何事も意思決定が遅い、全てにおいて手続き重視…。こうした官僚的風土はお役所の専売特許ではありません。企業も大きくなれば部門や役職が壁となり、動きが鈍くなりがちです。地域一番店づくりの専門家として活躍中の前沢しんじさんは自身の無料メルマガ『販促アイデアと経営活性化』の中で、とある精肉小売店チェーンの成功事例を上げ、コミュニケーションやスピード感の大切さを力説しています。
郵便局全国通販で7707個を売ってナンバーワンに!
「郵便局の通販ってのがあるらしくて、そこに出してみたらどうでしょうか」
若手の社員が言ったひとことから始まりました。
私がコンサルとして参画していたある精肉小売店チェーンでは、営業部長と私が1週間に2~3回、定期的に雑談(実はこれがすべての営業の種になっていくのですが)をしていました。そこにはだれでも参加できるようにいつもドアをあけていました。
ですからあるときは社長がきて長時間話をしていく、そこにパートさんが参加してなんかアイデアを言う。ベテランが来て座っていく、中堅が顔を出す、若手がなにかを持って訪ねてくる、遠くの店の店長がひょいと来る、退職した社員が訪ねてくる、などのまったくフリーな「コミュニケーションの場」でした。
実はここから多くの経営、販促アイデアが生まれることになるのですが、今後おいおい紹介していきます。
その若手のひとこと「郵便局の全国通販」に私と部長が飛びついたのです。
O部長 「お、それおもろそうやな。いっぺん調べてみてくれ」
翌日にはさっそく彼がパンフレットをもってきました。
私 「Oさん(営業部長)、これどうやろ? いけるんちゃう?」
O部長はパンフレットをしばらく凝視して言いました。
「やってみよう。外商部作らなあかんな」
即答どころか、彼はそれに本格的に取り組むための組織作りまで考えていたのです。
僕と彼は30年の苦楽を共にしてきた阿吽の呼吸があって、それぞれが提案したことは基本的に「すべてOK」というものでした。
その後1ヶ月もたたないうちに外商部が設立されました。陣容は、人員2名。売上げ予算月400万。そしてチーフには言い出しっぺの若手社員O君! 彼は牧場勤務からいきなり外商部チーフになった、というかさせられた! わけです。
もちろん組織ですから、社長の承認や、人員の配置転換に伴うさまざまな事務手続きなどの要件はありますが、その会社は柔軟且つスピードがモットーでした。
O部長の「やるからにはナンバーワンをとるぞ!」の大号令をもとに主要テーマが決められました。
- 最低でも5000個売る。
- 5000個になると一店舗では手に負えない。そのためには全店で一致して、同じ品質の商品を、おなじ時間でつくる仕組みを作らなければならない。
- クレームゼロのために徹底した事前シミュレーションを行う
その後、部長主導で商品づくり。全店で意志統一と情報共有のための会議を1週間に2回。商品の納品は3日間で行う。当然3日間は戦争状態です。店舗を営業しながら別口で通販商品を作るのですから、その忙しさ緊張感は想像を絶します。まさに「戦争」でした。しかし全員がいっしょになって熱く燃えた3日間でした。
結果。これまでの記録は、九州のある精肉企業が売った約3000個でした。それを大幅更新して7707個! 部長の宣言通り「ナンバーワン!」に輝きました。そしてクレームは「実質ゼロ」でした(たった1個だけ不可抗力によるものあり)。
だいじなこと
- 何かをやると決めたら「徹底的」にやる
- 小さくまとまるな。目標は大きくもとう。目標を実現するためにはそのための段取りをじっくり練る。そして完璧に計画と準備を行う
- みんなの力を結集するには「やる気共有」と「情報共有」が必須
- だれの意見でも聞く。若手でもパートでもアルバイトでも。みんなけっこういいアイデアをもっている。その提案場所がないだけの場合がある。だからオープン会議は効果的
- 「そんなことしてもダメだろう」などの先入観をすべて排除する。先入観ほど成長を阻害するものはない!
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