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始まりは親の愛。大型コインランドリー「マンマチャオ」急成長の訳

今、コインランドリー業界が活況を呈していることをご存知でしょうか。そんな中でも「業績絶好調」として注目を集めているのが、首都圏を中心にFC展開で店舗数を増やし続けている「マンマチャオ」。同社快進撃の理由はどこにあるのでしょうか。ビジネス分野のジャーナリストとして活躍中の長浜淳之介さんが、コインランドリー業界が成長する理由を取材するとともに、なぜここまで「マンマチャオ」が消費者に受け入れられたのか、同社社長へのインタビューなどを通じて、詳細に分析・考察しています。

プロフィール:長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)、『バカ売れ法則大全』(SBクリエイティブ、行列研究所名儀)など。

アトピーの息子にも優しいエコランドリーを。大型コインランドリー「マンマチャオ」の成長戦略

環境に優しい「エコランドリー」をコンセプトとする「大型コインランドリー」をチェーン展開する、マンマチャオ(本社・横浜市都築区、三原淳社長)が絶好調だ。

2017年9月期の年商は約29.3億円で、前年の約14.4億円から倍増。前々年の15年は約7.1億円で、まさに倍々ゲームの伸び方だ。2000年の設立以来、緩やかに上昇してきたが、2013年の年商3.7億円が、14年に6.7億円へと2倍に近くに伸張して以来、加速が付いて来た。

今年3月末には470店舗を達成。そのうち約半数の243店が首都圏一都三県に集中する。東日本では随一の店舗数を誇っており、コインライドリー業界唯一の上場企業であるWASHハウスの約500店舗を猛追している。近年はFC(フランチャイズ)システムにより、毎月12店ほどを高速で出店。直営店28店のほかは全てFC店となっている。1万世帯を商圏にして、2020年までに1,000店舗を目指すとしている。

業界トップのWASHハウスが宮崎発祥で九州に強い基盤を持つのに対して、2位のマンマチャオはFCで増殖するビジネスモデルは同じだが首都圏に強い地域特性がある。

イオンタウン佐野店(栃木県佐野市)

このように、マンマチャオの好調ぶりは際立っているが、そもそもコインランドリーの市場が拡大し続けている現状をまず指摘したい。つまりコインランドリーのビジネスチャンスが広がっている。

厚生労働省の「コインオペレーションクリーニング営業施設に関する調査」(3月末時点)によれば、1996年に9,206店だったコインランドリーの施設数は、2014年には1万6,693店に達した。その後の推移を厚生労働省は発表していないが、業界への聞き取り調査からはさらに順調に増え続けており、そろそろ2万に達する模様だ。過去20年間で倍増している、有望ビジネスなのである。約2万店というと、コンビニ最大手セブン-イレブン・ジャパンの店舗数に匹敵するほど。

そうした背景の中、マンマチャオのような従来のコインランドリーにはなかったサービスで、急成長する企業が登場したわけだ。

「コインランドリーは30年以上前から存在しますが、洗濯機のない学生さん独身男性が使うものとは全く異なってきています。今はもう学生さんも3万円もあれば洗濯機が買えてしまいますから、皆持っています」と、コインランドリーのターゲット層の変化を語るのは、マンマチャオの三原淳社長だ。

コインランドリー業界成長の2つの理由

では、誰が今、コインランドリーを使っているのか。

主婦層です。1億総活躍で今は家庭の主婦も、パートタイムばかりでなく9時から5時までフルタイムで働きに出るようになっています。家に洗濯機があっても、夜になかなか洗濯はできません。家に帰ったら、ご飯を作ったり、子供をお風呂に入れたり、子供の学校の宿題を見てやったりと、イベントが目白押し。では、土日に溜まった洗濯物を一挙に洗おうと思っても、家庭の小さな洗濯機では何回にも分けて洗わなければならなくて時間が掛かるし、干せる場所もないからです」(三原社長)。

三原淳社長

コインランドリーは学生、独身男性のためのものから、洗濯する時間がない働く主婦へとターゲット層を変えて成長軌道に乗っている。1週間分を一挙に洗って乾かせるように、家庭にはない20kg~30kgの容量を持った大型の洗濯機、乾燥機を揃えているのだ。店の造りも明るく居心地良くなっている。だから、マンマチャオの店舗には「大型コインランドリーと大きな看板が掲げられている。

マンマチャオ東浦森岡店(愛知県知多郡東浦町)

