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中学校側が「いじめではない」とシラを切り続けたLINE画像の衝撃

以前掲載の記事「いじめの『学校調査』に闇。被害者の依頼で探偵が突き止めた真犯人」が大反響を呼んだ、数々の「いじめ」問題を解決に導いている現役探偵の阿部泰尚(あべ・ひろたか)さん。自身のメルマガ『伝説の探偵』の最新号では、問題を解決する気がまったく感じられない教師や学校が関わっていたある「いじめ問題」について、生々しいLINE画像も公開しつつ、その解決までの道のりを紹介しています。

いじめ謝罪の会、反省文はいじめ解消の印ではない

いじめには解消の定義がある

(いじめ解消の定義)
いじめが止まっている状態が3ヶ月間(目安)継続しており、被害者が心身の苦痛を感じていないこと。

この定義は、2016年に青森県の中学2年生の女子生徒がいじめを苦にして自殺をした事件がきっかけになり見直されたものだ。この女子生徒は、いじめの相談を受けて加害生徒らを注意した教員が、その注意した時点で「解消」したと判断したが、いじめはその後も継続しており、安易にいじめが解消したと判断しないようにという教訓から見直しとなった。

つまり、それまでは、「謝罪の会」など何らかの形を設け、「はい、終わり!いじめは解消したと判断していたのだ。実際、2017年10月、文部科学省発表によれば、いじめの解消率はおよそ9割とされている(2016年度)。

前述のいじめ解消の定義の見直しは2017年1月のことだから、今後の解消率がどうなるのか、期待したいと言いたいところだが、全く期待できないというのが現場にいての感想だ。

ある中学生からの相談

東海中部地方の中学校に通う中学2年生の男子生徒から、直接、電話相談を受けた。

相談の内容は、

中1の入学当初から特定の男子生徒から暴力・暴言を吐かれるようになり、夏休み前に我慢ができなくなって、不登校になった。夏休み明けからしばらく、当時の担任教員から、加害者の反省文を渡され、学校に行くようになったが、その後もいじめは続いており、今度は目立たぬように、足を踏んだり、階段で押す、露骨な仲間はずれが行われた。その都度、担任には相談したが、「奴らは反省しているから、お前も受け入れて強くなれ」と言われ続けた。中2になってクラス替えがあり、違うクラスになると思っていたが、加害者らグループと同じクラスになっていた。もう我慢できないので、学校に行きたくない。

というものだった。

私の回答は、「学校に行く必要はない。これは身の安全を図るための回避だから」である。だが、いじめをするようなくだらない奴等や生徒を守ろうとしない教師によって、不利益を生じてはならないから、すぐに復帰できるように勉強だけは続けようとアドバイスした。

翌日、親からクレームが…

ところが翌日、今度は保護者から連絡が入った。

「あなたが余計なことを言うから、子供が学校に行かなくなってしまった。どう責任を取るんだ!?」

いじめの事実を告げると、保護者は「知っていますよ」と続けて、「学校ではもう解消したことになっている」と言ってきた。保護者は、いじめが解消していない事実を薄っすらと勘付いていたようだが、私に話していないと思って、クレームをしてきたそうだ。

加害者からの要求

本人に電話を代わってもらい、状況を聞くと、今度はLINEで加害者から連絡が入っているということだった。

※編集部で画像の一部を修正

すぐにブロックしたとのことだが、被害者本人は、突然家に来るのではないかと恐怖感を持っている状態であった。保護者も、仕事があり、家に常にいるわけではない。そこで、学校側に相手保護者にも状況を伝えるように依頼し、今後このようなことが起こらないように指導をしてもらうことになった。

しかし、学校の回答は、「すでにいじめは解消しており、生徒が学校にくるように促したのは、言葉が乱暴であっても、社会通念上よくあるやりとりであり、問題ではない。むしろ、健康であるのに学校に来ないのは、家庭教育上の問題だと捉えられるから、ご家庭で、登校を促すように努力してほしい」というものであった。

学校と直接交渉

そこで私から学校に連絡することにした。まず、最大の問題点として、「いじめの解消」を何を根拠に判断しているか質問をした。すると、「反省文を書かせた時点で、いじめは解消した」とのことであった。

