北朝鮮の漁船が日本海岸に漂着するのは、スパイを浸透させるためではない。金正恩が2013年以降、「魚を獲れ」と厳命したのに、漁獲量が以前と同じような状況であったら、金正恩は現地指導で「お前らは私の言うことが分からないのか」と、幹部連中の首が飛ぶのは間違いない。
幸いなことに、燃料不足の問題は、核・ミサイル関係の部門への石油類の配分が減って、水産部門や民生部門にも回ってくるようになったので、燃料不足による漂流事態の発生などということは少なくなったが、肝心のエンジン類は旧態依然の「中国製の中古のエンジン類」である。
今は日本海はさほど荒れていないが、これからが正念場である。このニュースをこれからも追っていくが、昨年末から今年にかけての北朝鮮漁船が日本海側で起こした漂着、窃盗騒ぎなどは北朝鮮では一切報じられていないようだ。私の故郷である秋田県・由利本荘市の海岸に昨年11月23日の夜に現れた8人の漁船員(皆生存者で亡くなった人間はいなかった)の処遇・処理の問題はいまだに解明されていない。
彼ら8人は日本で拘束中に受けた日本側の待遇・対応に感謝しているはずだが、北朝鮮では反対のことを言っているのだろう。彼らが、日本で受けた待遇が忘れられず、再び、大和堆を目指しておんぼろな船に乗ってくることはないだろうが、ともかく、今は「大和堆に行ってイカを獲ってこい」の至上命令を果たすために、日本海岸の清津などの港はイカ釣り漁船であふれているはずだ。(宮塚コリア研究所代表 宮塚利雄)
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