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行政書士が断言。合格率で資格の難易度を測るのはナンセンスな理由

自身のキャリア形成のためにと、「難易度の高い資格に挑戦しよう」と思ったとき、気になるのが「合格率○%」という合格率の数字。この数字部分だけを真に受けて資格試験へのチャレンジを判断するのはナンセンスだ、と警告するのは、行政書士にして理容師という異色の経歴を持つ福井識章さん。福井さんは、自身のメルマガ『行政書士&理容師 福井識章の「あたまのキレる」資格起業のはなし』で、過去に税理士の資格取得を検討した際、独自に算出した現実的な合格率を紹介しつつ、最終的には自分自身に合った立ち位置を探すべきだとアドバイスしています。

税理士を「起業の視点」で考えるということ

このメルマガは資格を持っている方資格に興味ある方が何らかの資格を活かしてビジネスで大成功するためのヒントとして役立てていただければ嬉しく思います。

ぼく自身、これまでいろいろな資格に興味を持ちました。経済学部の学生だったので、何となく簿記3級を取得して、2級を取って、税理士の勉強をしていた時期があったり、司法書士に興味を持ったり、中小企業診断士社会保険労務士不動産鑑定士のパンフレットを読み漁ったり、FPもいいなぁ、とか。結局今は行政書士をメインの資格として活用していますが、LEC東京リーガルマインドという資格スクールで行政書士講座の講師をしていた時代に他の資格についてもいろいろご質問やご相談を受けましたので、自然と多種の資格に関心を持つようになりました。

資格業に限らず起業で成功するためは自分に適した立ち位置を見つけることが大切です。

たとえば、仮に「ビーズアクセサリーがめちゃくちゃ人気で作れば高く売れる」という状況だったとしても、ぼくのように手先の細かい仕事が苦手ですぐに「いーッ」となってしまう人はそこに向かってはいけません。

反対に、たとえば「歌で生計を立てるなんて夢みたいな話だ。成功する確率はとっても低い」ということであったとしても、自分にとって適切な立ち位置なのであれば果敢にチャレンジしてガッチリ夢を掴めばよいのです(よく妻と一緒にミュージカルを観に行きますが、歌の強さを実感します…)。

難しいのは、適切な立ち位置とは「自分が好きなことをすればよいというわけでもないし、「利益が出そうなことをすればよい」というわけでもない、ということです。本当にしっくりくる立ち位置は、意外に見つけにくいものです。

では、それを見つけるためには何が必要か。それは「情報」です。それも、「色付けされていない情報が必要です。世の中の情報には様々な色付けがされています。たとえば資格スクールのパンフレットを手に取ってみると、たいてい「この資格をとればこんなバラ色の未来が待っています」的な言葉が並んでいます。

統計データや先輩の声なども掲載して、ぼくたちをやる気にさせてくれます。受験勉強する側からすれば、それでがんばれて結果的に資格が取得できればOKなのでしょうが、色付けされている情報かもしれないということを忘れてはいけません。一点注意です。「色付けされているというのは、「ウソを書いている」とか「だますつもりで書いている」とか、そういう黒い情報とは違います

ウソを書いているわけではないけれども、情報が偏っていたり、書き手の主観が入り込みすぎていたりするものは気を付けようということです。ですから、資格スクールのパンフレットとは逆に、掲示板サイトなどで「この資格はまったく役に立たない」などといった否定的なものも、やはり色付けされている情報である可能性が高いわけで、「厳しいことを言っているから、きっとこっちの方が真実だ」などと考えるのは少々短絡に過ぎるでしょう。

さて、今月は税理士をテーマに取り上げました。税理士に興味のある人もそうでない人も、「へぇー。そういうことなんだなぁ」という気づきになればと思います。

税理士試験の真実

税理士試験の合格率マジックを見破れ

税理士試験は、5科目合格で最終合格となる試験です。その合格率は、国税庁から下記のサイトで公表されています。

● 平成29年度(第67回)税理士試験結果(国税庁)

平成29年度の科目別合格率を一部列記しますと、

簿記論   14.2%
財務諸表論 29.6%
所得税法  13.0%
法人税法  12.1% …

などとなっています。「学生など時間のある人だったら一年に複数科目を受験する、社会人など時間のない人は1年に1科目ずつ受験していけばよい。合格率は10%以上あるから社会人でも大丈夫」というのがたいてい資格スクールのパンフレットや説明会で話されることです。

ちなみに行政書士試験の合格率は10%程度で推移していますので、合格率の数字だけを見れば税理士より行政書士の方が難しいんじゃないの?」ということにもなりそうです。

もちろん、税理士と行政書士あるいは他の資格試験とを比較する場合、受験科目の内容が全然違います。税理士試験では会計や簿記、税法を勉強しますが、行政書士試験では全く範囲外です。

