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失敗を繰り返すのか。日朝首脳会談を模索する総理に伝えたいこと

南北会談、米朝会談が開かれる見通しになったことに触発されたのでしょうか、日本政府も北朝鮮との会談を模索し始めたようです。しかし、無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者で国際関係アナリストの北野幸伯さんは、「日本がアメリカを出し抜けば、安倍首相は田中角栄氏と同じ運命を辿ることになる」との厳しい見方を示しています。

日朝首脳会談で、安倍総理は田中角栄の失敗を繰り返すのか?

いろいろ大事件が起こっています。

などなど。しかし、私が今日のテーマに選んだのは、こちら。

日本政府、北朝鮮との首脳会談を模索へ=政府関係者

ロイター 3/13(火)22:28配信

 

[東京 13日 ロイター] – 南北会談と米朝会談が開かれる見通しになったことを受け、日本政府も北朝鮮との間で首脳会談を模索する考えであることがわかった。日本が北朝鮮との間で独自に抱える拉致問題の解決を目指す。日本の政府関係者が13日、明らかにした。

トランプさんが、金正恩と会談する。だから、安倍さんも金正恩に会う。これ、どうなんでしょうか?

トランプさんは、どんな人?

トランプさんは、どんな人なのでしょうか? 大統領になって1年が過ぎ、大体わかってきています。権力、お金、美しい女性たちを愛する、エゴたっぷりの人。独断型で、「調整」とか「根回し」とか、全然気にしない。たとえば、

などが、証拠ですね。こういう人物が、「安倍総理は金正恩との会談を模索している」と聞けば、どう思うでしょうか? 「シンゾーが俺の手柄を横取りしようとしている!」と考えるでしょう。

金正恩は、「すぐに安倍に会おう。そして大歓迎しよう。そうすればトランプは嫉妬して日米関係は悪化するだろう」と考えるかもしれない。習近平だったら、きっとそう考えるだろうと思います。

ここまでの話、「北野さんの話は、いつも大げさだな~」と思いますか? では、過去の例をお話しましょう。

ニクソン、キッシンジャーを出し抜いて、恨まれた田中角栄

冷戦時代の初期、アメリカは、共産党の一党独裁国家・中華人民共和国を敵視していました。しかし、ソ連が強大化してきたので、中国と和解することにした。

1971年7月15日、ニクソンは、「中国から訪問要請があり、それを了承した」と発表。アメリカ政府は、日本政府に何の相談もせず、発表内容を知らされたのは、その15分前だった。日本政府は、大きな衝撃を受けました。

ニクソン訪中は、1972年2月。日本では、田中角栄が72年7月、総理大臣に就任した。彼は、同年9月訪中し、「アッ」という間に「日中国交正常化」を成し遂げてしまいます(ちなみに、米中国交正常化は、1979年)。アメリカを出し抜こうとする田中総理に、キッシンジャーは大激怒。「ジャップは最悪の裏切り者!」と絶叫したことが、明らかになっています。共同通信2006年5月26日から。

「ジャップは最悪の裏切り者」(解禁された米公文書より)
72年にキッシンジャー氏

 

【ワシントン26日共同】ニクソン米大統領の中国訪問など1970年代の米外交政策を主導したキッシンジャー大統領補佐官(後に国務長官)が72年夏、田中角栄首相が訪中して日中国交正常化を図る計画を知り「ジャップ(日本人への蔑称(べっしょう))」との表現を使って日本を「最悪の裏切り者」と非難していたことが、26日までに解禁された米公文書で分かった。

ちなみに、キッシンジャーは、この時の恨みをその後も忘れていなかったようです。アメリカ在住政治アナリスト伊藤貫氏の名著『中国の「核」が世界を制す』に、キッシンジャーと直接会った時の感想が出ています。

キッシンジャーは、日本人に対して鋭い敵意と嫌悪感を抱いている。

キッシンジャーからは不快なものを感じた。彼が、日本人をほとんど生理的に嫌悪・軽蔑していることが感じられたからである。

なにはともあれ、田中総理は、アメリカを出し抜いた。それで、キッシンジャーは激怒していた。そのキッシンジャーは今、トランプの顧問をやっています。安倍さんが、トランプさんを出し抜いて金正恩に会うことを模索していることを知れば、「ジャップは今も昔も裏切り者!!!!」と絶叫することでしょう。

そんなキッシンジャーは、「G2論者」、つまり「アメリカと中国で世界を共同統治しよう」という考えの持ち主です。キッシンジャーは、安倍―金会談を見て、トランプに、「ほら、言った通りでしょう。ジャップは信用できない。だから、彼らのようなエゴイストを世界統治に参画させてはいけない。やはり、米中共同統治でいくべきだ!」と言い、洗脳してしまうかもしれません。

では、どうすればいいのでしょうか? 安倍総理は4月に訪米してトランプさんに会う予定があるのですね。その時、トランプさんの功績を大いに褒めまくればいいでしょう。そして、「拉致被害者の件もお願いします」という。もし安倍総理が金に会いたければ米朝会談の後でなければなりません。それも、よくよくトランプさんと相談して、決めなければならない。

安倍総理は、歴史の教訓から学び、くれぐれも田中角栄の失敗を繰り返さないでいただきたいと思います。この話、「その通りだ!」と思われた方、是非総理に教えてあげてください。

 

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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