最近、日本では映画『ボヘミアン・ラプソディ』のヒットもありエイズへの関心が高まっています。そして、アメリカでも改めてHIV、エイズに関するお話が人々の心を動かしていると伝えてくれるのは、『メルマガ「ニューヨークの遊び方」』の著者でNYに住むりばてぃさん。あるHIV患者とボランティアとの長い間の交流についてのお話です。
誰かのために14年間ずっと
ホリデー・シーズンは、「ホリデー・スピリット」と言うように、心温まる話や、誰かのためにという想いを見聞きするのが増える気がする。
先日もニューヨークの地元ニュースチャンネルのNY1を見ていたら、「Long-Term HIV Survivors Get by With a Little Help From Friends」…という記事をみかけた。長期にわたってHIVを患ってるシニア男性が友達の定期的な訪問でするちょっとした会話にとても助けられているという話だった。
せっかくなので、今回はそのお話をしようと思う。
HIV患者でシニア男性のジャックさんは、14年前に幾度もの脳卒中を発症してから歩行と会話が困難になった。ハンディキャップを持つ障がい者として週にたったの4時間の訪問支援を受けながら生活している。
1985年にHIVを患ってから親しかった友人や家族は彼を避け連絡することがなくなった。今でこそ、HIVやAIDS患者への理解や治療はかなり進んだが、1980年~90年代は今のようではなかった。
日本でも、「エイズは空気感染しません」とか、「エイズだからといって差別はやめよう」など呼びかける広告やテレビCMを覚えているという方もいるだろう。それだけ間違った認識やそれによって生じる差別が多かった時代だ。
今では(それでもまだまだ解決はしていないが)昔ほどの差別は減ってきたが、ジャックさんにはもう友達がいない。彼から離れず親しかった友達は早くにHIVで亡くなってしまったから。
実は、現在、ニューヨーク市内のHIV患者のうち6割弱が50歳以上。ジャックさんもその1人で、ジャックさんのように孤独な生活をしている方はけっこう多いそうだ。
ジャックさんのような孤独な生活を送っている方の悩みを緩和し少しでも楽しく生活してもらおうと始まったのが、NPO団体GMHC(元Gay Men’s Health Crisis)が提供するBuddy Programというボランティア。Buddyは友達という意味だが相棒とか、仲間という意味が強い英単語。ドラマ「相棒」の右京さんと鏑木さんのような感じはまさにBuddyにぴったりなイメージかなと思う。
ジャックさんのところには週1でジョンさんという男性がBuddy Programとして訪問し会話を楽しんでいる。すごいのは、これを14年間ずっと続けていること。しかも、途中の数年間はプログラムのための資金が不足し、一旦中止となった。その間も、だ。なかなかできることじゃない。
このニュースは、12月1日が、「世界エイズデー」だったこともあって放送されたようだけど、ホリデー・スピリットも重なりなんだかジーンときてしまった。世の中にはいろんな誰かのために…という想いがあるってことなんだろう。
ご参考:
●Long-Term HIV Survivors Get by With a Little Help From Friends
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