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米国の同盟国は大変なことになる。裏切られる予定の日本に起こること

世界が北朝鮮を中心に大きく変わろうとしています。近く行われる米朝首脳会談の決定に始まり、金委員長の電撃訪中によって行われた中朝首脳会談は世界中の人々を驚かせました。こうした動きから蚊帳の外に置かれた感のある日本ですが、4月中旬の日米首脳会談を控え、このままどうなってしまうのでしょうか? メルマガ『国際戦略コラム有料版』の著者・津田慶治さんは、アメリカ・ファーストを加速させるトランプ大統領の戦略を分析しつつ、今後日本が迎えるであろう恐ろしい状況を予測しています。

米経済外交の方向

トランプ大統領はビジネス取引(ディール)を外交交渉にも持ち込み、経済と安全保障の2つをリンクした取引になり、米国の同盟国は大変なことになる。それを検討しよう。

0. 韓国への要求

トランプ大統領の選挙時の公約を見ると、世界から米軍を引き揚げて、世界とは関わらないようにする方向としていたが、国際派の政権幹部を辞任させたことで、一層鮮明になっている。

北朝鮮との首脳会談を控え、金正恩委員長は、首脳会談失敗に備えて、北京の習近平国家主席と会談を行い、習氏は「われわれ双方は『中朝の伝統的友誼』を絶えず伝承していくべきだと何度も表明している」といい、正恩氏は「金日成(キム・イルソン)主席と、金正日(キム・ジョンイル)総書記の遺訓に従って、『朝鮮半島の非核化実現のために尽力することは、われわれの変わらない立場だ」と語った。

習近平国家主席は、会談不調時に米軍が北朝鮮に侵攻したら、中国軍が介入することを保障するが、その条件は朝鮮半島の非核化であるとしたのだ。中国が北朝鮮の安全と非核化を取引した。

これで、米朝首脳会談の成功は、ある程度見通すことができることになった。北朝鮮が核を放棄して、その代わりに、米軍は核弾頭とともに韓国から引き上げるということである。

その裏で、トランプ大統領は、韓国が北朝鮮と対話する条件として米韓FTAの見直しを要求し、そこで米国が有利になる米国生産車輸入を無条件にすることと通貨介入を禁止することになった。韓国との経済交渉を韓国と北朝鮮の安全保障対話を条件にして取ったようなものである。経済と安全保障をリンクして取引化することが鮮明になった。

韓国も北朝鮮の安い労働力を使えるので、このような経済取引でも有利になる。今後、朝鮮半島の南北は連邦制などの国家体系に移行することになるかもしれない。その一歩を見ているように感じる。そして、韓国は米国の同盟国から離れることになる。

もう1つが、米国の鎖国化の一環と見るべきである。アジアからの米軍撤退をみることになる。大きく、時代が動いている。

1. 日本の番がくる

この取引成功で、次に日本の番である。4月中旬に安倍首相がトランプ大統領と首脳会談を行う。

安倍首相と友達であるから、トランプ大統領は、あまり強硬な要求をしないと評論する人がいるが、それは間違いである。トランプ大統領は、始めは様子見をしていて、相手の手の内を知ってから、自分に有利な取引を行う。

安倍首相が安全保障上の問題を重要視していることがわかり、経済問題とのバーターを言い出すに決まっている。今までの外交交渉とは、大きく違うことを念頭に入れるしかない。

交渉で米国の要求は、日米FTAの開始通貨安防止策として円ドル固定相場か、米国も実施する金利調整の金融量的緩和が許すと思うが、通貨安誘導の金融量的緩和政策の制限を言い出す可能性がある。

それと、日本企業の米国での生産を一段と推進することを求められる。その見返りが日米同盟の維持で、日本が日米FTAを固辞すると、日米同盟破棄を米国は言い出すことになる。米国は一切身を切らない一方的な要求になる。

トランプ大統領は、自分を支持する人の利益になり、支持者が喜ぶことを行うので、自分の好き嫌いで政策を行っていない。最初、喧嘩した対米貿易赤字国のオーストラリアは、鉄鋼・アルミ高関税の適用除外国にしている。

外交当局や防衛当局の連帯も、トランプ大統領は無視するから、この取引を日本は了承するしかない。トランプ政権の幹部が、全員ナショナリスト達であり、自由貿易という考え方も自由主義圏を守るという考え方もない。米国の鎖国化を進めると脅して、同盟国に経済的な要求を行うだけである。

