複雑なロシア、イスラエル関係
ここで、ロシア、イスラエルの関係を見てみましょう。イスラエルは、いうまでもなく、アメリカの同盟国です。一方ロシアは、イスラエルに敵対的な、イラン、シリア(アサド政権)と非常に良好な関係にある。それで、イスラエルとロシアの関係は、当然悪かった。
しかし、オバマさんの時代に、変わってきました。というのは、オバマさんの時代に、シェール革命が起こった。アメリカは、突如資源超大国になった。今では、世界一の原油、ガス大国になっている。それで、オバマさんは、「資源がたっぷりある」中東への関心を失ったのです。彼は、イスラエル最大の敵イランと和解。2015年7月には、「イラン核合意」が成立した。
さらに、アメリカは、ダラダラ戦争をし、アサド政権は生き残っている。それで、オバマ政権の末期、アメリカとイスラエルの関係は最悪になっていたのです。そして、イスラエルは、ロシアに接近しはじめました。というのも、アメリカは、中東への関心を失っている。ロシアが支援するアサドは、アメリカが支援する反アサドに勝っている。ロシアは、事実上「中東の新たな覇者」になっている。それで、イスラエルは、ロシアとの関係を良好にして、自国の安全を守らなければならない。
ところが2017年にトランプが大統領になると、また状況が変わりました。皆さんご存知のように、トランプは、「超親イスラエル」なのです。アメリカとイスラエルの関係は、再び良好になりました。しかし、両国関係は、根本的に変わっています。なぜ? 以前の関係は、
- アメリカの石油は、2016年に枯渇すると予測されていた
- だから、資源がたっぷりある中東は、アメリカにとって死活的に重要
- それで中東の同盟国、イスラエルとサウジアラビアは、とても重要
今は、
- アメリカはシェール革命で、世界一の資源大国となった
- それで、中東の戦略的重要性は減った
- しかし、トランプとネタニヤフの関係が良好なので、米イ関係も、「今は」良好である
ご理解いただけると思いますが、今の両国関係は、「国益」ではなく、トランプ個人に依存しています。つまり、とても「強固なもの」とはいえない。トランプが去れば、再びアメリカーイスラエル関係は悪化するかもしれない。それで、イスラエルは、「トランプがいるうちに、宿敵イラン、シリア(アサド)を征伐してもらおう」と考えているかもしれない。そういう動機はあるのです。