設置しました。これは、1キロメートル内に蒋介石の銅像が一基ある計算となります。古跡を破壊する中国人と保存する日本人のメンタリティ、心性の違いは、台湾の古跡をめぐって証明されたと言ってもいいでしょう。

台湾人は、中国人とは古跡を潰し歴史を捏造する民族かということを知りました。かつて中原を統一した満州人やモンゴル人が、すべての漢人を「家奴」(奴隷)にして、頭髪を辮髪に、服装は「旗服」(チャイナドレス)に改めさせたのは、いかにして中国人の「歴史捏造」をやめさせるかという考えからであり、満州人やモンゴル人の間では中国人の「歴史捏造」を改めようと「考証学が発達しました。

こうした歴史文化を徹底的に保存しようとする台湾と、歴史を根絶して捏造しようとする中国の対立は、文化摩擦や文明衝突を生み、現在の中台対立の一因となっています。それは本質的には「ウソの衝突です。

中国と台湾の文化をめぐる衝突は、主に19世紀中頃に台湾に入り、高雄や古都台南から全国に発展してきた台湾キリスト長老教会(スコットランド国教系)の背後にすでに潜んでいました。

台湾長老教会は現在では台湾最大のキリスト教教派となっています。そしてこの長老教会は、国民党による独裁と弾圧が続いた時代、1977年に「人権宣言」を発表して台湾人の権利確保を主張、中国人の国民党と対峙するようになりました。ここにも「誠」と「ウソ」の対立があるのです。台湾長老教会は、現在も台湾独立やひまわり学生運動も支持しています。

ところで、台湾は、独自文化の発信や台湾のイメージ向上にも力を入れており、その一環として映画やドラマ製作への助成台湾書籍の海外翻訳出版への補助を積極的に行っています。

文化部が台湾書籍の海外翻訳出版に補助金支給、申請受付中(~9/30)
映画製作の奨励

オリジナルコンテンツを世界に向けて発信する力がある国は、世界への影響力を持つことができ、その存在力を世界で示すことができます。台湾が求めているものは、まさにこれであり、そのためにコツコツと文化面への助成を行っているというわけです。しかし、ここでも中国と台湾の溝を象徴するような出来事がありました。

台湾の人気女優である林心如(ルビー・リン)が主演兼プロデューサーを務め、台湾文化部からの助成金2,000万台湾ドル(約6,700万円)を受けて製作された台湾ドラマ『我的男孩』が、去年末からオンエアされていますが、それについて中国のネットで批判が上がり、中国の動画サイトから完全削除されました。蔡英文の民進党政権下で助成金を受けたドラマは「台湾独立派の作品だ」ということで、クレームがあったことが原因とされています。

「台湾独立支持派」のドラマ!? ルビー・リン最新作、中国でいきなりネットから消える―台湾

以前にもこのメルマガで触れましたが、芸能界は政治の影響をとても強く受けます。特に中国のような一党独裁の国では、芸能界は政府の思いのままです。香港が中国に返還されてから、香港の芸能界も中国支持者しか活躍できないようになりました。記憶に新しいところだと、韓国、台湾、日本などの混合グループであるTWICEの周子瑜(ツウィ)が、台湾国旗を持って動画を撮影したことから、中国で台湾独立派だと糾弾され、謝罪に追い込まれた事件がありました。

また、最近では、中国の女優である趙薇(ヴィッキー・チャオ)の監督2作目となる映画『沒有別的愛』から、台湾の俳優戴立忍(レオン・ダイ)が台湾独立派とのレッテルを貼られ降板することになりました。本人は、何度も否定していましたが、中国では否定すればするほど盛り上がるようです。

「台湾独立支持派」をボイコットせよ!中国ネットユーザーの猛威に負けた? 台湾人俳優が映画降板―台湾

一方で、台湾の芸能界はその逆です。台湾の人気芸能人でも、中国支持を表明するとすぐにブーイングを受けるような、そんなムードがあります。

前述の林心如についても、台湾のネットでも批判が起きています。というのも、2016年7月、中国の南シナ海における領土権主張について、オランダ・ハーグの仲裁裁判所で中国の主権を認めない判決が示されましたが、林心如は中国版ツイッターで、中国支持を表明するスローガンをシェアした数少ない台湾人タレントの1人でした。そんな彼女に台湾政府からの助成金を受け取る資格はないと、ネットで批判されているのです。

「中国支持のくせに国の補助金もらった」女優ルビー・リン、ネット上で猛批判を浴びる―台湾

ほとんどの台湾人タレントは中国で活路を見出しています。そのため、中国で独立派だと糾弾されないように、その言動には異常なほど慎重になっています。中国人は、ネットを通じて台湾人タレントの揚げ足を取っては独立派だと糾弾して追い込みます。

そのうち、台湾が日本統治時代の文物を保存することにも中国人が口を出し日帝支持だなどと騒ぎ出すかもしれません。せっかくの台湾政府の助成金が、中国の横やりで妨害されたり、無意味に終わってしまうことがないよう、警戒が必要です。

続きはご購読ください。初月無料です

 

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2018年1月10日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

<こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー>

※1月分すべて無料の定期購読手続きを完了後、各月バックナンバーをお求めください。

2017年12月分

・カタルーニャ独立阻止を支持しながら沖縄独立を煽る中国の卑劣/児童虐待が生む無感情な社会(2017/12/26)

・中国ばかりか世界から嫌われる韓国の「ノーショー根性」/いまだ中国が有毒な偽物食品、偽薬品の輸出大国であり続ける理由(2017/12/19)

・沖縄は中国支配が進む「オーストラリアの危機感」を直視せよ/台湾で神様になった日本人はまだまだいる!(2017/12/12)

・同盟国からも見放されはじめた「一帯一路」/アジアにおけるソフトパワーの中継基地となる台湾(2017/12/07)

※1ヶ月分648円(税込)で購入できます。

黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実』(2018年1月10日号)より一部抜粋

黄文雄この著者の記事一覧

台湾出身の評論家・黄文雄が、歪められた日本の歴史を正し、中国・韓国・台湾などアジアの最新情報を解説。歴史を見る目が変われば、いま日本周辺で何が起きているかがわかる!

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」 』

【著者】 黄文雄 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎週 火曜日 発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け