ビジネスシーンのみならずよく耳にする「マーケティング」という用語。ごく一般的に使われることも多いこの言葉ですが、いざ「マーケティングって何?」と聞かれたら、説明することができるでしょうか。今回の無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』では著者の梅本泰則さんが、「マーケティングのわかりやすい定義」を紹介しています。
マーケティングって何?
マーケティングの話をするのは、久しぶりです。時々、ワン・トゥー・ワン・マーケティングの具体例を紹介しています。
では、「マーケティングって何?」と聞かれたらどう答えられるでしょうか。なかなかむつかしいのではないでしょうか。なぜなら、マーケティングは経営の広い範囲を取り扱うからです。なかなか一言で説明することはできません。そんなこともあってか、マーケティングという言葉は日本語に訳されていません。
そして、書店に行くとその棚にはマーケティング関連の本がぎっしり。私も、これまで何十冊とマーケティング本を読みましたが、マーケティングの全体像がよく分かりません。マーケティングには、やたら種類が多いのです。私の読んだ本だけでも、
- マスマーケティング
- パーソナルマーケティング
- ダイレクトマーケティング
- マキシマーケティング
- ゲリラマーケティング
- エモーショナルマーケティング
- パーミッションマーケティング
- リレーションマーケティング
- ワン・トゥー・ワン・マーケティング
- WEBマーケティング
というタイトルがついています。何だか、それぞれの著者が勝手につけているようです。それだけ、さまざまなとらえ方や方法があるということでしょう。
しかも、マーケティングの考え方は、年々変化していますからなおさら厄介です。例えば、かつては主流だったマスマーケティングに代わって今は、ミクロマーケティングが席巻しています。この先も、時代の流れに応じて新しいマーケティングが生まれることでしょう。
とはいえ、これで「マーケティングとは何か」という問いには、まだ答えられてはいません。そこで、マーケティングの定義を探してみました。
マーケティングの定義
いくつか見つかったのでご紹介します。まずはマーケティングの本場アメリカでの定義です。アメリカマーケティング協会が次のように述べています。
マーケティングとは、顧客、依頼人、パートナー、社会全体にとって価値のある提供物を創造・伝達・配達・交換するための活動であり、一連の制度、そしてプロセスである。
何だかごちゃごちゃしていて、よく分かりません。定義がむつかし過ぎます。アメリカでは、そんなことを考えながらマーケティングをしているのでしょうか。次に、日本マーケティング協会の定義です。
マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である。
まあ、アメリカの定義と似たり寄ったりですね。これも、もう一つよく分かりません。そこで、マーケティングの大家、フィリップ・コトラー教授の登場です。コトラー教授は、
マーケティングとは、製品と価値を生み出して他者と交換することによって、個人や団体が必要なものや欲しいものを手に入れるために利用する社会上・経営上のプロセス。
と言っています。少しは分かりやすくなりましたが、それでも、まだまだという感じがします。とどめは、あのドラッカー先生です。
マーケティングの目的は販売を不要にすること。
と言われました。うわっ! ここまで簡単に言い切られると大変です。何をどうすればいいのでしょう。定義が簡単過ぎて分かりません。あれこれ探した末に、私がいつも使っている定義を思い出しました。
分かりやすい定義
それは、
マーケティングとは、誰に、何を、どうやって提供するかを決めて実行することである。
というものです。これは、いろいろな人が同じ表現をしていますがもともとは経済学者のデレク・エイベル教授が唱えた三次元事業定義モデルに由来しています。私には、よく腑に落ちる定義です。そこで、私のセミナーなどでは、いつもこの定義をもとにお話をしています。
とはいえ、この定義をもってしても、「マーケティングとはこれだ!」という表現だとは言い切れません。そこで、もう少し突っ込んだ分かりやすい定義がありますのでご紹介します。それは、私の手元にある文庫本『マーケティングの基本がわかる本』(木幡健一 著/PHP研究所)にある定義です。そこには
自社のビジョン、目標を達成するために多くの情報の中から勝ち残っていくために必要なツボを見つけ出し、戦略として組み立て実行していくプロセス。
とあります。分かりやすいではありませんか。つまり、より良いマーケティングを行うには、「多くの情報の中から勝ち残るツボを見つける」ことだとあります。社会や市場、業界の変化・動向を知る必要性のことです。自社や自店の情報も含まれます。そして、競争に勝つためのチャンスや強みを見つけることだというのです。その上で、商品戦略や販売戦略など必要な戦略を考え実行していくことがマーケティングだと表現されています。
しかも、その目的は自社のビジョンや目標を達成することだと。実に分かりやすいとは思いませんか。まさに、経営戦略を立てるときの過程と同じです。その過程に「実行していく」ことが加わっています。そうです。
マーケティングとは、いわば経営戦略を組み立て実行していくことに他なりません。それも、周りの環境の変化に柔軟に対応しながら。
■今日のツボ■
- マーケティングの定義はむつかしい
- マーケティングは時代とともに変化していく
- その目的は自社のビジョンや目標を達成することである
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