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開戦確実か。ファーウェイCFO逮捕で引かれた世界大戦の引き金

世界市場に挑み続け日本の代表的企業となったソフトバンクグループですが、その柔軟経営が仇となり、ファーウェイ副社長逮捕という米中ハイテク戦争の火の粉をかぶる状況に陥っています。これから全世界は景気後退へ向かうのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では著者の津田慶治さんが、「リスク・プレミアム」に動き出した金融市場の動向、中東情勢、石油取引の基軸通貨争奪戦など様々なリスクを解説するとともに、今後の世界の動きを占っています。

米中ハイテク戦争に拡大

米中貿易戦争は一時休戦と思いきや、ファーウェイの副社長を逮捕して、本格的な米中ハイテク戦争に突入した。ファーウェイのルータを使用するソフトバンク携帯会社は全ルーターの入れ替えが必要になる。今後を検討しよう。

NY株価

NYダウは、11月23日2万4,268ドルから米中貿易摩擦が一時休戦との市場予想により、12月3日2万5,980ドルまで上昇したが、「逆イールドやファーウェイ副社長逮捕原油急落などのニュースで、一気に下げている。12月7日2万4,388ドルと下げて終わっている。FRBは12月の利上げを行うと見るが、次の利上げは当分できないのではないかという観測も出ている。やっても来年は1回であろうと。

日経平均も日経平均は11月21日2万1,243円から順調に12月3日2万2,689円まで上昇後、一転して値下がりして12月6日2万1,307円になり、12月7日2万1,678円まで戻したが、レンジ相場になっている

弱気相場入りとコメントする評論家が多くなってきた。大きなニュースで暴落するが、下がると買う人がいるので、当分、株価は徐々に切り下がってくると思う。まだ、景気後退の指標が出ているわけではなく、リスク・プレミアムのために株価が安いようである。しかし、株価が下がると逆資産効果で、確実に景気は下がってくる

このため、日銀は今後もETF買入を続けるとしているので、下値も切り下がらない。しかし、上値になると空売りが出てくる。

米2年国債と米5年国債金利の「逆イールド」が発生したが、意図的に仕掛けたファンドがあったようである。「逆イールドが発生した後1年から2年後で景気後退になる可能性があるが現時点ではない。このため、悲観しすぎと市場は上昇した。しかし、その後、ファーウェイ副社長逮捕で、市場には米中貿易戦争が本格的なハイテク戦争に拡大することと、原油急落の背景に世界経済の減速があるとして株価が暴落した。

FRBは、株価の暴落とインフレという2つの要因を見て、今後の利上げを考える必要になっている。利上げ、据え置きのどちらにしても株価は下がる方向であり、上がる要素はない

ネットフレックス株は、ピークから半値まで下落して、FANG株もさえない。アップルは米中ハイテク戦争に巻き込まれると株価も下がり、時価総額はマイクロソフトに抜かれている。

ハイテク戦争

米国政府機関でのZTEファーウェイ製品の使用を禁じ、ファーウェイ製品を使用する企業との取引もしないとなった。この米国の使用禁止を英国豪州ニュジーランド政府も行うとした。日本政府も政府機関でのZTE、ファーウェイ製品の使用を禁じた。しかし、ドイツは禁止しない。独中同盟ができつつある。

中国も今後、アップルやシスコなどの米国製品の使用が禁止になる。相互主義を取る中国はやられたらやり返す。米国企業の幹部を逮捕する危険があると、訪中を控える米企業も多い。

そして、このファーウェイのルーターを全面的に使用しているのがソフトバンクであり、今後、ソフトバンクが米国で事業を継続したいなら、ルーターをシスコなどの中国以外の製品に置き換える必要になる。5G以外に既存ネットへの投資も必要になる。もしくは、米国の事業をすべてやめることである。このため、米国の携帯会社の経営から退いたのかもしれない。

この情報を事前に知って、孫さんは儲けを確定して逃げるために、ソフトバンク携帯の株を上場するような気がする。その意味では、すごい先見性があるが、残念ながら米中のハイテク戦争の方が先に来てしまった

米中経済戦争は、貿易関税戦争から拡大してハイテク戦争になり、米中の壁を厚くして、昔の米ソ冷戦と同じようになる危険性が出てきた。経済の断絶になる危険性で、世界経済の大幅な縮小が確実になる。

トランプ大統領の戦略を明確化しないで「あいまい戦術」で国家財政を破綻しないようにする試みが、意図とは違い、米国の対中タカ派を元気づけて、対中の本格的な対決にしてしまった。事実、トランプ大統領は事前にファーウェイ副社長逮捕を知らされていないという。そして、今まで鳴りを潜めていたCIAが元気である。

思いもよらない世界に米国の対中タカ派は連れていく可能性が高い。米中の本格的な経済・技術戦争になれば、ココムが復活して、日本は米国陣営につくしかないので、貿易の半分以上を止めることになる。日本も一時的に大不況になる。勿論、米国も不況になり財政破綻させないためには、ハイインフレにするしかない。

