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なぜマクドナルドは、値段が高いバーガーが増えても客数が減らないのか?

「100円マック」から一転、高価格路線に舵を切ったマクドナルドの業績が絶好調です。ファストフードとしては若干高めの価格設定ながら、客足がむしろ増加している裏には何があるのでしょうか。店舗経営コンサルタントの佐藤昌司さんが自身の無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』で、その戦略・戦術に迫っています。

マクドナルドが高価格路線にシフトしても客数が増え続けているワケ

マクドナルドの高価格路線が止まらないようです。

100円均一商品をそろえた「100円マック」シリーズが充実していたり、かつてハンバーガーを59円という圧倒的な安値で販売したことがあるなどで「低価格路線のハンバーガー店」というイメージが根強いマクドナルド。その一方で、「最近のマクドナルドは高い」と思う人は少なくないのではないでしょうか。

2014年の期限切れ鶏肉使用問題で客離れが起きたマクドナルドは客足を回復させるべく問題発覚後しばらくは低価格メニューを充実させることで集客を図りましたが、それでは客足の回復につながらなかったため、16年ごろからはそれを改め、高価格・高品質のハンバーガーを投入する戦略に舵をきりました。これが功を奏し、客足の回復に成功したのですが、その一方で「マクドナルドは高い」と思う人が増えていったと考えられます。

高価格・高品質のハンバーガーの例として、たとえば、16年4月からは「グランド ビッグマック」(520円)と「ギガ ビッグマック」(740円)、「クラブハウスバーガー」(490円)、17年4月から「グラン クラブハウス」(490円)、18年1月から「ダブルビーフダブルチーズバーガー」(420円)を販売しています。どれも従来品と比べ高価格です。これら以外にも、高価格バーガーを相次いで投入しました。

これらの高価格バーガーにフライドポテト(Mサイズ)などのサイドメニューとドリンク(Mサイズ)がセットになった「バリューセット」となると、支払い価格は720~1,000円にもなります。「100円マック」など低価格帯のメニューが充実しているとはいえ、もはや、マクドナルドを「低価格路線のハンバーガー店とは呼べなくなっているといえるでしょう。

高価格のハンバーガーを投入したこともあり、既存店客単価は上昇し続けています。高価格バーガーを投入し始めた16年は客単価がすべての月で前年を上回り、16年の1年間では前年比で10%上昇しました。15年において8つの月で前年割れだった状況からは一変しています。17年も上昇が続き、1つの月が前年割れとなったものの、それ以外の11つの月で前年を上回り、17年の1年間では3%上昇しました。18年1~4月も高い水準で推移しており、4つの月すべてで前年を上回っています。

日本マクドナルドホールディングスの業績は好調です。17年12月期の連結決算は、売上高が前年比11.9%増の2,536億円、本業の儲けを示す営業利益は2.7倍の189億円でした。売上高は期限切れ鶏肉使用問題直前の13年12月期(2,604億円)に迫る水準にまで回復しています。客足が回復したことに加え、客単価が向上していることも大きく寄与しているのです。

マクドナルドは今も客単価を高めることに余念がありません

3月19日からは、午後5時から100円を追加で支払えば、ひき肉などを平らな形にした「パティ」の量が2倍になる「夜マック」を始めました。「チーズバーガー」など定番バーガーが対象で、単品でもセットでもパティが倍になります。しっかりと食事をとりたいというニーズがあるディナーの時間帯で「夜マック」を実施することで客単価を高める狙いがあります。

4月14日からは、定番商品の「ビッグマック」(390円)が生誕50周年を迎えることを記念して「ビッグマック50周年キャンペーン」を開始し、新たな関連商品として「ビッグマック ベーコン」(450円)と「ビッグマック BLT」(490円)を期間限定で販売しています。いずれも高価格バーガーといえるでしょう。

さらに、これらビッグマックシリーズのバリューセットに100円を追加するとフライドポテトがMサイズの1.7倍、ドリンクがMサイズの2倍になる「グランドセット」を用意しました。グランドセットにした場合、支払い価格は790~890円にもなります。これも、客単価を高める狙いがあります。

このように、マクドナルドは客単価の向上に力を入れています。それにしても、なぜマクドナルドは高価格バーガーを販売したり、客単価を高める施策を講じているのでしょうか。

16年から高価格バーガーの販売を始めたのは、期限切れ鶏肉使用問題で悪化したイメージを回復させる狙いがあったと考えられます。当初は低価格メニューで集客を図ろうとしましたが、それでは上手くいきませんでした。おそらく、消費者は「マクドナルドのハンバーガーが安いのは品質管理がいい加減だから」と考えてマクドナルドを避けた側面が少なからずあったのではないでしょうか。

そこでマクドナルドは高品質バーガーを投入することでわかりやすい形で「マクドナルドは変わった」とアピールし、そして「安かろう悪かろうというイメージを払拭する戦略に舵をきったのでしょう。ただ、高品質バーガーを開発するには費用がかかるため、販売価格がどうしても高くならざるを得ません。そのため、結果として高価格バーガーが次々と誕生することになったと考えられます。

高価格バーガーの投入は時代の流れに合致した側面もあります。アベノミクスで景気が回復しつつあり、多少ではあるものの、消費者の財布のひもが緩みだした時期でした。日本フードサービス協会によると、外食売上高は15~17年まで3年連続で前年を上回ったといいます。外食産業は活気づき、美味しければ多少高くても支払う消費者が増えていたといえるでしょう。そうした中でのマクドナルドの高価格バーガーの投入だったので、大きな抵抗感がなく受け入れられたと考えられます。

最近の客単価向上策に関しては、追加料金の支払いで量を増やしたり、既存の商品のサイズを大きくしたものを投入するなど、既存の商品を基にしたものが多いのが特徴です。まったく新しい商品を開発するとなるとコストがかさんでしまいますが、既存商品を基にしたものであればそれはさほどではありません。原材料費や人件費が高騰していることもあり、コストを抑えることを意識した施策に重点を置いていると考えられます。

こうした客単価向上策にも関わらず、客足は一向に衰えていません。18年4月まで28カ月連続で客数は前年を上回っています。高価格バーガーを販売しても客足が減らないことから、勢いに乗じて手を緩めずに高価格帯へのシフトを進めていったと考えられます。

一方で高価格帯へのシフトは低価格を求める人の離反リスクがあります。しかし、高価格バーガーを相次いで投入しているとはいえ、依然として100円マックなどの低価格メニューも充実しているので、そういった人の離反は限定的でした。100円の商品だけで過ごす人が今でも少なくありません。高価格帯のメニューと低価格帯のメニューが共存できている状況です。

マクドナルドは期限切れ鶏肉使用問題というピンチを高価格バーガーの投入で切り抜けている側面があるといえるのではないでしょうか。

店舗経営コンサルタントの視線で企業を鋭く分析!
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佐藤昌司のブログ「商売ショーバイ」

image by: McDonald’s Japan - Home | Facebook

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東京MXテレビ『バラいろダンディ』に出演、東洋経済オンライン『マクドナルドができていない「基本中の基本」』を寄稿、テレビ東京『たけしのニッポンのミカタ!スペシャル「並ぶ場所にはワケがある!行列からニッポンが見えるSP」』を監修した、店舗経営コンサルタント・佐藤昌司が発行するメルマガです。店舗経営や商売、ビジネスなどに役立つ情報を配信しています。

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【著者】 佐藤昌司 【発行周期】 ほぼ日刊

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