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中国対抗を考えると、日露首脳会談での安倍外交が大正解なワケ

26日に行われた日ロ首脳会談。今回もさまざまな具体的な合意がなされましたが、「ロシアだけが得をしているのでは」という疑問の声も上がっているようです。安倍総理は百戦錬磨のプーチン大統領に手玉に取られているのでしょうか。無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では、著者でロシア在住の国際関係ジャーナリスト・北野幸伯さんが、今回の首脳会談を詳細に振り返るとともに、「安倍総理の対ロシア政策は国益に沿ったもの」との見方を示しています。

安倍―プーチン会談の結果

安倍さんとプーチンさんが26日、モスクワで会談しました。どうだったのでしょうか?

まず、日ロ関係を簡単に振り返ってみましょう。安倍さんが総理になられた直後の2013年、日ロ関係は劇的に改善されました。というのも、安倍さんは「私が北方領土問題を解決する!」と固く決意しているからです。

ところが2014年3月、「クリミア併合日ロ関係は再び悪化した。日本が、アメリカ主導の制裁に加わったからです。しかし、2016年12月、プーチンが訪日。これで、日ロ関係は劇的によくなりました。以後、アメリカとロシアの関係が悪いにも関わらず、日ロ関係は大変良好なのです。

関係の良好さをアピール

首脳会談もそうですが、その他にも「両国関係はいいのですよ」とアピールする姿勢が見られました。

安倍さんは、日本の総理としてはじめて、「ペテルブルグ経済フォーラム」に出席した。このフォーラムに参加した外国人政治家の大物は、安倍さんとフランスのマクロンさんでした。IMFのラガルド専務理事も来ていた。それで、プーチンは、「ロシアはそんなに孤立してないぜ」と国民にアピールできた。

ザギトワさんに秋田犬をプレゼント。こういうのもいいですね。国営テレビで放送されていました。ザギトワさんは、ますます親日になったことでしょう。そして、テレビでこのニュースをみたロシア国民は、「日本は優しいな」と思ったことでしょう。

安倍、プーチン、日ロ宇宙飛行士と交信

首相とプーチン氏、日ロ宇宙飛行士と交信 会談の合間に

朝日新聞DIGITAL 5/27(日)1:25配信

 

日ロ首脳会談のためにモスクワを訪れている安倍晋三首相は26日午後(日本時間27日未明)、クレムリンでの首脳会談の合間に、プーチン大統領と共に、昨年12月から国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在している日本とロシアの宇宙飛行士と交信した。

ユニークです。

安倍、プーチン、日ロ交流年開会式に出席

安倍首相「日ロの信頼と友情を」=交流年開会式に出席

5/27(日)7:01配信

 

【モスクワ時事】安倍晋三首相は26日、日本とロシアの「交流年」の開会式にプーチン大統領とそろって出席した。

今年は、「日ロ交流年」だそうです。日本では、いろいろロシアがらみの催しが、ロシアでは日本がらみのイベントがたくさん開かれるのでしょう。

というわけで、安倍さんもプーチンさんも、「日ロ関係をよくしていこうという意欲が伝わってきました。

日ロ首脳会談の結果は?

では、日ロ首脳会談の結果はどうだったのでしょうか? まず、北朝鮮問題から。

日露首脳、北の非核化へ「緊密に連携」で一致

読売新聞 5/27(日)3:04配信

 

【モスクワ=池田慶太】安倍首相は26日夜(日本時間26日夜から27日未明)、モスクワのクレムリン(大統領宮殿)でプーチン露大統領と会談し、北朝鮮の非核化に向けて緊密に連携することで一致した。

日本とロシア、北の非核化で「緊密に連携」だそうです。「非核化」という「最終目標」は同じ。しかし、アプローチは違います。プーチンは、中国と共に、一貫して「対話派」。彼は、ロシアにとっての「緩衝国家」北朝鮮が、戦争で消滅することを望んでいない。プーチンが、この立場を変えることはないでしょう。

次、経済関係。皆さんご存知のように、アメリカは、ロシアへの制裁をますます強めています。それで、日本企業がロシアに投資したり、ロシア企業と関係を深めるのは、とても難しい。というのも、アメリカ政府、アメリカの金融機関、アメリカでのビジネスに問題が生じる可能性がある。

それでも、驚くべきことに、今回さまざま具体的な合意がなされました。署名された文書の一部を見てみましょう。

具体的な経済協力が進み、ロシア側も喜んでいることでしょう。

最後に北方領土問題。北方4島における経済協力に進展がありました。

これらについて具体化にむけた作業を加速することで合意しました。

日ロ関係の本質

ここまでの話を聞いて、「なんだかロシアばかり得してないか?」という批判がでてきそうです。まず、投資については、もちろん日本企業も「利益」を見込んで開始します。ですから、「ロシアだけが儲かる」とはいえません。

北方4島についても、「なんでロシアを助けんといかんのだ」という批判がでそうです。しかし、政府高官が会うたび、毎回毎回一言目に「島返せ!」といっていれば「いつか返してくれるよね~」というのは、あまりにナイーブすぎるでしょう。

そして、日ロ関係の最重要性は、「安全保障」なのです。基本に戻って考えましょう。中国は2012年11月、ロシア、韓国に「反日統一共同戦線構築」をよびかけました。この戦略の骨子は、

※ 必読完全証拠はこちら→反日統一共同戦線を呼びかける中国

中国は、アメリカ、ロシア、韓国と共に「反日統一共同戦線」をつくろうとしている。つまり、日米、日ロ、日韓を分断し、日本を孤立させ、尖閣、沖縄を奪う。だから日本は、逆に日米、日ロ、日韓関係をますます強固にすることで、「反日統一共同戦線無力化」しなければならない。

安倍総理は、まさにこれをやっているのです。それで、日米関係同様、日ロ関係も、ますます発展させていかなければならない。これ、「北野さんロシアに住んでるからいうのでは?」といいたい人もいるでしょう。

では、世界最高の戦略家ルトワックさんは、なんといっているか? 日本が独立を維持できるかは、「ロシアとの関係が決定的である」としています。

もちろん日本自身の決意とアメリカからの支持が最も重要な要素になるのだが、ロシアがそこに参加してくれるのかどうかという点も極めて重要であり、むしろそれが決定的なものになる可能性がある。
(『自滅する中国』p188)

そう、「日米ロで中国を封じ込めろ」と主張しているのは、私だけではない。ルトワックさんも、リアリズムの神様ミアシャイマーさんも同じ意見なのです。

image by: 首相官邸

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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