まさか私と姑が残されるなんて……。(40代後半Aさんの話)
義父を亡くし、一人暮らしになった姑。義父は多額の借金を抱え、蓄えもなかったため、夫が姑の生活を支えていました。大学生になる子どもの学費を支払いながら、決して楽な生活ではなかったけれど、愛する夫の親だからと頑張ってきました。
そんなある日、人間ドッグで夫に癌が見つかり、余命3カ月であると……。
夫は亡くなる前、何度も「俺が死んだらおふくろを頼む」と言いました。夫を安心させたくて、「大丈夫、まかせて」と約束したものの、夫亡きあと、保険金を分けてほしいと言ってくる姑。夫との約束通り、面倒をみなければなりませんか?
虎ノ門法律経済事務所の齋藤健博先生にお話しをうかがいました。
夫の親に財産分与する義務はありますか?
この場合、親が相続人に該当するかどうかが重要になります。配偶者は常に相続人となりますが、子がいる場合には、子が相続人となります。そうすると、親は法的に相続人たる地位を取得しませんから、財産を分けてもらえる地位を有しません。
生前に夫との口約束がある場合、(金銭的にも)面倒をみなければなりませんか?
遺言があるか、遺言がないにせよ、何らかの合意があるかどうかが重要となります。遺言は書面にしなければなりませんので、本件では遺言が成立している余地はないでしょう。合意があれば別ですが、これも口約束ですと難しいと思われます。
ただし、同居などがあると現在の状態が保護されます。そのため、姻族関係終了届を提出し、法律上の親子関係(姻族関係)を終了させるまでは、民法上の扶養義務は一応は生じています。
「亡くなった長男の嫁」、「夫の兄弟・姉妹」、親の面倒見る義務は法的にはどちらになりますか?
法的には、基本的に3親等内の親族がその義務を負いますが、順位を明確に定めているわけではありません。ただし、扶養者が自分の家族をもっていると、自分の家族が優先されるとの規定は存在します。
亡くなった長男の嫁は姻族関係になるので、養子縁組などをしていない限りは扶養義務が生じるものではありません。しかし、実質的に扶養していたと考えられる状態、たとえば同居している事情などがあれば別です。
こうしてみると、扶養義務は基本的には直系血族・兄弟姉妹が負うものですが、法的にどちら、とは択一的に決定できません。
しかし、亡くなった長男の嫁は「姻族関係を終了する」手続をとることができ、この場合は兄弟・姉妹に扶養義務が明確に定まります。