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ややこしい年金のカラ期間。こんな場合、妻の年金額はどうなる?

年金支給額を知る上で大きなポイントとなる「カラ期間」。これがあれば払込期間が短い人でも年金がもらえるかもしれないという「ちょっと嬉しい期間」ですが、正しく理解しないと後で後悔することにも繋がりそうです。そこで、今回の無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』では著者のhirokiさんに、この「カラ期間」と厚生年金の関係について、事例を交えながらわかりやすく解説していただきました。

昭和61年3月までに既に厚生年金貰う資格があると配偶者の年金期間にも影響する事がある

よく、昭和36年4月から昭和61年3月までのサラリーマンや公務員の20歳以上60歳未満の専業主婦主夫)だった期間は、その専業主婦は国民年金に強制加入ではなく任意加入であり、もし任意加入しなければカラ期間」となって老齢の年金を貰うために必要な年金保険料納付済期間+免除期間+カラ期間≧10年に組み込まれることをよく言われます。

ところが、今回のような場合もカラ期間になるという事も知っておくといいかなーと思います。

老齢の年金を貰うために必要な期間が10年以上25年未満でも貰えるようになったから、より一層カラ期間って大事なんですよ。ちなみになんでカラ期間と呼ばれるかというと、年金の期間には含めるけど年金額には反映しない空(カラ)っぽの期間だからカラ期間という。

というわけで事例。

1.昭和14年2月25日生まれの男性(今は79歳)

何年生まれ→何歳かを瞬時に判断する方法!(参考記事)

20歳になる昭和34年2月から昭和36年3月までの26ヶ月は昼間の4年制大学。この昼間学生の期間は本来なら国民年金の任意加入(平成3年3月までの場合)となり、任意加入しなければカラ期間となるが国民年金制度が始まったのが昭和36年4月1日以降(ここから20歳以上60歳未満の人は国民年金に強制加入となった)だから任意加入もないしカラ期間にもならない。昭和36(1961)年4月から昭和57(1982)年9月までの258ヶ月は厚生年金加入。この人はまだ60歳(平成11年2月)には到達していない。昭和57年10月からは国民年金に強制加入となるのか。

実はこの人の場合は昭和57年10月からは国民年金には強制加入しない。何でかというと、昭和61年3月31日までの旧法と呼ばれる年金時代は、厚生年金に20年(240ヶ月)以上あれば厚生年金(当時は老齢厚生年金ではなく老齢年金と呼んでいた)を貰う事ができた。だから、もう厚生年金貰う権利持ってんだから、「国民年金に強制加入させなくても厚生年金からどうせ年金出るんだから国民年金には任意加入にしよう! 任意加入しなければカラ期間にしよう!」ってなりました。

昭和61年3月31日までの年金制度っていうのは、国民年金、厚生年金、共済年金と完全に別々の制度だったんですよ。ところが昭和61年4月からは厚生年金や共済年金期間も同時に国民年金に加入という事にして、つまりどんな職業であろうが国民年金に加入ってことにして、年金加入期間に比例して年金額も異なる老齢基礎年金を支給し、その上に給料に比例して年金額も異なる(報酬比例部分という)厚生年金や共済年金を乗っける形にしたんです。

この昭和61年4月から今の年金の形である、厚生年金からは老齢厚生年金、共済年金からは退職共済年金(平成27年10月以降に貰う権利を獲得した人は老齢厚生年金の名称)、国民年金からは老齢基礎年金というのができたわけです。昭和61年4月からの年金改正が今の年金制度の基盤となっています。

今までも何度も言ってきた事ではありますが、サラリーマンや公務員は厚生年金や共済年金に加入してて国民年金には加入していないというわけではなく国民年金にも同時に加入してるんですね。

で、昭和61年4月からそんな感じになったから、この男性はまた国民年金に強制加入となり、「過去の厚生年金期間も国民年金の被保険者だったとみなして」、厚生年金からは老齢厚生年金を支給して国民年金からは老齢基礎年金を支給する形になりました。

よってこの男性は昭和57年10月から昭和61年3月までの42ヶ月の期間に関しては国民年金に任意加入しなければカラ期間となり、昭和61年4月から60歳の前月(平成11年1月)までの154ヶ月は国民年金に強制加入期間となります。

保険料を納めなければ未納期間になる。もう納めずに未納にした。

さて…昭和57年10月から昭和61年3月までは国民年金には任意加入しなくて国民年金保険料を納めなかったんですが、ここはカラ期間になりましたよね。たまたまこの男性の年金記録は厚生年金期間258ヶ月とカラ期間42ヶ月合わせると300ヶ月(25年)になってしまいましたが、この男性の生年月日なら仮にカラ期間42ヶ月無くても厚生年金期間が20年以上(240ヶ月以上)あるから年金貰える人。

