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次こそ大暴落。トランプは株価下落が米景気への警告と気づくのか

NYダウ急落が引き金となり発生した世界同時株安。その後はなんとか持ち直してはいるものの、さらなる下落を危惧する声は絶えません。果たしてこれ以上の暴落は起こりうるのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では著者の津田慶治さんが、「まだ本格的な暴落ではない」とし、様々な要素を分析しつつ今後の展開を占うともに、日本が進むべき方向について考察しています。

再度、米株の暴落は起きるか?

10月第2週は、世界的な株の大きな下落になったが、まだ本格的な暴落ではない。今後の見通しを見よう。

NY株調整

NY株は、10月3日に2万6,651ドルと過去最高値を付けて、10月11日に2万4,899ドルまで下落した。そして、12日の終値25,399ドルまで戻した。2,000ドル下げて、500ドル戻したことになる。

日本も10月2日に2万4,448円と6年ぶりの高値を付けたが、10月12日に2万2,323円まで下げて、終値2万2,694円まで戻した。2,100円下げて、650円戻したことになる。

この調整は、10年米国債の金利が3.25%に上昇したことで、株からの逃避とFANG株の下落で起きたのである。しかし、株価が下がり債権に資金が移動したので、3%まで金利が低下したことと、米中貿易戦争で心配した中国の対米輸出激減が起きずに、反対に前年同月比14%増となり、まだ米中貿易戦争で世界景気が悪化するかどうかわからないと、アジア株が上昇しNY株も4日ぶり反発287ドル高となり、その上にFANG株が上昇して、ボラティリティが高い状態であるが徐々に値幅も落ち着いていくことになる。

まだ、上下の動きはあるが、今後一時的に、下落の3分の1から半値まで戻す可能性もある。しかし、その後は米国の景気次第である。

流動性相場からファンダメンタルズ相場に

今までは、各中央銀行の量的緩和による資金ジャブジャブの流動性相場であったが、FRBが利上げと資産減少を行い資金回収で株式市場も流動性相場から経済実態に則したファンダメンタルズ相場に移行する時期にある。

ゼロ金利の資金を借りて投資していた投資機関が3%の金利を払って投資しても配当利回りが5%以上の株がないなら、投資資金を引き揚げて返す方が良いし、5%以上の配当を出す企業があれば、投資の方が良いという局面になっている。企業利益次第ということになる。

この局面に、トランプ大統領が、減税で企業利益を押し上げた後、企業の利益に悪影響が出る米中貿易戦争での関税引き上げを行ったことで、企業利益と金利動向に機関投資家が敏感になっている。

日本を除く世界の企業は金利ゼロに近い資金を借り規模拡大をしてきた。このため、世界の企業も金利に敏感になる。しかし、その期間、日本企業は内部留保を増やして無借金経営にして、金利ゼロでも資金を借りなかった

そして、現在、減税で米財政の赤字幅は拡大して米国債の発行を増やすことになるが、一番の買い手である中国は、貿易戦争で米国債を買うどころか徐々に売る方向である。その上にFRBも資産減少のために米国債を売っている。このため、10年米国債の金利は上昇方向になった。

金利上昇で新興国景気は

米国債が3.25%以上になると、企業経営や個人の借金に重しになり、投資ができなくなる。個人では自動車や住宅を買えないことで、景気を冷やす。企業は、この金利を負担できる投資案件があれば問題がないが、もし現在の事業でも3.25%の金利負担ができないと、倒産になる。この原因かどうかわからないが、小売り大手のシアーズも倒産したようである。

この上に米金利上昇でドル高になり、二重の重しを載せられた状態の新興国企業はドル建ての借金が多く、3%金利でドル高の借金返済ができずに倒産が増加している。このため、景気後退が鮮明になって、中国など新興国の株価は軒並み下落している。

これにより、新興国経済の下降で、穏健な政策では対応できないで、新興国の政治に、極左極右の政治家が出て、極端な政策を打ち出している。しかし、外資企業への法人税を増額すると企業は、その国を逃げるので、益々財政がひっ迫することになる。

