店舗にとって、メーカーや問屋を味方につけるほど心強いことはありませんが、一朝一夕に実現することでもありません。特に中小のお店にとっては至難の業ともいえます。今回の無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』では著者の梅本泰則さんが、そんな「至難の業」を可能にする方法を紹介しています。
メーカーさんを巻き込む
経営計画書を作っておくと、いろいろなことに役立ちます。計画に対する進み具合が分かることが一番です。計画との差が分かれば、軌道修正ができます。何が実行できていて、何が足りないのかが見えるからです。また、経営に迷ったときに計画書を見返せば、基本に立ち返ることが出来ます。ずいぶんと経営方針とぶれているな、といったことが分かることもあるでしょう。
そして、計画書があれば、銀行に業績を報告するのも簡単です。普段から業績を報告しておくと、いざというときの融資にも役立ちます。報告といえば、メーカーさんや問屋さんに計画の進み具合を伝えるのも良いです。私の知っているお店に、計画書をもとに業績レポートを提出しているところがあります。主だったメーカー、問屋さんに自社の業績を伝えるのです。これは、なかなか賢い方法だと思います。
もっとも、決算書を見せるわけではありません。上半期と下半期が終わったところで、それぞれレポートを出します。レポートの内容は、その期間に行った施策と、その成果に関することがメインです。
例えば、毎月の売上の推移と計画との差をグラフにしてあります。その下に箇条書きになっているのが計画と実績との差の要因です。その次に、今後の対策が書かれています。これだけでも、メーカー、問屋さんは感心するでしょう。そんなことを報告するお店は、滅多にありません。
そのうえ、市場の変化や流れなどが分析してあります。つけられたグラフや図は、色使いもきれいで分かりやすく加工したものです。時には写真も貼り付けてあります。
このお店がこのレポートを出す目的は、メーカー、問屋さんを商売に巻き込むことだそうです。
レポートの効果
確かに、このレポートを受け取ったメーカー、問屋さんには、このお店の現状や方向性がよく分かります。レポートでは、どんな施策が当たって、どんな施策が当たらなかったかも分かるのです。
また、売上に貢献した商品群が明記されているだけでなく、それぞれの伸び率が書いてあります。野球用品30%、サッカー用品20%のように。そのうえ、商品群ごとの売り上げシェアがグラフになっています。お客様についてのグラフは、年代別や地域別のシェアです。もっとも、ブランド別の売り上げシェアは、このレポートでは公開しません。そのデータは、メーカーさんとの仕入れ交渉のために伏せておくのです。
そして、今後どんな施策を考えているかということも書かれています。すると、メーカー、問屋さんは今後の施策に役に立つ情報や提案を持ってきてくれるのです。こんなイベントをしてみませんかとか、こんな商品を扱ってはいかがでしょうとか。
それだけではありません。レポートからは市場の動向や変化も読み取ることができます。メーカー、問屋さんにとって、有益な情報です。そのかわりに、メーカー、問屋さんの戦略を詳しく教えてくれるかもしれません。そればかりか、将来についてのアドバイスをしてくれるかも。
つまり、計画書をもとにしたレポートが、メーカー、問屋さんを商売に巻き込んでくれるのです。この方法で、知り合いのお店は業績を順調に伸ばしています。おまけに、銀行からの融資も問題ありません。計画書をうまく活用した事例です。
そして、私はこの際あなたのお店には、もっと詳しいレポートをメーカー、問屋さんに届けることを提案します。
より詳しいレポートを出す
つまり、あなたのお店は、年に2回だけではなく毎月レポートを出されてはいかがでしょう。実際の売上を報告するわけではありません。このレポートでは、売場での商品動向とお客様の声が中心になります。
まずは、全体の動きをまとめると良いでしょう。カテゴリー別にお店での動きを報告します。例えば、野球用品は新製品のバットが好調で前年より10%伸びたとか、サッカー用品は買い替え需要がなくて、低調だったとかいう内容です。
行ったイベントの成果も報告します。ランニングクリニックを行った結果、50人の参加者が集まったとか、半期の処分セールを行った結果、売上が前年の3割増になったとかですね。お客様の動向の報告も必要です。新学期が始まったことで、新チームの来店が多かったとか、SNSでお店を知ったお客様が増えているとか。
このような全体のレポートは、取引のある全部のメーカー、問屋さんに渡します。ですから、おおまかな内容で良いのです。
次に、ブランドごとのレポートを作ります。例えば、
- 当ブランドの当店での動き
- 他ブランドとの動きの違い
- 当ブランドで売れている商品とその理由
- 新製品の売れ行きとお客様の評価
- 当ブランドに対するお客様からの要望
といった内容です。全ブランドについてレポートを作るのはむつかしいので上位3~4割くらいのブランドについて作ればいいでしょう。実は、メーカーさんも問屋さんも、お店での商品の動きを知りたがっています。ですから、そうしたレポートはありがたいはずです。ぜひ、作って渡してあげましょう。
いかがでしょうか。私は、こうしたレポートを出しているお店を知りません。それならば、やる価値はあると思いませんか。いずれにしても、メーカー、問屋さんを巻き込むことができれば他店より有利な商売ができることでしょう。
とはいえ、今回のレポート戦略で、すぐに成果が出ることはないと思います。大切なことは、レポートを出し続けて信頼を深めることです。
■今日のツボ■
- 経営計画書に基づいた業績レポートをメーカーさんに出す
- レポートでメーカーさんを商売に巻き込むことが出来る
- 年に数回だけでなく、毎月のレポートも出すとさらに良い
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