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相手から「もっと詳しく聞かせてくれないか?」を引き出す商談術

交渉相手が過密スケジュールで時間がないとき、たった数分で商談を成立に向かわせることのできる驚きのプレゼンテーションテクニックがあることをご存知でしょうか? 英語力と仕事力の両方を向上させる「ノート術」を紹介しているメルマガ『金田博之のたった一冊のノートで出世する「一流のグローバル人材」への確実な道』の著者・金田博之さんは、自身がシリコンバレー企業などの商談で実践した「スピード感」のある交渉術を3段階にまとめ、その手順を解説しています。

短時間で勝負を決める! エレベーターピッチの交渉術

今週は、PCから飛び出して再び海外での話題。先月のアメリカ出張で体験したばかりの話「エレベーターピッチ」の交渉術について、お話します。

一瞬が勝負を分ける、エレベーターピッチの交渉

エレベーターピッチ」はビジネス用語として深く浸透しているプレゼンテーションのテクニックのひとつ。元々の由来は、重要な人物とエレベーターで居合わせるわずかな時間に効果的に交渉をまとめる技術を指します。

エレベーターでの移動といったら、せいぜい1、2分というところですよね。この短い時間で、端的に言いたいことを伝える。前回のアメリカ出張でも、まさにそんなシーンを体験してきました。

行き先は、シリコンバレーで知られるサンフランシスコ。大企業というより、伸び盛りのベンチャー企業が集まっています。

シリコンバレーの企業って、意思決定にスピード感があるんです。会話もフランクで、ストレート。日本人みたいに、曖昧な言い方はしない。かつ、猛烈に忙しい人ばかり。数分の商談で、数億円規模の話が動くなんてことは実際に、よくある話です。

ちなみに、余談ですがアメリカではエレベーターのないオフィスが結構多いんですよ。国土の狭い日本だとイメージが湧きづらいかもしれませんが映画に出てくるショッピングセンターのようにワンフロアのオフィスが多いんです。なので今回はエレベーターピッチというよりロビーから社長室までの数分間が勝負。

今回私が担当したある提携の話をしてきたのもまさにそんなオフィスでした。具体的な商談が進めば何十億というお金が動く話。とあるベンチャー企業のCEOと1時間ほど商談の予定が入っていました。

資料の準備も万端。初対面のアイスブレイク用の雑談のネタも、ばっちり仕込んであります。ところが、急な予定の変更でほんの数分しか、時間がもらえない事態に…普段なら、ゆっくりアイスブレイクの時間を取って相手との会話を温めたところで商談に移るのですがとても、そんな余裕はありません。

この商談が進むか、進まないか。一瞬も、ムダにできない状況。これこそ、まさにエレベーターピッチが活躍する状況です。結果から言うと、このエレベーターピッチは成功。商談は今まさに、進行中です。

そんな限られた時間の中、どうやって、相手の懐に入りこめたのか?以下、私がいつも実践しているエレベーターピッチのフレームワークを詳しく説明しますね。

実践1:明確な目的の提示

限られた時間の中で要点を伝えるわけですから、当然、話す内容を絞り込む必要があります。ですが、単に普段1時間でやっているプレゼンを数分のボリュームにまとめればよい、というわけではありません。

よくやりがちな間違いがアジェンダの説明をしてしまうこと。「今日お話したいことは3つあります。1つめは・・・」という、プレゼンでよく聞くアレのことです。これは、一切不要。時間のない相手に対してはこの時間すらも惜しまなくてはなりません。

大事なのは、 開口一番相手に興味を持ってもらえるかどうか。時間のない相手が知りたいことはあなたの話の全体像ではありません。相手にとって最もうまみのある情報を一番に提示する必要があるんです。つまり、最初に必要なのは目的(objectives)を明確に伝えること。

あなたが、なんのために来たのか。そして、今回の訪問は相手にとってメリットのある話なのか。これを瞬時に伝えない限り、忙しい相手が耳を傾けるはずがありません。

「今日は時間がないから、また今度」と言われて終わり。時間がない、というマイナスを一気にプラスに転じるような魅力的な目的を提示する必要があります。この「目的」をみなさんは、どう捉えますか。

