MAG2 NEWS MENU

「研修受ければ助成金300万もらえる」という甘い話の真偽のほど

最近、「助成金受給の案内を受けた」という相談が、各地の社労士事務所に寄せられているそうです。中には「研修を受ければ300万円受給できる」というおいしそうな話まであるとのことですが、真偽の程は? 今回の無料メルマガ『新米社労士ドタバタ日記 奮闘編』では、そんな疑問に会話形式でわかりやすく答えてくださっています。

キャリアアップ助成金

ここ数年、「『助成金受給しませんか?』という案内が来たんですけど京都社労士事務所さんでできませんか?」という問い合わせが増えている。いろんなコンサルタント事務所さんがFAXしたり、訪問したり、相当な勢いだ。


U社社員 「すみません、助成金ほしいんですけど…。うちでも300万円もらえるんですよね?」

新米 「(300万円? なんだそりゃ…?)え? 助成金の申請ですか? あ、はい、うちでもできますけど、少しお待ちください…(深田グループリーダー、助けてくださいよぉ。この手の電話は苦手だぁ~)」

深田GL 「お電話変わりました。どういった助成金をお考えですか?」

U社社員 「半年間、アルバイトを雇って、それから正社員にしたいんだけど、そういった助成金があるって聞いて…」

深田GL 「あ、キャリアアップ助成金の正社員転換コースですか? それなら条件に該当していれば、受給はできますね…」

U社社員 「他にもいろいろあるんでしょ?」

深田GL 「他にも…と言いましても、ありますが、どういったことをお考えですか?」

U社社員 「300万円受給できるって聞いているんだ」

深田GL 「300万円の根拠は何でしょう? もしかして、どこかからFAXが来てました?」

U社社員 「そうなんだ。1人当たり300万円もらえるって言ってたね」

深田GL 「一度、詳しくお話をお聞かせいただけませんか?」

事務所にて

U社社員 「以前に、助成金の案内をもらって、説明会に行ったんだ。案内には、1人当たり300万円受給できるって書いてあってね…」

新米 「300万円の根拠なんですが、何か研修を受けてくださいって説明会では言ってました?」

U社社員 「あ、言ってたね。研修を受けたら、助成金が出るって。それにその説明会の主催者は、研修代を払うと、研修もしてくれるって言ってたよ」

深田GL 「研修関連の助成金は、賃金補助も多少は出ますが、使った研修代の経費助成が主なんです。たとえば使った金額の30%とか。つまり、主な助成金は、研修代以上が受給できるというものではないんですよ」

