避けられない国家ライフサイクル
13年前、34歳だった私は、一冊目の本を出版しました。『ボロボロになった覇権国家』といいます。この本のメインテーマは、「アメリカ発の危機が起こって、この国は没落しますよ」でした。予想通り08年、アメリカ発「100年に一度の大不況」が起こり、アメリカは没落しました(「アメリカ一極時代」が終わり、「米中二極時代」が到来した)。
中国については、どうでしょうか? p127にこう書いています。
中国は、2008年・2010年の危機を乗り越え初めは安くてよい製品を供給する「世界の工場」として、その後は1億3,000万人の富裕層を抱える巨大市場として、2020年ぐらいまで成長を続けるでしょう。
05年時点で、
- 08~10年に危機が訪れる
- しかし中国はそれを乗り越える
- 成長は2020年まで
とあります。「成長は2020年まで」については、まだわかりませんが、それでも、予想通り成長は鈍化しつづけています。
なぜ、13年前に現状を予想できたのか? 「国家ライフサイクル理論」によってです。簡単な理論で、「国にも、ライフサイクルがある」。ざっくりわけると、前の体制からの
- 移行期(=混乱期)
- 成長期(前期と後期がある)
- 成熟期
- 衰退期
これで、13年前、「中国は、まだ成長期の前期だから、08年~10年に起こる危機を短期間で乗り切るだろう」と予想できた。
もう少し、中国の「国家ライフサイクル」を見てみましょう。中国は1949年の建国から1978年末まで「移行期」「混乱期」でした。賢いトウ小平が改革を宣言したのは、78年末。だいたい1980年から成長期に突入した。日本は朝鮮戦争のおかげで1950年から成長期に入った。つまり、中国は、日本から30年遅れているのです。
- 1960年代、日本は「安かろう悪かろう」で急成長
- 1990年代、中国は「安かろう悪かろう」で急成長
- 1970年代、日本は「世界の工場」になった
- 2000年代、中国は「世界の工場」になった
- 1980年代、「ジャパンアズナンバーワン」。日本は、世界一の経済大国になると、誰もが確信した
- 2010年代、「チャイナアズナンバーワン」。リーマン・ショックでアメリカが沈み、「中国が覇権国家になる!」と主張する人たちがたくさんいる
どうですか? ピッタリ30年遅れでしょう。もしそうであるのなら、
- 1990年、日本でバブル崩壊、暗黒の20年スタート
- 2020年、中国でバブル崩壊、暗黒の20年スタート
となるはずです。まあ、習近平は、「日本のバブル崩壊」と「ソ連崩壊」を詳しく研究させているそうなので、多少時期はずれるかもしれません。しかし、「国家のライフサイクル」は、人間の生老病死同様、「不可避なプロセス」なのです。中国がこれから「また二けた成長を始めました」とかありえません。