同盟国に対して、軍事力と経済をバーターすることをトランプ政権は行うし、対抗する中国に対しては、対米貿易での黒字を失くして経済力を削ぐ方向になる。これが、アメリカ・ファーストの戦略である。

徐々に日本は、米国の代わりにインドやベトナムインドネシアなどと連携して、中国の拡張を抑えることになる。同様に欧州は米軍なしにロシアの膨張を抑える。そして、米軍のシリア撤退が決まり中東地域は米軍撤退の後、ロシアの覇権が確立する。全体的には日欧は連携して、中ロ膨張をけん制するしかない。

それとともに、日本は、軍事衝突が起きないようにロシアと中国ともに友好関係を築くことになる。要するに、米国なしの世界軍事バランスを構築し、言い換えると世界秩序を再構成することになり、これで昔も今も国家全体主義国が世界的な隆盛になる。

嫌な方向に世界は向かっている。第2次大戦前夜に似てきている。ドイツのヒットラーが独裁政権を樹立したことと、中国の習近平国家主席が独裁制を確立したことはよく似ている。そして、国家全体主義が世界的に流行る現象も同じになる。

米国との貿易で黒字になる日本や中国に、米国債を買わせる今までのグローバルでリベラルな世界秩序は終了して、ブロック経済の時代になることを意味する。その準備を日本もするべきであったが、現時点は金融量的緩和政策一本やりであり、その準備ができていない。

2. 米国経済の方向

米国の長期金利が安定してきた。このため、適温相場が保持されて、米株価も安定してきた。2月にステルスQE(Quantitative Easing、量的緩和)をFRBは行い、金融機関から不動産証券を110億ドル買い、金融機関は10年国債を買い、10年国債の金利が下げた。

しかし、反対に3月にはFRBは短期金利を上げて、1.75%にした。長期金利は2.8%前後維持で、短期金利は年3回上げるために、長短金利差はフラット化することになる。このような金融政策は11月まで続くとみて、証券アナリストの多くは11月まで米適温相場が続くとみている。

しかし、3%以上のインフレになると、長期金利を3%以上に上げる必要になり、QEはできないことになる。11月までインフレにならないことが重要になっている。

トランプ大統領の経済政策は、インフラ投資、減税、関税UPなどのインフレ促進政策であり、FRBは当然、短期金利を上げるしかないし、長期金利に対するQEもできなくなる可能性もある。株価は金利上昇に反比例して下がることになり、インフレと金利の動向は要注意だ。金融相場から業績相場への移行は難しい。

もう1つの動きとして、トランプ大統領は、アマゾンに対して売上税を取ると表明した。デパートやモールなどの倒産、店舗閉鎖が多発して、米国経済を脆弱化させているので、それを防止するという。その上に、アマゾンに対して独占禁止法の適用も行う可能性がある。拡大する分野の規制もされる可能性もある。

米国がアマゾンに対して行うと、世界的にアマゾンが売上税徴収や独占禁止法の対象になる。このため、FANG株の一角、アマゾン株が暴落してきた。

同じく、Facebookが個人情報を英国の調査会社に渡し、その会社が大統領選挙でトランプ支持のために個人情報の悪用をしたことで、株価が大きく下げている。

もう1つがウーバー自動運転車が死亡事故を起こしたことで、自動運転技術に対する疑念が起きて、自動運転で死亡事故を起こしたテスラ、自動運転の頭脳を提供するエヌビデアなどの株価も下落している。もう1つ、テスラは、モデル3の生産が3月末までに軌道に乗らないと倒産の可能性が出るとWSJは言い始めた。テスラの株価は、GMより株価が下になり、フォードの株価の位置まで下げている。

というようにFANG株の下落が起こり始めている

3. 日本の政治・経済

米国株に連動して、日本株も当分安定するが、日米交渉で量的緩和の制限がされると、株式市場への日銀介入ができなくなる可能性もある。この時には、日本株は暴落することになる。

そして、アベノミクス相場の終焉を迎える。4月の日米首脳会談は、日本の政治経済の今後を占う試金石になりそうである。

株価の下落が起きると、高い支持率があった安倍首相も、支持率が森友問題で下がっているが、より下降し、11月の自民党総裁選挙での安倍首相3選もなくなり、憲法改正もできない。

日本に金融緩和政策一本やりで、規制緩和や成長戦略を行わなかった咎がやってくることになる。

さあ、どうなりますか?

 

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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