安倍首相最大の外交成果「インド太平洋構想」の甚だしい時代錯誤

 

東シナ海および南シナ海で継続中の紛争は、国家の戦略的地平を拡大することを以て日本外交の最優先課題としなければならないことを意味する。日本は成熟した海洋民主国家であり、その親密なパートナーの国々もこの事実を反映すべきである。私が描く戦略は、オーストラリア、インド、日本、米国ハワイ州によって、インド洋地域から西太平洋に広がる海洋権益を保護するひし形(ダイヤモンド)を形成することにある。私はこのセキュリティーダイヤモンド(ひし形安全保障)に、出来る限り最大の力を注ぐつもりだ。

 

対抗勢力の民主党は、私が2007年に敷いた方針を継続した点で評価に値する。つまり、彼らはオーストラリアやインドとの絆を強化しようと努力してきた。

 

その2国のうち、(世界貿易量の40%が通過する)マラッカ海峡の西端にアンダマン・ニコバル諸島を擁し、東アジアでも多くの人口を抱えるインドは、より重点を置くに値する。日本はインドとの定期的な2国間軍事対話に従事しており、アメリカを含めた公式な三者協議にも着手した。製造業に必要不可欠なレアアースの供給を中国が外交的な武器として使うことを選んで以後、インド政府は日本との間にレアアース供給の合意を結ぶ上で精通した手腕を示した。

 

私はアジアの安全保障を強化するため、イギリスやフランスにもまた舞台にカムバックするよう招待したい。海洋上の民主主義のためには、日本の世界における役割は、英仏の新たなプレゼンスとともにあるほうがより賢明である。英国は今でもマレーシア、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランドとの5カ国防衛協定に価値を見いだしている。私は日本をこのグループに参加させ、毎年そのメンバーと会談し、小規模な軍事演習にも加わらせたい。一方、タヒチのフランス太平洋海軍は極めて少ない予算で動いているが、いずれ重要性を大いに増してくるであろう。

 

とはいえ、日本にとって米国との同盟再構築以上に重要なことはない。米国のアジア太平洋地域における戦略的再編期にあっても、日本が米国を必要とするのと同じぐらいに、米国もまた日本を必要としているのである。2011年に発生した日本の地震、津波、原子力災害後、ただちに行なわれた米軍の類例を見ないほど大規模な平時の人道支援作戦は、60年かけて培われた日米同盟が本物であることの力強い証拠である。

 

私は、個人的には、日本の最大の隣国たる中国との関係が多くの日本国民の幸福にとって必要不可欠だと認めている。しかし、日中関係を向上させるために、日本はまず太平洋のもう一方の側との絆をしっかりと固めなければならない。なぜなら最終的には、日本外交は民主主義、法の支配、人権尊重に根ざしていなければならないからである。これらの普遍的な価値は戦後の日本外交を導いてきた。2013年以降、アジア太平洋地域における将来の繁栄もまた、それらの価値の上にあるべきだと私は確信している。

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