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大人社会の鏡。増加する、自己満足のため他人をいじめる子供たち

職場で「あいつは勤務態度が悪いから」と同僚や部下に暴力をふるえば、即警察沙汰です。しかしなぜ学校では、それが黙認されてしまうのでしょうか。教育の現場で頻発する「いじめ」を見つめ続けてきた無料メルマガ『いじめから子供を守ろう!ネットワーク』は今回の記事で、「いじめられる子供にも問題がある」と考えがちな世間の風潮に異議を唱えています。

「いじめられるのは自業自得」ではない

2学期も始まり、いじめ相談も増えています。中には、こんなケースもあります。

お子さんがいじめられているので、学校に相談したところ、「お宅のお子さんが以前相手の子をいじめていたのです。そのため、仲間外れにされたり、無視されたり、悪口を言われているのです。相談した保護者の方は困りきっていました。

子供たちの間では、いじめ加害者といじめ被害者が入れ替わるなど、複雑な人間関係が見られます。文部科学省の国立教育政策研究所の「いじめ追跡調査2013-2015」によれば、小学4年から中学3年までの6年間に、「いじめ被害経験がなかった」と回答した児童生徒はわずか9.6%、また、この6年間に「いじめの加害経験がまったくなかった」との回答は9.6%にすぎませんでした。つまり約9割の子供がいじめの被害を受け、また、約9割の子供がいじめ加害者になっているのが現実です。

いじめていた子がいじめ返されるというのはよくあるケースといえます。ただ、学校の先生も、どうしてよいのか分からないことも多いようです。「お前も悪いんだから」と言って、我慢させたり、あきらめさせたりすることもよくあります。

しかし、いじめをしていた子だから自業自得だと放置していたら、ずっと復讐の連鎖が続きいじめが増えていくだけになります。

大事なことは事実の確認です。いじめたり、いじめられたりというケースでは、時間を区切って事実を確認することです。事実が明確になることで、絡まってしまった糸をほぐす手がかりを掴むことができます。具体的には、今のいじめ、以前のいじめについて、いじめられた子、いじめたとされる子、見ていた子など、それぞれの子たちからの聞き取り調査、さらには、クラスへのアンケートによって、何が起きていたのかを明らかにしていきます。その上で、それぞれの時点ではだれが加害者でだれが被害者かを判断していくことです。事実が明確になったならば、双方の子供たちに理解させ納得させる必要があります。

納得させた上で、「この時はあなたが悪かったのはわかるよね。じゃあ、謝ろうね」「確かにいじめられていたんだね。でも、復讐はだめだよ。あの子にも謝らせるから、あなたもいじめていたのは間違いないから、これは謝ろうね」等々、説得して、双方に謝罪させ決着をつけることが必要でしょう。

このようなケースに限らず、「いじめ被害者に問題があればいじめられても仕方がない」という考え方が、子供たちの間で蔓延しています。「あの子は忘れ物が多い」、「あの子は汚い」、「あいつがいると体育祭で負ける」、さらには、臭い、空気が読めない、話に割り込んでくる、自慢ばかりする、うざい、病気だ、発達障害だ、などなど、いじめる子供たちは、「だから、みんなが迷惑している。直してやっているんだ」などと主張します。このように責められると、大人でも、反論できないことも少なくありません。それどころか、「おまえが強くなればいいんだと言ってくる教師さえいます。

どんなことがあってもいじめはいじめる側が悪いのです。加害者は、「自分は悪くない、叱られたくない」と主張しているのに過ぎないのです。

また、多くの子が「いじめられる子にも原因がある」という考えに賛同する背景には、どこかの時点で、似たような子に迷惑をかけられた経験があるために、「あいつなんか、いじめられればいいんだ」という小さな復讐心があるのだろうと思います。

しかし、欠点のない人間などいません。しかもその欠点は成長していくに従って改善されていくものです。加害者にも苦手なことや欠点はかならずあります。したがって、相手に欠点があることはいじめていい理由にはなりません。私たち周囲の大人たちが、「苦手なことをいじめで直してやる」という考え方は間違っていると教え、出来ないことを応援したり、間違いには注意してあげ、困っていたら助け合ったりしながら、その子の成長を見守るという考え方を身を持って、教え導いていく必要があります。

また、「今すぐ直せ」、「今から強くなれ」と言われて、次の日には欠点が直っていたなどということはありえません。人間はすぐに変わることはできません。成長するには、それなりの訓練と時間が必要なのです。くり返しますが、どんなことがあってもいじめはいじめる側が悪いのです。ここがぶれてしまうと「いじめへの対処」できません。

さらに、いじめのきっかけとしては、嫉妬によるものもかなりあります。「あいつは俺より成績がいい」、「人気があるし」、「モテる奴は嫌いだ」など、欠点ではなくその子よりも秀でているという理不尽な理由でいじめられることもよくあります。子供たちの世界に、自分が満足するためには、あるいは勝つためには、手段を選ばない的な考え方がかなり浸透しているように見えます。「自己中」、つまり自分さえ良ければ良いという考え方が強くなりすぎています。

ですから、今年から、小学校では「道徳」が教科になりましたが、先生方には、弱い子を守ってあげることお互いを思いやる心、「きずなという言葉の意味が理解できる子供を育てていただきたいと思います。

なお、いじめ防止対策推進法は4条で、「いじめの禁止」を定めています。この条項を定めるに際しては、「法律で禁止すれば解決できるものではない」等の反対意見もあったようです。暴力も、体罰も、虐待も、「悪いことだと分かるだろう」では分からない人もいるので、法律で禁止されています。いじめ禁止条項で、「いじめは悪と示すことはいじめ防止に役立つものと思います。

何があってもいじめてはいけない」。今後も、子供たちや子供をとりまく大人たち、多くの方々に伝えていきたいと思います。

何かご心配なことがありましたら、ご遠慮なく連絡ください。解決に向けて、お役に立てれば幸いです。

いじめから子供を守ろう ネットワーク
井澤一明・松井妙子

image by: Shutterstock.com

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「いじめ」と学校の「いじめ隠ぺい」から、子供たちを救うための、父母によるネットワークです。いじめの実態やいじめ発見法、いじめ撃退法、学校との交渉法、いじめ相談などを掲載します。

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【著者】 いじめから子供を守ろう!ネットワーク 【発行周期】 週刊

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