そして、先進国でも、中間層が没落して、その中間層の不満を背景にトランプ大統領が出て、関税を上げて新興国に行った工場の奪還を目指すことになる。ドイツ企業は、工場を中国から本国にシフトさせているが、工場の無人化により、中国の労働者よりロボットの方がコストが安いためという。米国への輸出ができない中国生産のメリットがなくなってきている

ということで、新興国での生産見直しが今後出てくることになり、二重の意味で新興国は大変なことになりそうである。

中国の操作国認定で

今回の下落は、パニック的な暴落ではなく単なる調整であったようだ。しかし、債券への逃避があまり起こっていない。米国債の金利が3%以下になっていない。今回の下落でFRBは、12月に予定している利上げを見送る可能性もあり、米国の景気が維持されている限り、今後しばらくは、パニック的な暴落にはならない。

しかし、今後、10月下旬には財務省の報告書で中国を通貨操作国と認定する政策を取ると、米国ではなくアジアや日本の景気を冷やすことになる。中国の株価は暴落していて、その暴落がどこまで行くかの局面であるが、日本の株価は上昇して6年ぶりの高水準にあったが、その日本の株価も、もう一段の下落の可能性が出る。

11月には米中首脳会談が行われるようであり、そこで両首脳間で手打ちができる可能性もあると期待したいが、どうであろうか?今回の下落をトランプ大統領が、米国景気への警告と感じてくれれば良いと思っている。

米国の将来見通し

しかし、米国の将来は暗い。シリコンバレーに新しい革新的なベンチャーがでない。イノベーションの速度を上げるには、インドなどの海外の優秀な頭脳を引き入れて、加速させないといけないが、米国は、技術者の入国を制限し始めている。国内の技術者を雇用しろということのようである。

しかも、FANG以外の米国企業は高配当や自社株買いで株価を上げてきたが、内部の資金がないことで、研究開発費を日本や中国に頼り始めている。このため、ベンチャー企業の技術が流出して、AIやITでも中国に負けそうになり慌て、中国からに資金を切るようだ。このため、IOTやAI技術の発展も米国からは今後、出てこないかもしれない。

もう1つが、石油と石炭の使用を促進させて、再生可能エネルギーへの転換をしないようである。トランプ大統領の既存産業と米国民を過度に保護する米国の未来には希望がない

また、米国が中国への技術流出を問題にしているが、IT企業以外の米国企業が中国技術者に積極的に教えたことで流出した。米国企業が、中国に工場を作ったことと、その上、中国現地企業を共産党党員の中国人経営者に任せているので、そうなるに決まっている。やっと、気が付いて、工場を米国に戻すようである。

このように、米国企業は、コストを下げるために中国に工場を建て技術を流出させ、その上に資金を借りて自社株買いの無理な株価上昇をしてきたが、このようことは、量的緩和時だけできることだ。今後、企業存続という意味で危険な感じがする。金利上昇局面ではこのようなことはできなくなる。

今度、金利上昇と景気の減速が確認できた時点で、内部留保もなくて、企業の持続性に問題が出て、米国の株価は大暴落になる可能性がある。まだ、今回は暴落ではなかったが、今後、景気減速が確認できた時点で、もう一段の下げを警戒した方が良い。

日本の対応

その点、日本は人口減少であり、積極的に優秀な技術者を入れて、東京を英語でも日常生活ができる空間にして、世界のベンチャー企業に開放して、その上に自由な情報交流ができる場を作ることであるが、メルカリは新卒者の8割をインド系など外人技術者にしているというが、この方向が正しいように思う。多くの企業はその方向に行くようだ。

今後、5G通信でデータ転送速度が速まり、フィンテック、IOTやAI、ロボット、自動運転技術などの高知能化が進み、通信でセンタにデータを送り、世界的に一体化したサービスが出てくる。このビジネス獲得競争が始まる。出遅れた日本企業にもチャンスが出てくる。

日本企業は、内部留保が厚く大量の資金を持ち、米企業の存続が問題になると、安く技術を持つ米企業を買収できることになる。

さあ、どうなりますか?

image by: shutterstock

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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