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極めて悪質。国会答弁に合わせ「森友記録」を破棄した財務省の愚

23日、森友学園側との交渉記録を意図的に廃棄していたことを公表した財務省。その理由は、辞任した佐川理財局長の答弁に合わせるためという悪質極まりないものでした。この言語道断な財務省の行いを、新聞各紙はどう伝えたのでしょうか。ジャーナリストの内田誠さんが自身のメルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』で詳細に分析しています。

財務省理財局の森友記録破棄を新聞各紙はどう伝えたか

ラインナップ

◆1面トップの見出しから……。

《朝日》…「森友記録 意図的に廃棄」
《読売》…「国会中に改ざん・廃棄」
《毎日》…「理財局 廃棄を指示」
《東京》…「昭恵氏隠し 鮮明に」

◆解説面の見出しから……。

《朝日》…「『まず昭恵氏に』浮かぶ」
《読売》…「値引き要求 執拗に」
《毎日》…「財務省 隠蔽重ね」
《東京》…「政治家の名 何人も」

ハドル

何ということでしょうか。膨大な森友交渉記録が残されていたのに、佐川前理財局長の答弁に合わせ、まさに国会で問題が議論されている最中に、決算文書の改ざんと並行して廃棄されていた。国会と国会議員、そしてすべての有権者は財務省に虚仮にされ、小馬鹿にされていたのです。

当然、この問題をきょうのテーマにします。

基本的な報道内容

財務省は、森友学園との国有地取引が問題となっていた昨年2月下旬以降、佐川理財局長の答弁に合わせるために交渉記録を意図的に廃棄していたことを明らかにした。決算文書の改ざんと同時並行で。

森友学園との国有地取引巡り、財務省は交渉記録950ページを国会に提出。2013年6月から16年6月に掛けての217件の記録で、正式な文書の保存場所である「行政文書ファイル」ではなく、職員が個人的な手控えとして残していたものだという。大阪地検の協力も得て復元した。記録には、学園側から定期借地権の賃料減額を要望する照会が安倍総理夫人の昭恵氏にあり、夫人付き職員の谷査恵子氏が財務省に問い合わせたとの記載も含まれている。

首相の妻、安倍昭恵氏付きの職員が、森友学園との土地取引で財務省に問い合わせたことを示す文書が明らかになったことで、衆院厚労委で野党が総理を追及。安倍氏は「値下げしてくれということではなく、こういう制度があるのか、これは適用されるのかっていう制度上の問いをしている」と強調。交渉ではないと強弁した。

財務省の犯罪

【朝日】は1面トップが三つの部分から成る大きな記事となっていて、天声人語もこの問題がテーマ。2面の解説記事「時時刻刻」、5面は国会の議論を紹介する「焦点採録」、7面には公表された交渉記録の要旨、14面に社説、34面35面の社会面にも関連記事。見出しから。

1面

2面

14面

34面

35面

uttiiの眼

《朝日》は昨日の加計問題に続き、総力を挙げて「森友交渉記録の破棄を糾弾している。とりわけ、見出しの中には社説の「国民あざむいた罪深さ」や社会面「記録廃棄『言語道断』」、「政治史に残る事件」など、最大級の言葉が容赦なく使われている印象。この間、加計問題も森友問題も、ともに《朝日》が取材によって安倍政権追及の局面を切り拓いてきたことを考え合わせれば、《朝日》自身、重要なピークを迎えたという手応えがあるのかもしれない。政権がすぐに倒れることはないかもしれないが、逆に言えば、事態が収束に向かうこともないだろう

社説は、「交渉記録は廃棄した」との佐川理財局長の答弁の裏で、実際には残されていた記録をセッセと廃棄した財務省の罪を難じた後、谷査恵子氏が安倍昭恵氏への照会を受けて財務省に問い合わせたことに言及。《朝日》はこの問題がキーになるとみているようだ。

一面記事の後段は、この「照会」問題に対する安倍総理の反応について書かれていて、答弁の中では、「値下げをしてくれということではなく、こういう制度があるのか、これは適用されるのかっていう制度上の問いをしている」と語ったようだ。制度の照会は交渉ではないという苦しい理屈。高度な「交渉術」と言ってもよいし、交渉を超えた「圧力」とみなされても仕方がない。財務省は、この照会を、広い意味での「交渉と見たからこそ、「交渉記録として残していたのだろう。

安倍総理の妻、安倍昭恵氏は、森友学園への国有財産売却に関し、その価格交渉に深く関与した。このことは疑いようもない。よって、安倍晋三氏は自らの言に従い、即刻内閣総辞職をした上で議員辞職すべきだろう。

財務省は被害者?

【読売】も1面トップに2面記事、3面の解説記事「スキャナー」と社説、8面に国有財産についてのQ&A、9面は財務省について、13面に「交渉記録の要旨」、35面社会面も。見出しから。

1面

2面

3面

9面

35面

uttiiの眼

《読売》も多くの紙面を費やしてこの問題を報じているが、中心的に伝えられているのは、価格交渉における籠池夫妻の乱暴さだ。

見出しで言えば、3面の解説記事「スキャナー」に「値引き要求 執拗に」「籠池被告妻 コースター投げ「嘘つき」」とあるのを見れば分かる。「多くの政治家や関係者の名前が記載される異例の交渉に、財務省や近畿財務局は翻弄されていた」と、財務省側に同情的なスタンスを表明している(リード末尾)。「関係者」とあるなかには圧倒的な重みを持って「安倍昭恵」の名が入っているはずだが、ここにはなぜか記されていない。

籠池夫妻が決して「上品な交渉者」でも「控えめな人格者」でもないことは重々承知している。記録の中には、妻の諄子被告が近畿財務局の統括官にコースターを投げ付け、「嘘つき、お前なんか信用できない、帰れ、等の暴言を吐く」という記載もあり、《読売》はこうした点を捉え、財務省が一種の被害者であったかのように描こうとしているようだ。