マンマチャオのコインランドリーを使うと、洗濯は19分乾燥は30分あれば十分。つまり、1時間足らずで1週間分の洗濯が済ませられて、家事が大幅に軽減される。

コインランドリー業界では、コインランドリーをルーティーンで使っている家庭は日本の全世帯数の4%程度とされている。女性の社会進出がさらに進んで、世帯の1割がコインランドリーを常時使うようになっただけでも、2.5倍の市場拡大になる計算が成り立つ。現在の深刻な人手不足を考えれば夢物語ではなく、近い将来、十分に実現性があるだろう。

マンマチャオの採用する乾燥機

 

興味深いデータとして、コインランドリーの躍進に対して、クリーニング店の市場が衰退している事実がある。厚生労働省の調べによれば、クリーニング所施設数は1998年に16万4,225と最大になった後は減り続けており、2017年には9万9,709となっている。ピーク時の6割である。これは形状記憶繊維を使ったワイシャツが普及して、クリーニング店で糊の利いたワイシャツを仕上げてもらう必要がなくなったことが影響している。つまり、家庭の洗濯機、コインランドリーで十分で、ワイシャツに限らず形状記憶繊維を使ったアパレル製品が増えている。

コインランドリーがこれだけ成長しているもう1つの理由は、形状記憶繊維というアパレル製品の技術革新によって、クリーニングの需要がコインランドリーに移っているためだ。

「エコランドリー」&「電子マネーランドリー」

では、マンマチャオの「エコランドリー」は、どのように表現されているのかを見ていきたい。

三原社長がコインランドリービジネスに注目したのは、以前に業務用の洗濯機を輸入する商社に勤めていたからだ。独立を考えていた三原社長は、本場・米国の老舗コインランドリー用機械メーカーのデクスターが日本に販路を持っていないことに気づき、直接交渉。見事、日本での販売権を手に入れた

しかし、実際に機械を輸入して販売してみると、利幅が薄く、自らコインランドリーを経営したほうが商売になると、マンマチャオの展開を始めた。なので、同社は今も少量ではあるが同業他社にデクスターの洗濯機、乾燥機を販売する商社としても活動している。

同社のコインランドリーは洗剤仕上げ剤持ち込み不要のシステムを取っており、洗濯機にコインを入れると自動的にドラムに注入される。洗剤にヤシの実石鹸、仕上げ剤には柑橘類のクエン酸と、いずれも天然の素材を使っていて、敏感肌の人でも安心して使えるのが最大の特徴だ。

水も電解水を使い、電解水には汚れを落とす機能と殺菌作用があるので、洗剤、仕上げ剤の使用量も通常の半分以下と少なめである。通常は2回行うすすぎを1回しかしないので、水の使用量を約33%削減できている。洗濯時間も19分と短めで、電気もあまり使わない

さらに、ガス乾燥機の廃熱は通常外に排出されるが、マンマチャオの場合は一部ドラムに戻して、廃熱エネルギーを再利用している。これにより、ガス消費量と二酸化炭素発生量の低減と経費節減を実現している。

総じて肌にも環境にもやさしく資源の節約にもなる設計のシステムとなっている。エコロジーとエコノミーが共存しているといった意味で、エコランドリーとなっている。

息子がアトピーの体質なんです。自分の息子が、自分のやっているコインランドリーで洗濯できないのはつらいじゃないですか。そこで、洗剤を自ら開発したのです」(三原社長)

三原社長にとってエコランドリー開発の原点は、アトピーの息子の洗濯物でも洗えるようにとの切なる願いにあったのだ。

電解水は、たまたま三原社長がメーカーと知り合いになる機会があり、ホテルやビルなどの配管の詰まる原因となるスケールが付着しなくなるのを売りに、営業をかけていたものを、コインランドリーに使うと面白いとひらめいて導入したという。

マンマチャオは「電子マネーランドリー」にも、既に2010年から取り組んでおり、エコランドリーと共に、その言葉に商標登録を済ませている。「nanaco」をはじめ「Suica」、「PASMO」、「ICOCA」などの交通系ICカードに対応しており、電子マネーが使えるコインランドリーでは、マンマチャオが市場を独占している状況だ。3,000円で購入すれば、3,600円分使えるお得なプリペイドカードも、自動販売機にて販売しており、リピーター率アップに貢献している。

快進撃を支える充実のFC制度

マンマチャオが毎月多くの店舗を出店できるのには、理由がある。FCオーナーにコインランドリーに最適な物件を紹介しているのだ。一般のコインランドリーでは、どこか最適な場所を自分で探してくるか、自分の持っている物件で開業の運びとなるが、マンマチャオは空き物件をどんどん探してきて、FCオーナーに提案する。営業力が成長性に結び付いている

