習近平の悲劇
習近平の根本問題はなんでしょうか? そう、彼が国家主席になった「時期」です。彼が国家主席になったのは2013年3月。しかし、共産党中央委員会総書記、中央軍事委員会主席には、2012年11月になり、この時から実権を握っていました。
ライフサイクルで見ると、彼が国家主席になったのは、成長期後期です。日本でいえば、1980年代にあたる。賃金水準は上がり、経済成長率は鈍化し、他国に企業がドンドン逃げていく。これは、「成長期後期」の典型的パターンであり、習にはどうすることもできない。
彼が国家主席になった2013年の記事を見てみましょう。産経新聞2013年8月9日付。
日本貿易振興機構(ジェトロ)が8日発表した「世界貿易投資報告」によると、今年上期(1~6月)の日本企業の対外直接投資額は、東南アジア諸国連合(ASEAN)向けが前年同期比55.4%増の102億ドル(約9,800億円)で過去最高を記録、対中国向けの2倍超に膨らんだ。
昨秋以降の日中関係の悪化や人件費の高騰を背景に、中国向け直接投資は31.1%減の49億ドルまで落ち込み、生産拠点の「脱中国」が鮮明になった。
(同上)
「昨秋以降の日中関係の悪化」とは、いうまでもなく「尖閣国有化による関係悪化」のことです。
ジェトロの現地調査では、ASEANのうち、上期の日本による対外直接投資が1位だったインドネシアは、自動車メーカーの新工場建設や拡張ラッシュに伴い、部品や素材メーカーの進出が加速している。
上期投資額で2位のベトナムは、チャイナ・プラス・ワンの有力候補で、現地の日系事務機器メーカーの生産台数が中国を上回ったという。
(同上)
これが、5年前に起こっていたことです。まさに、「国家ライフサイクルどおり」といえるでしょう。
これから中国は、「成長期から成熟期の移行にともなう混乱」にむかっていきます。日本の「バブル崩壊」に匹敵する危機が訪れるのでしょうか? それとも、もっと大きく、「体制崩壊」まで進む?
私は、「体制崩壊」まで進む可能性もあると見ています。中国共産党には、まず「中国全土を統一した」という正統性がありました。その後は、「中国共産党のおかげで、経済成長する」という正統性を確保した。しかし、経済成長が止まる2020年以降、共産党には、「独裁を正当化する理由」が何もなくなります。
繰り返しますが、習近平は、日本のバブル崩壊と、ソ連崩壊を熱心に研究させています。それで時期はずれるかもしれません。しかし、「国家ライフサイクル」は変更不可能なのです。
image by: shutterstock