そこで、文部科学省が示した各校が持つ「いじめ防止基本方針」の改定案の中で、いじめ解消の定義が見直しになっていることを告げ、反省文を書かせた時点では、目安としての3ヶ月間は到底経っていないし、いじめが止まっている状態の継続とは言えないこと、被害者の心身の苦痛は現状でもまだ続いており、定義上解消とは言えない、と伝えた。

また、反省文では、現物を見ていないので、確認をしたかったところではあるのだが、「ごめんなさい反省してますの一文のみであったことも確認したが、担任は、「それを書かせるのも、相手さん(加害者側)の親御さんの目があり、精一杯だったんです」と同情を仰ごうとしていた

被害者からすれば、毎日毎時間、蹴られたり殴られたり、持ち物を目の前で壊されたり、まるでおもちゃのようにされてきた。それが、いざ反省文となれば、その一文のみで終わり、一旦リセットしてやり直せるわけもない

だから、私はいじめの定義にある大前提「いじめ対応は被害者の立場に立って行うこと」とあることを伝え、解消の判断を修正しない場合は、管轄の教育委員会に指導要請をおこない、同時に人権救済の申し立てをすすめるようにサポートすると伝えた。

さらに、LINEの暴言を「社会通念上、よくあるやりとり」としたが、社会通念上とは、「日常的に」や「一般常識と考えて」に置き換えることができるが、被害者本人もその保護者も、私や弊社スタッフも、このトークを一般常識と考えて受け入れることができないと考えていることを告げ、一般に「社会通念」を使う場合は、だいたいの人が当たり前と考える行動などを示す場合で、「電車に乗るには運賃がかかる」などに使う。つまり、これを「社会通念上、よくあるやりとり」とするのは乱暴であって、仮に先生(担任)が、これを「よくあるやりとり」だと考えるのであれば、我々とは考えが異なるのだから、個々の価値観の違いが生じる。そういう場合は、「社会通念上」と表現するのは、極めて好ましくないということを伝えた。

学校側の答え

担任は「ごもっとも」と答えつつ、「学校教員の実務として、『いじめの定義』とか『いじめ解消の定義』を一々守っていたらいつまで経っても何も終わらないと話し、文科省のお偉いさんは現場を知らんのです」と言い放った。

教員の忙しさはわかるが、それを言ってしまっては、話にならないので、後日、学校長と話すことを約束し、電話を切った。

その翌日、保護者からの連絡によれば、担任教員が突然自宅にあらわれ、玄関で土下座をしようとしたそうだ。たまたま家にいた父親が土下座をさせず、家にあげると、泣きながら校長には何も言わないで欲しいとお願いされたそうだ。

だが、すでに意見書を私は発送していたし、保護者は被害生徒のいじめがどのように学校から教育委員会に報告されていたか行政に対して開示請求をしている。私の意見書は、NPO法人ユース・ガーディアンとして、学校長と教育長、教育委員会指導課課長、被害者(保護者)に同時発送されるもので、担任教員に伝えたことを中心に、予防教育の徹底といじめ防止基本方針の見直しと再確認、被害生徒が安心して通学できるようにするために具体的な計画が記されている。

結果的に

結果的に教育委員会は、越境を認め被害生徒が転校するにあたり、時期を待つ間にカウンセリングや学習サポート(支援)を行うことになった。

なんだ転校ならさっさとすればいいじゃないか! と思う方もいるかもしれないが、ここまでしても越境をすぐに認める教育委員会は少ないし、受け入れ校を探すのも大変なのだ。

それにしても、「いじめ解消の定義」があまりに知っている人が少な過ぎて、話し合いの際に説明しなければならないことが多過ぎる。まずは、いじめの定義と同時にいじめ解消の定義の周知徹底をやっていただきたい。

image by: shutterstock.com

阿部泰尚この著者の記事一覧

社会問題を探偵調査を活用して実態解明し、解決する活動を毎月報告。社会問題についての基本的知識やあまり公開されていないデータも公開する。2015まぐまぐ大賞受賞「ギリギリ探偵白書」を発行するT.I.U.総合探偵社代表の阿部泰尚が、いじめ、虐待、非行、違法ビジネス、詐欺、パワハラなどの隠蔽を暴き、実態をレポートする。また、実際に行った解決法やここだけの話をコッソリ公開。
まぐまぐよりメルマガ(有料)を発行するにあたり、その1部を本誌でレポートする社会貢献活動に利用する社会貢献型メルマガ。

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