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アマゾンに死角あり。大手スポーツショップに残された「勝ち目」

年商15兆円を超えるという巨大な黒船、米Amazon。書籍だけでなく、すべての商品をターゲットとしているAmazonに、日本の大手老舗スポーツショップは太刀打ちできるのでしょうか? 無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』の著者・梅本泰則さんは、この現状を「厳しい」としつつも、見抜いたという「ある弱点を突く方法」について紹介しています。

大手スポーツ店はアマゾンに勝てるか

大手スポーツ用品店アルペンが、いよいよ動き出しました。この4月に、愛知県春日井市にアウトドア専門店をオープンしたのがその一つです。

アルペン アウトドアーズ 春日井店

大型スポーツチェーンが生き延びる戦略の一つとして、取り扱いスポーツを絞り込むことは、十分に考えられます。目先の戦略としては、その方向性は正しいでしょう。そして、今回はアウトドア用品に絞り込みました。

矢野経済研究所によれば、2016年のアウトドア用品市場は約2,056億円(メーカー出荷額)です。これは、スポーツシューズ、ゴルフ用品市場に次いで、3番目の市場になります。しかも、毎年10%以上伸び続けている市場です。そのうえ、中小スポーツ店があまり力を入れていない市場でもあります。同社がこの市場に狙いを定めたのは、当然と言えば当然です。おそらく、この戦略はうまく行きます。

そして、並行してもう一つの戦略を打ち出しました。同じく4月に、千葉県印西市に新しく物流拠点を作ったのです。しかも、AIロボットを導入しました。

AI物流ロボット導入とEC拠点移転のお知らせ(PDF)

発表によれば、「EC市場の拡大に対応」するため、とあります。なるほど。ネットでの売上を拡大するのが、同社のもう一つの戦略のようです。また、物流コストを下げて生産性をあげることも目的でしょう。

今回のこの二つの動きは、私にはどうもアマゾンを意識しているように思えてなりません。

アマゾンの戦略

ご存知のように、アマゾンは1994年にネットでの書籍販売をはじめました。その後、わずか二十数年で年商15兆円を超える企業になったのです。

アマゾンは、もともと書籍だけでなく、すべての商品を販売ターゲットとしています。ですから、アマゾンマーケットプレイスでは、家電、玩具、日用品、事務用品、音楽、アパレルなど次々に取り扱い商品を増やしてきました。そして、その革新的な販売方法によって、市場を奪ってきたのです。そのため、大手チェーンが倒産に追いやられたと言われます。

スポーツ用品はどうでしょう。米国アマゾンでは、スポーツ用品の販売も伸びています。日本ではまだまだですが、じわじわとその脅威が迫ってきているところです。大手スポーツ店にとって、アマゾンの動きが気になるのは仕方がありません。

では、大手スポーツ店は、アマゾンに対抗できるでしょうか。正直に言って、私は難しい気がします

そもそも、アマゾンは普通の小売店ではありません。誰もが行っていない方法によって、顧客を取り込んでいます。

例えば、アマゾンプライム会員。世界の会員数は1億人を超えたそうです。その年会費だけで1兆円の収益になります。

ダッシュボタンによるリピーター購買の推進アマゾン・ゴーによる代金支払いの利便性アマゾン・エコーによる新しい消費行動の出現。さらには、アマゾンウエブサービスによるクラウドビジネスが、年商1兆円を超えたと言います。

もう小売の域ではありません。IT、データ、物流、コンテンツ、広告業界も侵略されているのです。

ですから、こんなお化けのような企業に、日本のスポーツ店が太刀打ちできるとは思えません。当面は、特定のスポーツジャンルやEC市場に切り込んで、売上を拡大することはできるでしょう。物流の合理化で事業利益を確保することもできます。

しかし、とうていそれだけでは、次の時代を切り拓くことはできません。では、どうしたら良いでしょう。

次の戦略

今の私には、二つの方法が考えられます。一つは、アマゾンのように画期的な戦略をとることです。もう一つは、アマゾンの弱点を突くことです。

画期的な戦略というのは、今は世にないサービスや方法を考え実行していくことです。アマゾン・ゴーやダッシュボタンのようなアイデアですね。現在はない方法ですから、私には具体的に思いつきません。そのカギは、会社の「理念」の中にあるような気がします。

そして、もう一つのアマゾンの弱点を突く方法です。アマゾンに、弱点はあるのでしょうか。考えてみましょう。

実は、アマゾンは、「顧客優先」と言っています。そして、よく見てみると、そのための一番の戦略は「低価格」ということにしかすぎません。だから、多くの業界がやられてしまうのです。

しかし、それは本当の意味での「顧客優先」だとは思えません。アマゾンが持つ顧客データは、所詮デジタルなものです。無機質なものです。ここに弱点があります。なぜなら、本当の「顧客」とは、もっと生身なものだと思うからです。

つまり、「顧客」には「心」や「感情」があります。アマゾンを見ていると、人間をロボットのようにしか考えていない気がするのです。人間は、プログラムで操作できるものではありません。ここに、アマゾンの弱点がある気がします。

ですから、アマゾンは、どんなに頑張っても人が行うような接客はできないでしょう。どんなに頑張っても、人と人との絆を強くする行為はできないでしょう。例をあげれば、岡山のスーパー「ハローデイ」のようにわくわくする売り場づくりや、お客様とのつながりを持つことはできません。また、東京町田の電気店「でんかのヤマグチ」のように地域の人たちと交わることはできません。

ここから言えることは、大手スポーツ店がとるべき戦略の一つは、人と人との「つながり」です。また、仮にアマゾンへの対抗を考えていないとしてもこれは必要な戦略なのではないでしょうか。

その点、あなたのお店は大丈夫です。優れた接客力があります。地域の人たちとの交流も盛んです。人と人とのつながりは、アマゾンといえども手を出せませんから。

■今日のツボ■

image by: Jonathan Weiss / Shutterstock.com

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ワン・トゥー・ワンコンサルティング代表。スポーツ用品業界での経験と知識を生かし、業界に特化したコンサルティング活動を続ける。
スポーツ用品業界在籍33年の経営コンサルタントが、スポーツショップの業績向上法について熱く語ります。スポーツショップのために書かれた、日本初のメルマガです。ここには、あなたのお店がかかえている問題を解決するヒントがいっぱいです。

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【著者】 梅本泰則 【発行周期】 週刊

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