嶌信彦が読み解く。ゴーン逮捕でこじれるフランスと日本の関係

 

経営危機に見舞われていた日産自動車をわずか1年で回復させ、ルノーとの協業や三菱自動車との連携をなし得たカルロス・ゴーン容疑者の逮捕劇に、世界が揺れています。殊にフランス世論は、日本の司法に不信感を持つまでに至っているとの報道も。今回の無料メルマガ『ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」』では著者の嶌さんが、この事件の概要と今後について記しています。

こじれそうなゴーン解任 フランス側は納得せず?

ゴーン“ショック”がまださめやらない。名門・日産自動車の経営危機をわずか1年でV字回復させたその経営手腕に多くの日本人が驚き、ぬるま湯に浸かっていた日本人経営者たちを覚醒させた。ゴーン革命、カリスマ経営などと呼ばれ、ゴーンの唱えた“コミットメント(必達目標)”経営の言葉はブームにもなった。

ゴーンが日産の再建のため日本に赴任したのは1999年。その直後に早速「日産リバイバルプラン」を発表し、5工場の閉鎖や2万人以上の人員削減、系列にこだわらない調達先の改革、関連会社の思い切った整理──などを次々と実行し、改革をためらっていた日本企業にも大きな刺激を与えた。またゴーンの出身企業だった仏・ルノーとの協業や三菱自動車との連携による経営の一体化推進などによってトヨタ自動車と肩を並べるほどまでになったといわれた時期もあった。

しかし、19年間の独裁的経営は日産にひずみと緩みをもたらし、チェックする人材も機能も無くしてしまっていた。ゴーン経営から数年経つと日産幹部の中から「統合の利益は少なくルノーに日産の技術などを持っていかれるだけではないか」と不信の声が聞かれたりした。しかしカリスマ経営者に直言する人はいなかったのである。

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