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あえて言おう。安倍総理の韓国・五輪出席は「戦略的」に正しいと

「慰安婦合意見直し」を示唆した韓国・文在寅大統領に対して憤る日本人の声も多く聞かれる中、「平昌冬季五輪」の開会式に出席する意向を表明した安倍総理。この決断により、総理への世間の風当たりが強まることが予想されますが、無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者で国際政治に詳しい北野幸伯さんは、「日本の真の国益のためには正しい判断」との見方を示しています。その論拠はどこにあるのでしょうか。

安倍総理の平昌五輪開会式出席は「戦略的」に正しいのか???

今、私の目の前に、『嫌われる勇気』という本があります。なぜ、私はその本を見ているのでしょうか? そう、私には今、「嫌われる勇気」が必要だからです。日本の真の国益のために、大多数の意見と正反対のことを書かなければならない。今回は、まさにそんな話。皆さん、この話、もうご存知でしょう。

安倍首相発言全文=平昌開会式出席

時事 1/24(水)10:38配信

 

安倍晋三首相が24日午前、自身の平昌冬季五輪開会式への出席に関し、首相官邸で記者団に語った発言の全文は次の通り。

 

事情が許せば、平昌五輪開幕式に出席したい。2020年に東京五輪がある。同じアジアで開催される平昌五輪の開幕式に行き、選手団を激励したい。同時に(文在寅韓国大統領と)首脳会談を行い、日韓の慰安婦合意について日本の立場をしっかりと伝えていきたい。北朝鮮の脅威に対応していくために、日韓米でしっかりと連携していく必要性、最大限まで高めた(対北朝鮮)圧力を維持していく必要性について伝えていきたい。

つまり、安倍総理は、「平昌五輪の開会式に出席する」と言っているのです。これ、おそらく日本人の90%以上は反対でしょう。なぜ? そう、韓国は遠慮なく「慰安婦合意見直しを要求しているからです。私自身も、この話を聞くたび、胃が痛みますし、胸も痛くなります。だから、安倍総理に対し、「ふざけるな!」と言いたい人の気持ちもわかる。

しかし、私は、「裏で起こっていること」を知っていますので、「戦略的視点」からお話せざるを得ません。何でしょうか?

なぜ、韓国は「ああ」なのか?

こう聞かれたら、「民度が低いから」とか「そういう人たちだから」とか「国民性」とか答える人が多いです。しかし、慰安婦問題は中国の対日戦略の一環」なのです。説明しましょう。

08年、RPEで05年から警告していたように、「アメリカ発の世界的経済危機」が起こりました。アメリカは、これで没落します(アメリカ一極世界崩壊)。中国は、逆に浮上し、一人勝ち状態になりました。そして、「アメリカは動けない」と確信した彼らは、国益を遠慮なく追求するようになっていきます。尖閣もターゲットの一つでした。

2010年、「尖閣中国漁船衝突事件」が起こった。中国は、全世界に、「尖閣はわが国固有の領土であり、『核心的利益である!』」と宣言します。さらに、日本に「レアアース禁輸」など、厳しい制裁を課しました。自分(中国)が圧倒的に悪いにも関わらずです。

2012年9月、野田政権は、「尖閣国有化」を断行。日中関係は戦後最悪になってしまいます。2012年11月、中国の代表団はモスクワで、ロシアと韓国に「対日戦略」を披露します。皆さん、ご存知ですね。そう、「反日統一共同戦線戦略」です。内容は、

  1. 中国、ロシア、韓国で「反日統一共同戦線」をつくろう!
  2. 中ロ韓で、日本の領土要求を断念させよう!
  3. 日本に断念させる領土とは、北方4島、竹島、尖閣・【沖縄】である。
  4. 日本に【沖縄】の領有権はない!!!!!!!
  5. 反日統一共同戦線には、【アメリカ】も入れるべし!

「トンデモ~!」「陰謀系~!」と思った方は、この絶対証拠を必ず読んでください。

反日統一共同戦線を呼びかける中国

この提案、プーチン・ロシアは、乗らなかったのです。しかし、韓国は、「喜んで乗りました。この時は、まだ李さんの時代。「反日統一共同戦線」提案の翌12月、韓国大統領選挙があった。そして、朴槿恵さんが勝利した。彼女は、中国の「反日統一共同戦線戦略」に沿って、世界中で「告げ口外交」を展開。大いに習近平を喜ばせました。

ところが、朴槿恵さん、中国に接近してあまりいいことがなかったようです。特に安保問題で、「中国は、韓国を北朝鮮から守ってくれない」ことがわかった。それで、2015年12月、「慰安婦合意」に至った。

さて、「反日統一共同戦線戦略」はその後どうなったのでしょうか?