反対に行政書士試験では憲法や民法、行政法などを勉強しますが、税理士試験では完全に対象外です。したがって、そもそも税理士と行政書士ではどちらが難しいのかという問い自体がナンセンスかもしれません。

ただ、実際に受験をする方々は「自分はどちらの資格試験にチャレンジをしようか」を決断する際に、合格率もその有力な判断材料として考えるでしょうから、合格率について正しく理解しておくことは有用でしょう。

では、具体的に「税理士の簿記論は合格率が14.2%だった。行政書士の合格率は約10%だから、行政書士試験の方が難しい」という思考は、なぜ正しくないのか。を明らかにしましょう。

その理由は、受験資格にあります行政書士試験の受験資格は、特にありません。学歴や職歴、年齢に関係なく誰でも受験することができます。これに対して、税理士試験には割と厳しめの受験資格があります。「大学で法律学または経済学に属する科目を1科目以上履修した」こと、または「日商簿記検定1級を取得していること」など、それなりのハードルになっています(詳しくは国税庁HPを)。

※行政書士→誰でも受験できる。→合格率10%くらい
※税理士→大学で法律や経済を学んだり、日商簿記検定1級を持っていないと受験できない→合格率14.2%
となると、単純に「14.2%の方が10%よりも率が大きいから合格しやすいんだ」とはならないのではないでしょうか。これが、税理士試験の合格率マジックの1つ目です。

☆まとめ☆

税理士試験にはハードルのやや高い受験資格がある。だから、合格率から見える難易度のイメージより難しいと考えるべき。

税理士の科目ごとの合格率を改めて確認しよう

次に、今度は税理士の科目ごとの合格率をあらためて見てみましょう。簿記論14.2%…法人税法12.1%…などとなっています。

この数字から想定することは、「なるほど簿記論も法人税も同じくらい難しいんだな。何とか簿記論は合格することができた。法人税法についても同じくらい勉強をすれば合格するだろう」ということでしょう。しかし、ここにもマジックが隠されているのです。

実は税理士試験では、たいてい受験生が受験する科目の順番が同じになっています。税理士試験そのものは、別に「簿記論→財務諸表論→・・・」などと順番が決められているわけではなく、消費税法を受験したあとに簿記論を受験して、次は法人税を受けてというカタチでも大丈夫です(ぼくは、まず消費税法を受験して合格したという過去があったりします)。

ただ、勉強の順序と言いますか、簿記や財務諸表の理解の上に法人税や所得税の学習が乗っかってくる感じですので、一般的にはまず簿記論・財務諸表論を学習し、その合格の後に法人税や所得税の学習を開始するということになるようです。

とすれば、法人税や所得税を受験している人は、簿記論や財務諸表論に合格したようなツワモノであるということであり、そのツワモノ達が受験して12.1%しか合格しないというのは、どれほど難しいものであるのか、想像に難くないと思います。

ちょっと怖い数字を出してみましょうか。日商簿記検定1級には受験資格というものはなく、誰でも受験することができます。そして、日商簿記検定の合格率はだいたい10%です。そして、日商簿記検定1級に合格すれば税理士試験の受験資格を得られて、税理士試験簿記論の受験ができます。この合格率が14.2%。そして、簿記論に合格した人が次に法人税の受験をして、その合格率が12.1%。ということは、税理士試験の法人税に合格するのは、(日商簿記1級)10% × (税理士簿記論)14.2% × (税理士法人税)12.1%=0.0017182 なんと0.17%くらいの難しさだということです

1000人中2人も合格しないレベルですよ。これはあくまで数字上の議論であって、実際には社会人でも合格する人はたくさんいらっしゃるわけですから、この数字を見て直ちに絶望する必要はないでしょう。ただし、「税理士試験は14%くらい合格するんだなぁなんて考えちゃ、絶対ダメです。挑戦される方は、「自分は合格率0.17%の超絶難関試験に取り組もうとしているんだ」と覚悟を決めた方がよいでしょう。 

☆まとめ☆

税理士試験の最終合格を目指すなら、合格率0.17%の国家試験と覚悟せよ。

image by: shutterstock.com

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理容師免許も持つ行政書士。異色の肩書をもつ福井識章が「資格起業」成功の秘訣をお伝えします。資格を持っているから食べていける時代は終焉を迎えました。しかし、資格取得が「不毛なこと」になったわけではありません。あなたは資格の本当の力を理解していますか?資格を活用してビジネスで成功したい方のための熱いメルマガをお届けします。

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