【書評】京都人と大阪人、どちらが助平か真面目に調べた結果

 

わたしにとって、本文はかなり退屈な内容だと思ったが、まえがきとあとがきに、いかにも狭量な著者らしさが現れていて好感度が高い(屈折した趣味w)。『京都ぎらい』はどういう形で配架されているのか、それを知るため著者は多くの書店をはしごした。そして洛中の店の「ほんとうは好きなくせに」というPOPに唖然とする。「私はうそつきだと決めつけられていたのである

『京都ぎらい』と京都のあいだをとりもつ苦肉の言葉だ、著者に喧嘩を売っているわけではないのだ、と当初は受け止めた筆者だったが、後にこのコピーを書いたのが大阪人らしいと聞き及び、考えを改めた。大阪人は京都人を中華意識でこりかたまっている、と考えやすい。京都側の自己批判に対し、みな逆説的な京都愛が込められているとらえる。嵯峨育ちの井上も同じ京都人だ、と。

悲しいほど嵯峨育ちにこだわる著者である。どうせ京都愛が書かせた本に決まってる、と決めつけられたのがグヤシ~、らしい。さて、この著者はひらがなを多用するのが特徴である。どうして漢字をちゃんと使わないのだ、としばしばなじられてきたという。『京都ぎらい』はよく売れているが、ひらがな過剰を非難する手紙もこれまで以上に届いた。版元もその苦情に困惑したらしい。

漢字は中国・漢の字である。「やや狭量の大和言葉びいきの私は、外来のものとして、とらえている。だから、名詞や代名詞、つまり体言としてつかうことは、いとわない。だが、形容詞や動詞、用言としてもちいることには、わだかまりを感じてしまう」のだという。問題はその考えを一貫させていない点だとも。「美しい」「感じる」を「うつくしい」「かんじる」にしきれない。妥協するのがふがいないと思う、という。あまり気にならなかったけど。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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