最近では社会全体で育児に対する理解が深まり、「独自の育休制度」を設ける会社も少なくありません。しかしそうした場合、事前に取得者に説明しなければならないことがあると、無料メルマガ『採用から退社まで! 正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』の著者で社労士の飯田弘和さんは記しています。一体どういうことなのでしょうか。
御社の就業規則には、育児休業延長の定めがありますか?
前回までにお話したのは、
- 子供が1歳になるまでの通常の育児休業 と
- 子供が1歳2ヵ月まで取得できる「パパママ育休プラス」制度
今回お話しするのは、子供が1歳6ヶ月あるいは2歳になるまで利用できる育休制度についてです。
これは、通常の育児休業あるいは「パパママ育休プラス」制度の期間延長ということになります。当然、延長するためには、理由が必要です。延長理由として認められているものを挙げます。
まず、最も多い理由です。それは、「保育所へ入所の申し込みを行っているのだが、空きがなくて預けられない」というもの。当然、子供を保育所に預けなければ、仕事への復帰は難しい。ですから、この場合には、子供が1歳6ヶ月まで育休延長が認められます。1歳6ヶ月まで延長しても、まだ保育所が見つからなければ、2歳まで再延長できます。
その他には、配偶者が育児を行っている人で、その配偶者が死亡したり、病気にかかったりして育児を行うことが困難になった場合が挙げられます。この場合も、育児する人がいなくなってしまったのですから、育休期間を延長して、その間に、育児してくれる人を探すなり、保育所を探すなりする必要が出てきます。ですから、子供が1歳6ヶ月あるいは2歳になるまで、延長することが認められます。
すべての育児休業に共通することですが、育児休業期間中は、雇用保険より「育児休業給付金」の支給を受けることができます。基本的に、法(育児・介護休業法)に定められた通りの育休を取る場合には、この給付金が支給される仕組みです。
ところが、御社独自の、法定よりも育休取得の条件を広げた(緩めた)育休制度を採用する場合、育児休業給付金の支給対象とならない人も出てきます。もし御社で、従業員の事を思って、育児休業を取りやすい独自の規則を定めた場合、給付金支給がされないこともある事を、きちんと説明してください。
せっかくの、従業員とその家族のことを大切に思う御社の方針が、逆に、従業員との不要なトラブルに発展する可能性が生まれます。育休制度を定めるときには、そのあたりのことも含めて、十分検討することが必要です。
育児休業制度は、頻繁に改正されています。育休の2歳までの延長も、平成29年10月から始まったルール。この改正の時、「従業員やその配偶者が妊娠・出産した場合には、個別に育児休業等制度を知らせること」と、「小学校入学までの子を育てる従業員のために育児に関する休暇制度を設ける」ことが、事業主の努力義務とされました。数年後には、義務になると思います。今から準備をしておいても良いかもしれません。
以上を踏まえて、あらためてお聞きします。
「御社の就業規則には、育児休業延長の定めがありますか?」
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