だが、籠池夫妻に強圧的な主張をされたから、不当な安値で売却することになったのだろうか。

強い言葉で攻撃してくる相手に対しては、役人らしく、自分の立場と法の規定内容を伝え、できないことはできないと断ればよい。野党のヒアリングの時などはどんなに厳しい言葉で攻め立てられても妥協などしないではないか。もしも相手が乱暴を振るうようなら、警備員を呼ぶなり、警察を呼ぶなりすればよい。一度暴力的な行為があったなら、そのことを根拠に以降は面会を拒否すればよい。

《読売》が展開している「8億円値引きの理由」として納得ができそうなのは、財務局が「地中に大量のガラスがあったことを認識していたにもかかわらず、籠池被告側にきちんと説明していなかった弱み」くらいか。

財務省の誇り高き役人たちが、籠池夫妻に詰られ、ものを投げ付けられても「交渉」を続けざるを得ず、結果として8億円の値引きまでさせられることになったのは、安倍昭恵氏の存在があったからであり、その背後に、安倍総理の存在があったからではないのか。《読売》も籠池夫妻が、特に売買の話になってから「首相夫人や政治家などの名前を頻繁に持ちだして圧力をかけていた」と記していて、財務局は度々困惑させられていたとしている。しかし、2面記事では、昭恵氏付きの谷査恵子氏による照会の件について触れながら、「交渉記録からは、安倍昭恵首相夫人の存在などが取引に影響を及ぼした可能性を、明確に読み取れる内容はなかった」と断言している。

籠池夫妻が財務局を手玉にとっていく構図は、「虎の威を借る狐」そのものだと思われる。結果として国の財産が不当に安く売られてしまったことを問題にするにあたり、《読売》は「ばかり追い回し、「は免罪したいらしい。それでは話にならないだろう。

麻生氏引責が焦点?

【毎日】も1面トップに2面3面の解説記事「クローズアップ」、4面に関連記事、9面の特集は交渉記録要旨と年表、社会面にも。見出しから。

1面

2面3面

4面

31面

uttiiの眼

《毎日》もかなりの紙幅を使って報じてはいるのだが、全体に静かな印象。さすがに見出しの中には「1年間 国民だました」とか「改ざん・廃棄 組織防衛を優先」といった激しいものもあるにはあるのだが、なにか、文書廃棄を含め、財務省の所業について「不祥事程度の事柄と割り切ったような雰囲気を感じる。

1面記事は、財務省による交渉記録の廃棄を指示したのは本省理財局の職員で、近畿財務局の複数の職員が「捨てるよう指示を受けた」と証言しているらしい。また、財務省職員の手控えの形で発見された交渉記録は、「国会提出に当たり、捜査当局の協力も得てほぼ全てをそろえたといい、記録は全217件、A4判で960ページに上った」としている。

これには疑問がある。

「ほぼ全てをそろえた」と言える根拠はどこにあるのだろうか。完全に全てであれば何ページになるのか、何と何が欠けているのか、その詳細は報告されないのであれば、信用はできまい。《毎日》、ちょっと甘いのではないか

もう1点。2面の記事は、「麻生氏の引責焦点」との見出しで、野党が財務省の交渉記録廃棄や決算文書の改ざんの責任をとって、麻生財務相の辞任を求めていることを伝えている。確かに、政権を支える麻生氏は、安倍氏にとっては総裁選の3選を実現する上でも重要な人物。だが、今回、隠蔽されていた資料が一部陽の目を見たことの結果、麻生氏が辞任するかしないが焦点になるとは思えない。安倍総理の引責云々なら分かるが

昭恵氏を隠せ!

【東京】も1面トップに2面の解説記事「核心」、5面社説、6面7面に「主なやり取り」、26面社会面も。見出しから。

1面

2面

5面

26面

uttiiの眼

《東京》のターゲットはハッキリと昭恵氏」に定められている。

1面記事のリードは、「昨年2月に安倍首相が『妻(昭恵氏)が関与していたら首相を辞める』とした国会答弁の直後に、約3,000ページの決裁文書の改ざんと記録の廃棄で、昭恵氏側の関与を隠そうとしたことになる」と締められており、鮮明な問題意識が表明されている。

記事に入ると、「交渉記録には、昭恵氏の名前が少なくとも9回登場」していること。また、2015年11月に、森友側から国有地の賃料減額の優遇制度について財務省に問い合わせたことの記載がある点にも触れる。これについて安倍氏は、この「問い合わせ」を「自発的」と説明してきたにもかかわらず、記録には「優遇を受けられないかと総理夫人に照会があり、問い合わせた」となっていて、総理の説明と食い違いを見せている旨指摘している。

これらの点は、野党などが国会で安倍氏を追及する裁の重要な論点の一つになるかもしれない。

あとがき

以上、いかがでしたでしょうか。

大変な事態に突入したのだと思います。

ここまで腐敗した政府の有り様を毎日のように見せつけられているというのに、岩盤のような支持率30%がどっしりと構えているので、政権は動かない。まして、与党が国会で圧倒的な多数を握っている現状では、なかなか事態はスッキリと動きません。しかし、安倍政権の「粘り腰」は、かえって自民党の支持基盤を深く痛めつけることになり、その後の日本政治の振り幅を大きくする結果に結びつくような気がします。強烈な政治不信を背景に、ポピュリストが大きな力を握るようなことがないとは限りません。自民党の皆さんは、そろそろ、そんな危険も考慮して、党内の人心を一新してはどうでしょうか。

というところで、きょうはここまで。

また明日。

image by: GoogleMap(Akio Mukaiyama)

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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