今日の話は昭和61年3月までのサラリーマンの専業主婦だった期間はカラ期間になるって話なんですが、じゃあ昭和57年10月から昭和61年3月までは夫はサラリーマンでも公務員でもなかったけど専業主婦の妻の期間には何か影響するのか。影響してくるんですねこれが(笑)。

2.昭和22年5月18日生まれの妻(今は70歳)

20歳になる昭和42年5月から昭和50年6月までの98ヶ月は公務員だったが、この期間は退職一時金として全額退職時に貰ってしまった(ちょっと突っ込んだ内容ですがこれもカラ期間)。28歳の時の昭和50年7月に今の夫と婚姻し専業主婦となった。

夫は昭和57年9月まではサラリーマンだったから、この妻は国民年金に強制加入ではなくて任意加入だった。妻は任意加入しなくて、昭和50年7月から昭和57年9月までの87ヶ月はカラ期間となった。ここはよく話題になる取りやすいカラ期間ですよね。

じゃあ、もうサラリーマンの夫の妻でもない昭和57年10月から昭和61年3月までの42ヶ月の期間はどうなるのか。ここも実は妻にとっては任意加入であり、任意加入しないならカラ期間になる。なぜそうなるのか。

夫は、昭和57年9月退職までに厚生年金期間20年以上を満たしてますよね。つまり、「厚生年金を貰う資格期間をすでに満たしちゃった人の妻」になるから、この妻は任意加入扱いになり、任意加入しないならカラ期間となるわけです。なぜなら、昭和61年3月31日までの旧法時代の厚生年金というのは厚生年金で妻の分の保障もひっくるめているような給付水準だったから、「わざわざ専業主婦を国民年金に強制加入は求めなくていい」という事で妻を任意加入扱いにしていた。

ただこうすると離婚した時や妻自身が障害になった時に妻が国民年金に加入してなかったせいで妻自身の名義で年金が貰えない大きなリスクがあったんです。だから、そんな専業主婦も昭和61年4月からは強制加入となり、ここからは国民年金保険料を納めなければ未納扱い女性の年金権が確立された素晴らしい改正でもあったんです。

夫がもしサラリーマンや公務員になったなら、妻は国民年金第三号被保険者として最大60歳までは国民年金保険料納付済み期間となる(年金の受給権持った夫が65歳を迎えるとその後は妻は3号被保険者にはなれない)。この夫は退職後はサラリーマンでも公務員でもなかったから、妻は自分で国民年金保険料を納付しないといけないですね^^;。

というわけで、昭和61年4月から妻は強制加入となったが、60歳到達月の前月である平成19年4月までの253ヶ月のうち73ヶ月分の国民年金保険料を納め、あとは未納にしたとします。

この妻の場合は65歳(平成24年5月)の翌月分から国民年金から老齢基礎年金がもらえる人ですが、この平成24年時点では「年金保険料納付済期間+免除期間+カラ期間≧25年」でなければ老齢基礎年金は貰えなかった。25年以上が10年以上に短縮されたのは平成29年8月から。

でもこの妻には、カラ期間が98ヶ月と42ヶ月と87ヶ月、そして自ら納めた期間73ヶ月あるから合計300ヶ月25年が有効期間となり老齢基礎年金が65歳から普通にもらえてる。

なお、実際金額に反映するのは73ヶ月分のみ。記事の冒頭で述べたように、カラ期間は年金の期間には含めるけど、年金額には反映しない空(カラ)っぽの期間だから。よって、妻の老齢基礎年金額は779,300円÷480ヶ月×73ヶ月=118,519円(月額9,876円)。

ただし65歳時点でこの夫に配偶者加給年金が付いていたら妻の老齢基礎年金に振替加算98,692円(年額)が加算される。振替加算が付くなら、老齢基礎年金118,519円+振替加算98,692円=217,211円(月額18,100円)。

まあ…去年の大ニュースとなった振替加算漏れが無ければ加算されてる。

加給年金と振替加算(日本年金機構)

image by: akiyoko / Shutterstock.com

年金アドバイザーhirokiこの著者の記事一覧

佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
このメルマガを読んでいれば年金制度の全体の流れが掴めると同時に、事例による年金計算や考え方、年金の歴史や背景なども盛り込みますので気軽に楽しみながら読んでいただけたらと思います。

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【著者】 年金アドバイザーhiroki 【発行周期】 不定期配信

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