経営者が「すべてのお客様の声」を聞いてはいけない納得の理由

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「もうすぐ辞めます」というワインバルに偶然足を踏み入れた、無料メルマガ『飲食店経営塾』で著者の飲食店コンサルタント・中西敏弘さん。しかし、その店のスタッフの話を聞いただけで、中西さんは客が来なかった理由がわかってしまったそうです。わずか一言ふた言でわかってしまったという、ワインバル閉店の理由とは何だったのでしょうか?

「軸」がないから、迷うのだ!

先日、店の視察に行く途中、プラッとあるお店に入ってみた。業態は、ワインバル。まずまずの場所にあるのだが、あまりお客様が入っていない。一緒に行った人と飲食の話をたくさんしていたので、店のスタッフが話しかけてきた。

「11月末でこの店、閉めるんですよ!」

と彼が話す。その流れの中で、彼がこんなことを言っていた。

「最近は、若い人はワインなんか飲まないんですよ。うちの店に来ても、ハイボールかカクテル飲んで、それで、軽いつまみを頼むだけ。もう、この街じゃワインバルなんて古いんですよ!」

と、自店が売れない、閉店してしまう理由を話していた。ワインバルがすでに古いものになってしまったのかどうかは僕が分からないが、彼の言葉のなかに、この店の売れない理由が隠されていると思った。

店をやっていると、どうしても「目の前のお客様」が気になる。確かに「目の前のお客様」を大切にすることは大切だが、それより、大切なのは、「自分の店のお客様が誰か?」ということ。つまり、「ターゲットが誰なのか?」ということである。

店を作る際には、誰しも「コンセプト」というものを作るはずだ。その際に必ず「誰に来てもらいたいか?」、すなわち、ターゲットを設定するはず。でも、いざお店を開けてみると、自分たちの狙ったお客様が来ないとなると、すぐに、「目の前のお客様」を集客したくなる

しかし、その前に考えなければならないことは、「自分たちの狙ったお客様がなぜ来ないのか?」である。ファザードに問題があるのか、店内のデザインに問題があるのか。メニューに問題はないのか? これをまず見直すことが必要だろう。これは、自分たちの作ったコンセプトに「一貫性」があるのかどうかを確認するということである。

つまり、飲食店経営を行うにあたって、最も大切な事は、「自分たちの軸」をブラさないことである。逆に言えば、「目の前のお客様」に惑わされるのは、「自分たちの軸」がないからである。「軸」があれば、

・自分たちの狙っているお客様はこういった人で
・この人たちに、こんなシーンで利用してもらいたくて
・だから、うちのこの料理を楽しんでもらいたい

ということが固まっているから、そうそうブレない。

しかし、想定よりも売上が伸びなかったりすると、どうしても、「目の前のお客様」に目が行ってしまい、この人たちをもっと集客したくなる。ただ残念なことに、こういうことをやればやるほど、客足は遠のくことになる。なぜなら、「軸」がブレ、お客様から見たら、

・どういった人に使ってほしくて
・どんなシーンで利用すべきなのか
・何を売りにしているのか
・何を食べて欲しいのか

全く分からないからである。つまり、店の主張がないから、お客様に響かないのである。だから、売れないのだ!

「お客様の声を聞け」とよく言うけれど、すべてのお客様の声を聞いてはならない。聞くべきは、「自分たちの狙っているお客様」の声だけだ。これも、自店の「軸」さえ、明確になっていれば、おのずとできること。

皆さんの店の「軸」はしっかりと固まっているだろうか?

image by: Shutterstock.com

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【著者】 中西敏弘 【発行周期】 毎週2回

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