「私」の目的?それとも、「相手」の目的?正解は両者の目的です。主語は「We」にしなきゃいけないんですね。仮にうまく話が進んでいったとしても、その商談の先にある両者の目的が一致しなかったら、どこかで衝突するんです。

そもそもは自社(自分)の目的があったうえで交渉に来ているわけですが、それを「両者の目的に変換して伝える。ここが最大のポイントです。

単に「提携の話で来ました」ではあなたの都合を押し付けているに過ぎません。相手にとって、うまみはないわけです。そこで、私の目的である「提携の先にある相手と共通の目的」を第一に伝えます。

例えば、提携によって双方に

が考えられるとします。

そこで、提携という「自分」の目的を顧客基盤の強化という「相手」の目的に置き換えて伝える。これが、相手の中で「時間を取られる面倒な話」が「自分にメリットをもたらす話に転換する瞬間です。このステップがエレベーターピッチの最大のポイントと言えます。

実践2:具体的な利益の提示

先ほどの「目的」は抽象的なゴールのようなもの。ここに、具体性を加えるステップが必要になります。端的に言うと、数字で表せる情報です。

つまり、提携を果たすことによって

こういった情報です。

聞いているうちに思わず相手の口元がニヤついてしまうようなメリットを提示する必要があります。細かい根拠は、後回し。ここでは、相手の心をつかむことだけに徹します

「明確な目的の提示」のステップで「聞いてやってもいいか」となった話が「ぜひ詳しく聞きたい」というレベルに昇華されるステップです。

実践3:ペインポイントの確認

さて、ここまでの段階で相手の興味を引き付けることに成功しました。その次に必要なのが実現にあたっての課題(pain point)を確認する作業です。

例えば、ある外国の市場に新規参入する場合。

といった問題から、いくらメリットがあっても、実現が難しい、という場合が考えられます。こういった課題を相手から引き出す必要があるわけです。

これが、エレベーターピッチの最後のステップ。ここでも重要なのはあくまで、主語を「We」とすること。相手の課題を単に聞き出すだけでなく「 私たちの課題 」として何をお互い助け合うかを話し合うステップです。

結果:エレベーターピッチから、次の段階へ

例のCEOに対して、この3つのステップ5分ほどで終えました。その結果、「もっと詳しく聞かせてくれないか」この言葉を引き出すところまで話が進み、今に至ります。

もともと、会ってもらえただけで奇跡といっていいシチュエーション。「今回は時間がないので、また今度」そうやって終わる可能性だってありました。そこから見事に挽回できたのは「エレベーターピッチ」のおかげです。

でも、このエレベーターピッチ、なんの準備もなしにいきなり成功するわけではありません。そこに至るまでにはある習慣が必要です。じゃあ、その習慣とは?そこで次回は、「いつものノートで仕上げる、エレベーターピッチの下準備」というテーマで、お話します。お楽しみに!

image by: Shutterstock.com

金田博之この著者の記事一覧

世界MBAランキング首位のINSEADエグゼクティブMBA卒業。1998年、外資系大手ソフトウェア企業のSAPに新卒入社。30歳からマネジメントを歴任、7年連続グローバル・トップタレント選出。 2014年、日本の大手製造・流通企業ミスミグループでGMとしてグローバルDX新規事業を推進後、最先端AI/チャットの外資系IT企業、ライブパーソン(LivePerson、NASDAQ上場)の代表取締役に就任。3年間で毎年300%超成長(アジア全体売上の76%)。 2020年12月、クラウド型ネットワークセキュリティのトップ企業ゼットスケーラー(Zscaler、NASDAQ上場)にて、日本を含むアジア全体を統括する代表取締役に就任。 セミナー、企業、大学等で講師経験10年以上、受講者のべ5,000名以上。日経BP、東洋経済ほかメディア掲載多数。

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