特に推奨しているのは、スーパーやコンビニに併設する、駐車場が共有できる立地。「イオンモール」のような商業施設の中に出店するケースもある。ユーザーにとっては洗濯の合間に買物ができるので、時間が効率的に使えるメリットがある。建物が移設可能なユニット型プレハブ店舗もあり、立地環境の変化に迅速に対応して、別の場所ですぐに営業が始められる。

マンマチャオでは毎月1回ずつ、東京、大阪、名古屋で、計3回のFC加盟希望者向けの事業説明会を行っていて、合わせて100名ほどの参加者がいるという。事業説明会に納得して投資をしたいと決断した人には、まず「プレチャオ会員」という予備会員になってもらう。

「プレチャオ会員」になるには契約金108万円が必要。契約期間は2年で、会員に登録されれば物件の紹介、投資シュミュレーション作成、金融機関の斡旋と提出書類の作成協力、内外装工事会社の斡旋、中古コインランドリー機器紹介と設置、オープニングセールの企画提案などのサービスが受けられる。

出店が決まれば契約金は初期投資に充当。決まらなければ、手数料10%と出張交通費等を実費控除した上で返金となる。事業説明会参加者のうち1割ほどが「プレチャオ会員」になっており、会員数は310名に上っている。

FC開業後は、「チャオ オーナーシステム」というサポートシステムを有している。これは問い合わせやクレームに24時間対応するコールセンター、機器の遠隔操作、洗剤など消耗品の費用と補填、修理、漂白剤や乾燥機用ソフターシート提供などのメニューがパッケージとなっている。

オーナーシステムの利用料金は、2年目までがドラム式乾燥機1台5,000円、ガス乾燥機2,000円、洗濯乾燥機6,000円で、3年目からは各1,000円アップ。システム使用料は1店舗1万5,000円。たとえば、洗濯機3台、乾燥機7ドラムの場合の月利用料は、2年目まで4万4,000円、3年目以降5万4,000円となっている。

実際にコインランドリーを運営していると、年に1度くらいはお金を入れたけれども洗濯機、乾燥機が回らない、故障のトラブルが発生する。こうなると大変で、本来はオーナーが現地に出向いて返金、謝罪しなければならない。しかし、マンマチャオでは店舗の全ての洗濯機乾燥機をインターネットで繋ぎ、コールセンターにクレームが入れば、遠隔操作により機器を回してあげるサービスを行っている。さらに、返金を望む顧客には、両替機を操作して返金をも行う

こういったITを駆使したサポートにより、オーナーが常にコインランドリーに張り付いていなくてもトラブルを解決できる体制を整えている。

マンマチャオのFCオーナーとなるのは、会社の収入源のマルチ化を考えた新規事業、年収1,000万円以上あるサラリーマンが個人年金的に活用するケースなどがある。法人と個人の比率は6:4。コインランドリーには10年ローンを組むので、10年後にはリターンが大きくなる

投資額は2,000~3,500万円くらいで、小さい店だと月商は60万円ほど。電気代、水道代、洗剤代、人件費、サポート費用など、ランニングコストを引くと半分の30万円ほどが手元に残るが、ローンが終わっていると、まるごと30万円が毎月収入となる計算が立つ。個人年金的活用とは、このような意味合いである。

また、昨年の4月から始まった、中小企業経営強化税制商業サービス業活性化税制といった国の施策で、コインランドリーの洗濯機と乾燥機が一括で即時償却できる有利な商材になった。そのため、節税目的でのコインランドリー投資への参入が増えている。ただし、即時償却を受けるには煩雑な書類の作成が必要で、マンマチャオでは書類作成の代行も行っていることから人気を集めている。

マンマチャオのウィークポイントは?

以上、マンマチャオは優遇税制の恩恵をも受けた、好調なコインランドリー業界の追い風に乗り、アトピーや環境にやさしい「エコランドリー」をコンセプトとした差別化戦略で、成長しており将来は明るい。無理をする必要もないが、業界トップの座も狙える位置にある。

心配があるとすれば、FCオーナーが立地開発も経営もほとんど何もしない、副業が多い投資型のFCビジネスなので、これから店舗数が増えて本部の目が行き届かなくなると、宣伝のための地域のチラシ配り、清掃などの手間を怠る人が出てきてしまうことだ。統率力あるスーパーバイザーの育成が急務である。

また、過剰に「プレチャオ」会員を集め過ぎてなかなか開業できなかったり、開業したものの同業他社との競合が厳しくなったりすると、オーナーから不満が募るケースもあり得るので、立地開発、立地替えでどれだけのパフォーマンスが行えるかが、ビッグビジネスへの鍵になってくるのではないだろうか。

image by: エコランドリーmammaciao-マンマチャオ Facebook

長浜淳之介

プロフィール:長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)

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兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。

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