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「あのゲームまた発売延期か…」この現象はなぜ起きてしまうのか

仕事上の計画がどうしても後ろにズレ込んでしまって完了が遅れてしまうという経験、みなさん一度はありますよね。それは「計画錯誤」と呼ばれるものだそうですが、どうにか防ぐ方法はないものでしょうか? 無料メルマガ『弁護士谷原誠の【仕事の流儀】』の著者で現役弁護士の谷原さんが、その原因と防止策を同メルマガ内で紹介しています。

計画はずれ込むもの

こんにちは。

弁護士の谷原誠です。

時間管理は、毎日のルーティンの仕事においても困難が伴うものですが、ある程度長い期間をとり、新しいプロジェクトを行う場合はより難しさが増します。

壁となるのが「計画錯誤」です。計画錯誤とは、プロジェクトにおいて、かかる時間やコストを過小評価してしまうこと。ノーベル経済学賞を受賞した心理学・行動経済学者、ダニエル・カーネマンらが理論化しました。

計画錯誤に関する実験では、心理学者のロジャー・ビューラーのものが有名。ビューラーは、学生にレポート制作の課題を与え、いつまでに提出できるか、最短、最長の時間を尋ね、その答えを集計しました。

学生たちの出した期間は、平均34日。しかし、実際にかかった日数を集計してみると、なんと平均で56日でした。しかも、最短の時間で提出した人はほとんどおらず、最長の計画すら達成したのは半分以下だったのです。

計画錯誤は、私たちの回りでも様々な事例がみられます。たとえば、建物や道路など建設の遅延はよくあること。また、映画やゲーム等表現の世界でも、公開の延期発表が恒例のようになってしまう例がよくみられます。私自身、自分の過去の仕事などを考えると思い当たることが多々あります。

計画錯誤が起こってしまう原因として、計画を立てる段階では、その仕事の内容を詳しく知らないため、やらなくてはならないことを見落とすことが多いこと、またイレギュラーな出来事の発生を予測できないことがあります。

また、人は過去の失敗事例を忘れてしまうものです。過去の計画錯誤の経験は反省として残らず、仕事が順調に進んだケースだけが印象に残り、見通しが甘くなってしまうのです。

では、時間管理において、これを防ぐ方法はあるのでしょうか。すべきことを見落としているのが原因であれば、より詳細な予測に基づき、あらゆることを想定して計画すればよいとも思えますが、おそらくこれは無理。

それよりもむしろ「計画錯誤は避けられない」ことを前提に管理を行うことが必要です。具体的には、単純に期限を伸ばすことが考えられます。工程のスケジュールを組んだ後、一定の割合の日数をプラスするのです。上の実験のような計画錯誤に関する統計や、自分自身の過去の経験などから、妥当な割合を決めます。

また、全体の期間にプラスするのではなく、スケジュール上の工程それぞれに、空白の時間を入れ込んでいく、という方法もあります。工程ごとに作業が遅れているか、あるいは早まっているか、進捗具合が確認しやすい方法といえます。

もうひとつ、これは最初の方法の応用の考え方ですが、本来の期限から一定割合の日数を差し引いた日に自分の中で期限を設定し、各工程をスケジュールする方法もあります。スケジュール通り仕事を進めれば、遅れが出たとしても期限通りに終了するという考えです。

時間管理の作業では、無駄なものを捨て、すべきことを限定し、時間軸にきっちりあてはめていきます。その作業を精緻にやればやるほど、計画錯誤のリスクが高まります。だからこそ、計画錯誤の存在を意識して、とくに対策する必要があるのです。

仕事で計画錯誤がない人は、…ゴルゴ13くらいではないでしょうか。

今回は、ここまでです。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 谷原誠 【発行周期】 不定期

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