「やたらと休みをとられたら困るから」と、就業規則から育児休業を削除して労働基準監督署に提出。特に何も言われずにそのまま受理された場合、その就業規則の変更は正式に認められたことになるのでしょうか? 今回の無料メルマガ『採用から退社まで! 正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』では著者で社労士の飯田弘和さんが、意外と知られていない「休暇の定めの落とし穴」について詳述しています。
御社の就業規則には、育児休業の定めがありますか?
御社の就業規則には、育児休業の定めがありますか? …ある筈です! なければなりません!
就業規則には、必ず記載しなければならない事項がいくつかあります。その中の一つに、「休暇の定め」があります。「育児休業」も休暇の一つです。当然、就業規則に記載されていなければなりません。そして、御社の従業員の誰もが、条件を満たせば、育児休業を使う権利があります。
※ 権利ですので、その権利を行使するかどうかは従業員の自由です。会社が、育児休業をとることを強制する必要はありません。しかし、育児休業を取らないように強制することは違法です。
育児休業に限った事ではありませんが、法的な要件を満たしていない就業規則を使用している会社があります。ネット上で拾ってきたヒナ形就業規則を、自社の都合の良いように書き換えて使用している場合は、要注意です。
「労基署が受理してくれたんだから、OKでしょ」
「労基署が受理してくれたんだから、問題ないでしょ」
その勘違い、ヤバイですよ!
労基署は、届出を受理しなければなりません。形式上の要件を満たす届出が届いたら、受理しなければならないのです。とりあえずパッと見で、問題がなさそうなら(要件を備えているなら)受理します。内容までいちいち確認して、受理しているわけではありません。
ですから、内容に不備があったり、法的に必要な要件を満たしていなくても、受理される場合があるのです。
その不備のせいで、後々、従業員と会社とがトラブルになっても、労基署は何ら責任を負いません。「もしかしたら!?」と思ったら、一度、専門家に就業規則の内容を確認してもらって下さい。
何度も言っていますが、就業規則は会社のルールブックです。ルールブックは、従業員だけでなく会社も拘束します。会社は、そこに書かれたルールを守る義務があります。
ただし、労基法を下回るような内容の定めについては、労基法が定める基準まで労働条件が引き上げられます(最低基準効)。就業規則に記載されていないからといって、使用者はその義務を免れることはできません。
以上を踏まえて、あらためてお聞きします。
「御社の就業規則には、育児休業の定めがありますか?」
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