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TVが報じぬ小室哲哉「最後の言葉」は、介護問題の本質そのものだ

先日行われた小室哲哉さんの会見。当初、週刊文春に報じられた不倫疑惑の釈明会見とみられていましたが、小室哲哉さんは突如として音楽活動からの引退を表明。さらに、今まであまり明かすことのなかった妻・KEIKOさんの病状についても赤裸々に語りました。メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』の著者で、自身も父の介護経験のある健康社会学者の河合薫さんは、この会見を「介護問題の本質」と評価し、他人に打ち明けられない介護の辛さについて言及しています。

※本記事は有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』2018年1月24日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

小室ショックと介護の雨の冷たさ

先週、「小室哲哉さん引退」の記者会見をたくさんのメディアが取り上げましたが、報道されなかった最後の言葉があります。

僕たった1人の人間の言動などで日本であったりとか社会が動くとはまったく思っておりませんが。

先ほども言いましたように、なんとなくですが、高齢化社会に向けてであったりとか、介護みたいなことの大変さであったりとか、社会のこの時代のストレスであったりとか、そういうことに少しずつですけど、この10年で触れてきたのかなと思っているので。

こういったことを発信することで、みなさんも含めて、日本をいい方向に少しでもみなさんが幸せになる方向に動いてくれたらいいなと心から思っております。微力ですが、少しなにか響けばいいなと思っております。ありがとうございます。

記者会見には賛否両論ありましたが、私はあの会見自体が介護問題の本質」であり、最後のコメントはもっとたくさんの人に伝えるべき内容だと思いました。

超高齢化社会で、誰もがある日突然、大切な人の変化に向き合うことを余儀なくされたり、自分が変化する立場になるかもしれないご時世なので、もっとみんなで考えるべきだと感じたのです。

そこで会見の翌日、Yahoo!ニュースにコラムを書きました(“小室ショック”と他人事ではない介護問題のリアル)。

コラムの反響は想像以上に大きく、一日で100万アクセスを突破。

Yahoo!トピにもあがったので、既にお読み下さった方もいらっしゃるかもしれません。

さまざまな意見、メッセージをたくさんの方からもいただきました。

その内容も交えつつ、裏返しメガネでも取り上げます。

コラムにも書いたとおり、介護問題の本質は実際に冷たい雨に濡れた人じゃないとその冷たさがわからない」点です。

しかも、その雨の降り方は一様ではなく、横から殴りつけるような雨がふることもあれば、突然“ドンピカガッシャン”と雷鳴がとどろき、ショック状態に陥ることもあります。

今回、「一人で抱え込まない方がいい」という意見をたくさんいただきました。

でも、それが難しい。傘を借りようと願ったところで、傘の借り方が実に難しいのです。

私も父のことがあったときに、「どうした? 話聞くよ。言うだけでも少し楽になるかもよ」と優しい手を差し伸べてくれる友人がいました。

ところが、話すと余計にツラくなった。相手が気遣ってかけてくれる言葉と、自分の心の乱れの齟齬が大きすぎるとでもいうのでしょうか。

遠い。とにかく遠くて

「ああ、もう人に話すのはやめよう」ーー、

そう思いました。

逆に、経験者だと何も言わなくても通じるものがあって。

ちょっとしたきっかけで、「実は私も……」などと告白しあい、「お互い大変だな」といったたわいもないひと言で救われたり。

要するに、「介護」とひと言でいっても、家族の関係性、親(パートナー)の状況、仕事の問題、金銭的な問題、自分の生活……etc etc

10人いれば10通りの状況があります。

しかも、介護の最終章は大切な人を失うこと

そのすべてが、実に複雑に絡み合う。

どうほどいたらいいのかわからないほど、グチャグチャになり。

自分の頭と心と身体もバラバラで。出口の見えない廻廊に彷徨い続けてしまうのです。

介護する人と介護される人の“関係性の変化”も、しんどさのひとつです。

それまでは「父と娘」という絶対的な関係性が、変わってしまうのです。

小室さんが、「大人の女性」という言葉をつかっていたのも、KEIKOさんとの関係性の変化へのとまどいがあったのだと思います。

寄せられた意見の中には次のようなものがありました。

●私は父が脳梗塞で倒れ、そのひと月後に夫も交通事故を起こすという事態に直面しました。ホントは父の介護をしたかったのですが、ひとりではどうすることもできず施設にいれました。でも、そのことをとても後悔しています。父が新しい環境に適応できず、認知症が進んでしまったのです。

 

●10年近く母親の介護をしています。なんとか周りの助けを借りて生活していますが、先が見えない状況に息苦しさを覚えることがあります。

 

●父が他界し、母が要介護となりました。それまで仲よくしていた親戚と遺産のことでもめることになり、人間不信に陥っています。

 

●今回取り上げてくれてありがとうごいました。私はフランスで暮していますが、高齢の親と離れる選択をしたことを後悔しています。カワイさんの記事をよみ、親のことを思い出し電話をしました。

などなど、全ては紹介できずごく一部ではありますが、これを読むだけでもそれぞれの介護にそれぞれの事情があることがおわかりいただけると思います。

つまり、介護問題を他人事にしないためには、いろんな声を伝えていくことだと思うのです。

実際のストーリーを見聞きし、擬似体験する。

そのためにメディアは介護経験者の言葉をもっと取り上げるべきだし、その都度議論すべきだと思います。

今回、某コメンテーターが「あそこまで赤裸々にKEIKOさんのことを言うのはどうか?」と意見し、話題となりました。

私は、むしろそれを隠さなくもいい社会。車椅子でも、言葉が上手くでてこなくても、忘れてしまう事が多くなっても、元気だった頃の姿とは180度違う姿になっても、その事実を「可哀想」という哀れみの感情ではなく、誰にでも変化は起こり、変化が起きてもそれはそれとして温かくありのままを受け入れられる社会

そんな社会であって欲しいと願っています。

みなさんの中にも、経験者がいらっしゃると思います。是非ともそのリアルを教えてくださいね。

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image by: Wikimediacommons(Norio NAKAYAMA)

※本記事は有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』2018年1月24日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』(2018年1月24日号)より一部抜粋

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米国育ち、ANA国際線CA、「ニュースステーション」初代気象予報士、その後一念発起し、東大大学院に進学し博士号を取得(健康社会学者 Ph.D)という異色のキャリアを重ねたから書ける“とっておきの情報”をアナタだけにお教えします。
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