選挙の季節になるとよく聞かれる「リベラル」という言葉ですが、ではそのリベラル、本来は何を表すのでしょうか。今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』では編集長の柴田忠男さんが、「日本のリベラルは偽リベラルだ」とする元官僚・八幡和郎氏の著作を紹介しています。
『「立憲民主党」「朝日新聞」という名の“偽リベラル”』
八幡和郎・著 ワニブックス
八幡和郎『「立憲民主党」「朝日新聞」という名の“偽リベラル”』を読んだ。著者は元官僚、評論家、歴史作家、徳島文理大学教授。リベラルとはどういう意味か。かつては自民党の中における「全面的な戦前回帰に否定的で親欧米的な人たち」を指していた。中道左派もそれに近い。西欧的な自由を重んじ進歩的なイメージで受け止められてきた良い言葉だった。
ところが、いまは新旧「左翼」の人々が、「リベラル」という新しい看板を掲げるようになった。「政治用語として『共産主義や社会主義に共鳴する人々』を『リベラル』などと表現することは笑止千万で、欧米では絶対にあり得ません」「立憲民主党に結集する旧社会党系や外交問題で反米的な人たち、そしてそれを支援するマスコミや知識人が『リベラル』を名乗るのも驚天動地です」。
世界的基準からいって、なんともユニークで、お馬鹿な日本の左翼である。いま日本のマスコミで圧倒的に強いのは自称リベラル、国際的には左翼的な論調だ。こういう主張を、著者は「偽リベラル」という言葉で表す。そして、それを端的な形で代表するのが朝日新聞だと断ずる。すべてのテレビ局もお仲間だ。
国民はネットで情報を得る情報強者と、その手段を使いこなせず、新聞やテレビでしか情報を得られない情報弱者に分かれてしまった。その結果、情報強者である若者は与党支持、弱者である高齢者は野党支持という傾向がくっきり出ている。マスメディアの報道は、ほとんど偽リベラルの立場からされている。
この本は「偽リベラル」がいかに欺瞞に満ちているか、いかに日本の政治や経済社会をおかしくしているかを暴き、「本来のリベラル」とはどういうものか、その立場からすれば日本はどうあるべきかを伝えるために書かれた。立憲民主党がリベラルなわけがないし、ましてや共産党まで含めて「リベラル勢力」というのは、世界的に見ても非常識で恥ずべき認識違い、いや詐欺であろう。
政権を投げ出した民主党が、正しい反省、自己批判を行っていれば、安倍政権が飽きられたときに政権復帰のチャンスはあったはずだ。ところが現実の民主党は「野党らしく振る舞うことに終始する」路線まっしぐら。ブーメランおかまいなし。民主党左派は自分たちをリベラル派と呼ぶようになった。その言葉は間違っているが、今さら「左派」とはいいたくない人たちから歓迎された。
平成の世で「リベラル」と称しているのは、リタイアして学生時代の気分を思い出して、照れ隠しで「リベラル」という仮面を被っている人たちが主力だろう。定年退職、年金暮らし、手厚い高齢者福祉を受けている暇人。彼らのいうリベラルとは、問題先送り願望の強い、高齢者の世代的利益の擁護者である。
著者はブレない左翼政党にはそれなりの価値があると思っている。立憲民主党のような仮面政党は大嫌いだが、「社民党のようにいつまでも変わらない主張を正々堂々と飾らず続けてくれている党は、価値があるし好きでもあります。共産党は、戦術的に言っていることと本音に乖離があり過ぎて嫌いです」。まったく同感だな。福島瑞穂、日本語ヘタだけど面白い人~。
本と雑誌の知を再発見と銘打った、「LITERA」というネットメディアがある。いい本あるかなと見に行ったら、看板は大ウソで、左翼プロパガンダ満載ではないか。まさしく下品な朝日新聞という趣きだった。
そこで「この1年、安倍サマをかばいまくった安倍政権御用ジャーナリスト大賞! 2017年」を発表していた。「櫻井よしこや百田尚樹、小川榮太郎などカルト極右思想のアベ友は相手にしない」と最初から除外だって。ヘタレじゃのう。八幡和郎もめでたく9位にランクされた。1から順に名前を挙げてみよう。
- 田崎史郎
- 松本人志
- 長谷川幸洋
- 阿比留瑠比
- 三浦瑠麗
- 有本香
- 須田慎一郎
- 岩田明子
- (3名)高橋洋一・岸博幸・八幡和郎
- (2名)八代英輝・恵俊彰
番外.山口敬之
この記事を見て「リテラの記事が初めて役に立った」「信用できるジャーナリストとして最高」と人気沸騰だ。
八幡はネットメディア「アゴラ」で蓮舫の二重国籍問題の追及を始め、産経系のメディアが後追いし、ついには蓮舫の民主党代表辞任まで追い込んだ。その間、地上波のテレビでは一切発言させてもらえなかったが、潰されることもなかった。地上波や全国紙が扱わないテーマも、ネットメディアを通じればすぐ拡散するので、「自称」リベラル派メディアも統制がとれなくなっている。
旧民主党には、偽リベラルというべき人が多い。その偽リベラルのせいで、本当の意味のリベラル政党が日本で成立しない。若い人は偽リベラルに騙されていない。読売と早大政治経済研究所が2017に行った世論調査によれば、40代以下は自民党と日本維新の会を「リベラル」な政党、共産党や公明党を「保守的」な政党と捉えている。若い人ほど自民党を「リベラル」と感じている。
一方、50代以上は、偽リベラルが支配する既存メディアからしか情報を得られず、共産党を「リベラル」だと捉えるなど、大きな断層が生じている。そういう中にあって、著者は安倍首相は保守の枠内ながら、リベラルな色彩の濃い政策も、時代が要求するものであれば採り入れるなどよく頑張っているし、難しいトランプ大統領の時代に、日本の国益を奇跡的に守っていると見る。
やがて日本は安倍ロス現象に悩まされる。アメリカが民主党のリベラル大統領になれば、別の問題も出てくる。世界的な諸問題に力強く取り組めるような政治家が現れないと、日本沈没である。恐ろしいことに、安倍の次の首相をまったくイメージできないのだ。安倍やめろ、とプラカードや横断幕を持つひまな年寄りよ、じゃ誰が日本の首相をやればいいいと思っているのか問い詰めたい。
著者は、保守だけでなく、中道やリベラル、場合によっては穏健左派を排除しない保守・中道二党論を待望している。「ただ、そこに立憲民主党が入る余地はありません」と断言する。日本の今の平和は、憲法第九条によってではなく、アメリカと自衛隊の軍事力に守られているのだ。夢から覚めよ日本人。
編集長 柴田忠男
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