U社社員 「え?」

深田GL 「必要でもない研修を有料で受けるのはナンセンスだと思いませんか?」

U社社員 「お金を使わないといけないってこと? 正直、確かに必要ない研修を受けさせても仕方ないかもなぁ…」

新米 「もともと受けさせたい研修があったなら別ですけどね」

U社社員 「ちょっと考えてみるわ…」

深田GL 「御社の業種なら、その主催者の方の研修を受けるより、ご自分の仕事にあった研修もたくさんありますから、受講されるなら、そちらをお勧めします」

U社社員 「わかったよ、一度考えてみる。ところで、アルバイトを6ヵ月雇って…の助成金は、いけるんだね?」

深田GL 「正社員転換した場合の助成金ですね。こちらは、条件に合致していれば受給できますよ。ただ、いろんな書類を整備する必要もあります」

U社社員 「うん。書類に対しては、全く何も揃ってないから一からと考えてほしいんだ」

深田GL 「従業員さんは、2名でしたっけ?」

U社社員 「はい、社長と私の2名です」

深田GL 「従業員さんとしては、お一人ですね。では、まずは、このアンケートにお答えいただけませんか? 労働保険には加入されていますね?」

U社社員 「労働保険って…?」

深田GL 「労働保険というのは、労災保険雇用保険のことです。緑色の大きな封筒が届いていませんか? ちょうど今、1年に1回、精算の時期なんです」

U社社員 「う~ん、戻ってから社長に聞いてみるわ」

深田GL 「お願いします。厚生労働省の助成金の原資は雇用保険や労災保険ですので、まず加入していることが助成金受給の前提なんですよ」

U社社員 「ふーん、そうなんですね。しっかり確認しなきゃ…」

深田GL 「アルバイトの方はこれから雇用ですか?」

U社社員 「そうなんだ。もう来週頭から来ることは決まっているんだけど…」

深田GL 「そうなんですか。時給ですね?」

U社社員 「はい」

深田GL 「何も揃っていないとおっしゃっていましたので、就業規則はないってことですね?」

U社社員 「そう、それはないね」

深田GL 「キャリアアップ助成金は、就業規則に正社員転換制度を入れる必要がありますので、就業規則の作成は必要になります」

U社社員 「ふーん、そこは作ってもらわないといけないなぁ…」

深田GL 「わかりました。作成についての打合せはまた別途いたしましょう」

U社社員 「頼みます」

深田GL 「正社員になる前となった後の労働条件もどう違うかしっかり記載しないといけません」

U社社員 「労働条件って、どこまで…?」

深田GL 「就業規則には、絶対的記載事項という内容があるんです。労働時間賃金など詳細を記載しましょうね」

U社社員 「わかりました。アルバイトの場合は、時給だけど、正社員になると、月給にしないといけないんですよね? そういうことを書くんだね?」

深田GL 「必ずしも月給にしないといけないわけではないですが、月にいくらと決める方が多いですね」

U社社員 「いくら位が良いのかなぁ…」

深田GL 「またご相談にも乗りますよ。助成金は、大きくは年度単位で変化して行きます。昨年度と変わった点として、勤続年数が3年未満であること、転換前と賃金総額が5%以上増額していることが求められます」

U社社員 「へぇ~、助成金っていろいろ変わっていくんだね。うちの場合は、これから雇用するんだから大丈夫だね。3年未満に正社員にするかどうか決めれば良いってことだな」

深田GL 「そういうことです。他にも労働三帳簿と言って『労働者名簿』『出勤簿』『賃金台帳』や『労働条件通知書』などの書類も作成したり、備えつけたりしないといけません。その辺りは、大丈夫でしょうか?」


キャリアアップ助成金

本助成金は次の7つのコースに分けられます。

  1. 有期契約労働者等の正規雇用労働者・多様な正社員等への転換等を助成する「正社員化コース」
  2. 有期契約労働者等の賃金規定等を改定した場合に助成する「賃金規定等改定コース」
  3. 有期契約労働者等に対し、労働安全衛生法上義務づけられている健康診断以外の一定の健康診断制度を導入し、適用した場合に助成する「健康診断制度コース」
  4. 有期契約労働者等に関して、正規雇用労働者と共通の職務等に応じた賃金規定等を設け、適用した場合に助成する「賃金規定等共通化コース」
  5. 有期契約労働者等に関して、正規雇用労働者と共通の諸手当に関する制度を設け、適用した場合に助成する「諸手当制度共通化コース」(新規)
  6. 労使合意に基づき社会保険の適用拡大の措置を講じ、新たに被保険者とした有期契約労働者等の基本給を増額した場合に助成する「選択的適用拡大導入時処遇改善コース」(新規)
  7. 短時間労働者の週所定労働時間を5時間以上延長し、当該労働者が新たに社会保険適用となった場合に助成する「短時間労働者労働時間延長コース」また、短時間労働者の週所定労働時間を1時間以上5時間未満延長し、当該労働者が新たに社会保険の適用となった場合も、労働者の手取り収入が減少しないように2または6と併せて実施することで一定額を助成  (厚生労働省HPより)

image by: Shutterstock.com

イケダ労務管理事務所この著者の記事一覧

この日記をお読みくだされば、社労士及び社労士事務所の固いイメージが一変するかもしれません。 新米社労士が日々の業務・社会のルール等に悩み・悪戦苦闘する様子を中心に、笑いあり、涙あり、なるほどありの社労士事務所の日常を、ノンフィクション、フィクションを交えて綴ります。 水曜日のお昼休み、くすっと笑いながら、皆でお楽しみください。

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 新米社労士ドタバタ日記 成長編 』

【著者】 イケダ労務管理事務所 【発行周期】 週刊

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け