苦しい言い訳。菅官房長官「日本の携帯料金は高い」の説得力ゼロ

 

菅官房長官と野田総務相、4割値下げに「温度差」━━内閣府と総務省はどこまで連携できているのか

菅官房長官の「携帯料金は4割値下げできる余地がある」発言について、総務省と一心同体なのかといえば、正直言ってかなり微妙な雰囲気が漂っている。

31日付日経電子版では「(菅官房長官による講演の)内容は事前に総務省側と擦り合わせ、料金の国際比較などのデータも内閣府がつくった」とある。

先日、総合通信基盤局長に就任した谷脇康彦氏は、2008年頃に担当課長としてモバイルビジネス研究会を仕切った経験を持つ。当時の総務相は菅氏だった。この二人がタッグを組んで、「4割値下げできる」発言につながったのは容易に想像がつく。

ただ、総務省に近い関係者は「野田総務相と菅官房長官はかなり温度差があるようだ」とささやく。

28日に行われた野田総務相会見を取材したが、発言の節々に、菅官房長官との距離感が伝わってきた。

例えば、記者から「料金だけでなく、ネットワーク整備も含めて検討せよと、菅官房長官から指示があったのか」と聞かれた野田総務相はこう答えている。

「私の方には特段そういうお話は来ていない。これからも利用者、国民にとって通信料金が他国に比べて高いという中で、少しでも安くできるような努力をしてほしいという、大きなエールをいただいたのかなというふうに理解しています」

「私の方には特段そういうお話は来ていない」「大きなエールいただいたのかなというふうに理解しています」この2つの発言から連想するに、菅官房長官と野田総務相は直接話をできてないように思える。

また、野田総務相は「官房長官がそうやっておっしゃったからといって動くのではなくて、常日頃から総務省はそれ(競争促進)について取り組んできた」とも語っている。

つまり、野田総務省の言い方は、総務省としては自分たちで競争施策に取り組んできたにも関わらず、菅官房長官の発言によって、料金値下げに着手しなくてはいけない課題が降って湧いてきてしまったような、「余計な口出しやがって」的なニュアンスに取れてしまったのだ。

野田総務相は「4割値下げできる」とは一言も言っておらず、あくまで「菅官房長官が、国内の通信費は海外に比べて高いと言っているようだ」というスタンスを崩していない。

野田総務相は、総務省の内外価格調査データの中身を知っていて、あえて「高いと言っているのは菅官房長官だけ」という言い逃れをしようとしているのではないか。

菅官房長官と野田総務相、さらに官僚と現場では、それぞれ「4割値下げ」に対する温度感はかなり違うとみて間違いないだろう。このあたりの話は引き続き、取材していきたい。

image by: shutterstock

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日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。

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