素直で人気者で勉強もスポーツも万能…そんな絵に描いたような優等生が、社会に出た途端に仕事が長続きしなかったり、引きこもりになったりしてしまうケース、意外と多いようです。そんな「いい子」の心の闇とは一体? 今回のメルマガ『子どもを伸ばす 親力アップの家庭教育』で、柳川さんが「いい子症候群」の危険性と解決策を詳述しています。
大学卒業まで自慢の娘だったのに、仕事が長続きしない
Q. 娘は、何度も離職、転職を繰り返します。小学校時代からスポーツも勉強もトップクラスでリーダーシップも取れる自慢の娘でした。地方から関東の有名私立大学へ進み、商社へ就職をしましたが、1年半年で退職、すぐに再就職しましたがそこも1年ほどで退職しました。その後、2社に就職しましたがやはり離職しています。仕事以外では元気なので甘えているとしか思えません。(25歳の娘をもつ54歳のお母様より)
柳川さんの回答
幼い頃から、ご自慢のお嬢様だったのですね?素敵です。
そのようなお嬢様にとっては、度重なる離職や転職は、非常にきついものだろうと思います。
親から見て「いい子」の場合、子どもは「いい子であり続けよう」と無理していた可能性もあります。
そのような「いい子症候群」の特徴と今からできる克服のコツをお伝えします。
1.いい子症候群の子どもたちとは
ひと言で表すと、「親の基準で判断をする」子どものことです。
自分がしたいから、ではなく「親にとってこうした方が良いだろう」という考えを元に自分の言動をします。
「電車で静かにしていればママがいつも優しいから静かにしよう」「弟の面倒を見ればママが褒めてくれるから面倒を見よう」など、本来のマナーや思いやりから来る行動ではなく、ママ(親)が基準になるのです。
親の顔色をうかがい、親の期待に応えなければ、と思うようになる子どもたちです。
2.なぜそうなるの?
親の機嫌を損ねたくない、自分を認めてもらいたい、もっとかまって欲しいなどの理由からです。
親の顔色をうかがい、期待に応えようと自分の気持ちよりも親が求める「いい子」を優先するからです。
親が過干渉の場合、子どもは親の機嫌を損ねないよう親に従いがちです。そういう子どもは自分で選択する機会がありません。
親が全てやってしまうため、子ども自身は自分の存在価値を持てなくなります。
反対に親が自分に関心がない場合、気を引こうと親の機嫌をとったり、親に認めてもらおうと「いい子」を演じたりします。
気を使うため、空気を読む癖がつき、精神的に疲弊しやすくなります。
また、親の期待に沿わないと嫌われるという不安を持ち、指示通りに従う指示待ち人間になる可能性もあります。
そして、反発することができないので、他人の意見には同調しても自分の意見を伝えることが苦手です。
そのため、他人と対等な関係を築きにくいと言う問題が起きます。
ご相談のお嬢様は、こうしたことが重なって「いい子」に息切れしてしまったのかもしれません。
3.「いい子症候群」にさせないために
子どもに対する考え方を見直す必要があります。親であれば、子どもに対する思いや理想があるでしょう。
しかしその思いをそのまま子どもに押しつけることはよくありません。
子どもが親の思いをどう受け止め、どう行動するかが重要なのです。
子ども自身に選択させ、成功体験、失敗体験、達成感、挫折感を思う存分味わわせ、判断力を養い価値観を育てることが大切です。
既に兆候が出ている場合は、親が子どもへの態度を変えることです。
子どもを親の意に沿うように誘導するのではなく、子ども自身が物事を自分で決めるよう、その思考の柔軟性を回復させることです。
児童生徒はスクールカウンセラーなど、社会人ならば産業カウンセラーなどと相談しながら方針を立てることが早道です。
家庭教育アドバイス・・・そもそも「いい子」はいない
親にとって「理想のいい子」があるから、子どもは大人に嫌われまいと必死に演じてしまうのです。
そんな疲れるようなことを子どもにさせるのはやめましょう。
実像のない「理想のいい子」を目指して育てるのではなく、子どもの持つ無限の才能を伸ばすためのサポートをしましょう。
子どもの好きなこと、得意なことを伸ばすために親子で伴走していくことが、子どもの成長に必要です。
もし敢えて「いい子」ってなに?と尋ねられれば、「毎日を自分らしく元気に過ごす子ども」と答えます。
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