日米関係は2013年、かなり悪かったのです。リベラルなオバマさんは、中国のプロパガンダを信じていた。しかし、2015年3月の「AIIB事件」以降、日米関係は急速に良くなっていった(日本は、AIIBに加盟せず、アメリカを裏切らなかった)。日韓関係は、2015年12月の慰安婦合意で良くなった。日ロ関係は、2016年12月のプーチン訪日で、劇的に改善された。これで、一応「反日統一共同戦線戦略」は、「無力化」された。しかし、今も続いているのです。

「慰安婦問題」蒸し返しと、「北朝鮮問題」

現在世界最大の問題といえば、「北朝鮮問題」でしょう。少し前まで、二つの陣営に分かれていた。すなわち「圧力派」の日本、アメリカ、韓国。「対話派」の中国、ロシア。ところが、韓国は対話派に転向。実際、北朝鮮と対話を始めています。

これ、理解できます。戦争になれば、一番犠牲者が出るのは、韓国。それに、五輪もぶち壊し。だから、「対話したい」と。そして、韓国が「対話派」に加わるということは、「対話派」のボス、中国の支配下に入ることを意味します。

韓国は、常に米中の間を揺れていますが、中国側に振れると必ず反日」になり、「慰安婦問題」を蒸し返してくる。つまり、韓国は2013年の状態に逆戻りしているのです。

日本国民は、習近平に踊らされるな!

皆さん、「韓国が慰安婦合意見直しを要求!」というニュースを聞いて、何を感じますか?普通は、「ムカッ!!!」とくると思います。私も同じです。しかし、私は、「何が起こっているのか」知っていますから、「落ちつけ! 俺が怒れば喜ぶのは習近平だ。反日統一共同戦線戦略に嵌るな!」と自分に言い聞かせます。そして、皆さんにもお勧めします。

繰り返しますが、韓国は中国に操られています。韓国が日本を挑発し、日本が激怒し、日韓関係をぶち壊せば、喜ぶのは中国です。

中国は、次いで「日米関係破壊工作」「日ロ関係破壊工作」によって「反日統一共同戦線戦略を成功させる。そして、楽々と尖閣沖縄を奪うことでしょう。

なぜ安倍総理の訪韓は戦略的に正しいのか?

慰安婦合意見直し要求について、日本政府は、「1ミリも動かせない」としています。これは、正しい。しかし、韓国側の挑発に乗って、対立を激化させるのは、まさに習近平の「思う壺」です。彼の戦略の骨子は、

  1. 日米を分断すること
  2. 日ロを分断すること
  3. 日韓を分断すること

なのですから。日本が挑発に乗れば、習近平は、「愚かな小日本人たちが、思いどおりに踊っておるわい!ふぉふぉふぉ」と大喜びすることでしょう。逆にここで日本が、グッとこらえて、「日韓合意は国と国との約束なので動かせませんが、韓国は日本にとって非常に大事な国なので、その他の分野での協力関係は深化させていきましょう!」といえば、習近平は、地団駄を踏んで悔しがることでしょう。

総理は訪韓中、慰安婦合意見直しに言及されて嫌な思いをされるかもしれません。しかし、日本国のためにグッとこらえて欲しいと思います。

私がもっとも恐れること

2012年12月に安倍氏が総理に返り咲いたとき、日本は大変な状態でした。小鳩政権のせいで、日米関係はボロボロになっていた。メドヴェージェフが北方領土を訪問し、日ロ関係はボロボロになっていた。李が「韓国にきたければ日王は謝罪せよ!」と言ったので、日韓関係は最悪だった。「尖閣国有化」で日中関係は戦後最悪になっていた。

安倍総理は民主党政権がメチャクチャにした外国との関係を忍耐強く改善させてきました。2015年4月、「希望の同盟演説」で日米関係は、劇的に改善された。2015年12月、「慰安婦合意」で日韓関係はよくなった(やっぱり裏切られましたが…)。2016年12月、プーチン訪日で、日ロ関係は大きく改善された。こうして安倍総理は、4年間かけて外国との関係を修復してきた。そして、同時に「反日統一共同戦線戦略無力化させたのです。

私が恐れているのは何か? 安倍総理が、「日本の真の国益」(=反日統一共同戦線を無力化すること)のために訪韓した。その真意を国民が理解できず、「弱腰安倍を追放せよ!」などと世論が盛り上がり、支持率が急落、そして退陣に追いこまれる。こういう事態になるのを恐れます。

今回の話、きっと感情的には「理解したくない」ことでしょう。私だって、こんなこと書きたくないのです。しかし、「習近平の罠」を知りながら、それを書かずにいることはできません。皆さん、安倍総理の訪韓を非難する大合唱が起こるかもしれません。ですが、せめて中国の戦略を知り尽くしているRPE読者の皆さまは、総理の決断を支持していただきたいと思います。

image by: 首相官邸

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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