戦争の時代へ

米中ハイテク戦争で、経済問題だけであれば、世界の大不況で済むが、本当の戦争に突入する可能性も出てきた。

中東では、ヒズボラは前回述べたように防空システムの完備で、戦争に勝利できると見込み、イスラエルが侵攻時に使用するレバノンへの攻撃用トンネル封鎖して、かつ、イスラエルへの攻撃準備をし始めているし、イランは、原油の輸出ができなくなったら、ホルムズ海峡を封鎖すると脅している。米国は180日の猶予を9ケ国にしているが、その後は輸入禁止である。

イランの脅しに対して、米国はアラビア海に空母を送った。ファーウェイ副社長逮捕の理由もイランとの取引での不正行為であるから、イランが絡んでいる。イラン国内にはS-300防空システムが配備されているので、米軍の戦闘機は危険な飛行になる。米空軍の威力が大きく損なわれている。シリアでのF-35の撃墜は、イランとヒズボラにイスラエル攻撃にゴーサインを出したようなものである。

一方、イスラエルでは、ネタニエフ首相が起訴されるようであり、タカ派のネタニエフ首相よりタカ派の人物が首相になる可能性が出てきた。

ロシアは、キエフにあるロシア大使館警護のために、ロシア軍を派遣するとしている。ウクライナのポロシェンコ大統領は、ロシアとの平和条約を破棄するとしているので、ここでも戦争の危険が出ている。

ロシアが中東を狙っている理由

サウジは米国からロシアに乗り換えたようである。防空システムをロシアのS-400導入に確定したようである。このため、米国は慌てて、記者暗殺を不問にして、米国製兵器の購入を要求しているが、遅かった。

なぜ、ロシアが中東に出ていくのかという疑問が出てくる。プーチン大統領は、常々ルーブルを基軸通貨の1つにすると宣言している。しかし、ロシアのGDPは、世界11位と韓国と同程度の経済規模で小さい。このため、普通に考えると間違っても基軸通貨の1つにはなれない。

ロシアは、国内の石油・ガス資源を欧州や中国、日本に送るパイプラインが張り巡らされている。それと、軍事力がすごいので、その利用で、基軸通貨を獲得することを目指している。このため、まず、シリアを助けたのである。

中東の石油取引をルーブルで行えば、基軸通貨になり、パイプラインがユーラシア大陸をすべてカバーしているので、米国など米国大陸以外には、どこにでも安価に石油と天然ガスを運べる。このため、米国に代わって中東の石油を支配したいのである。ロシア経由の方がタンカーより輸送コスト安いので、欧州はロシア産か経由の天然ガスの輸入が多い。

このため、サウジとの協調が必要である。イランともよい関係である。中東から米軍を追い出す方向で活躍して、中東の石油の仕切りをロシアが行いたいのである。

トルクメニスタンの天然ガスは、今までは全量中国に送っていたが、ロシアにも送る契約ができた。中国の価格が安くて、ロシアの価格が高いことによる。ロシアは、欧州や日本という顧客がいるので、少し高くても買えるのである。その点、中国はロシアに依存していない。自分でパイプラインを引いて、なるべく安く買い付けている。

というように、ルーブルが石油取引に必要になる時代が来るかもしれない。その時は、ドル基軸通貨の終わりで世界的な混乱が起きることになる。ユーロとルーブル、人民元が次の基軸通貨ということになる可能性もある。

日米両国の財政破綻の防止は

日本も米国も長年の放漫財政で、その上景気後退局面では、国民が無傷では済まされない。経常収支が赤字である米国は、財政破綻させないために、ハイインフレを容認するしかない。米国は壁を作り輸入関税を高くして物不足にし、ハイインフレにする。同時にドルも半分程度に下げる。国外の投資家が米国債を持っているので、そうするしかない。

このため、日本とのFTA交渉でも為替の上限を決めたいというが、これは幅にすることである。1ドルを105円プラス・マイナス5円程度にして、ドル安が起きた時、同時に円安も起こるようにしてしまえば日本もハイインフレになる。

厳密な為替管理を日米で行えば、今のままでは財政破綻になってしまうのが、お互いに助け合ってハイインフレにする。そして、ハイパーインフレにはしないことである。ハイパーインフレでは国民が生活できなくなる。

ハイインフレであれば、経常収支が黒字であれば、コストアップインフレに追従して、賃金も上がり、企業価値も上がり、株価も上がり、1年遅れて年金も上昇するので、問題がハイパーインフレに比べて少ない。一番減るのは国民の金融資産と、それと同時に累積国債の価値である。できるかどうかはわからないが、インフレを関税率と為替の両方で管理することである。というより、するしかない。統制経済化は、仕方がないことである。

もうこれしか、景気後退局面では、放漫財政を長年放置してきた両国が財政破綻を防止する方法はない。

それと、日本は日銀にある国債を永久国債にするという手があるが、ハイインフレと同時にすると、現在の累積国債の価値を4分の1にできる。世界的混乱のどさくさに紛れて、日米ともに行うことである。連携プレーにすると、日本政府の意図を国民から隠せることになる。よって、国民にも説明可能である。これしかない。

フランスでも財政破綻しないように増税すると、国民が不満で暴れている。イタリアでは赤字予算を執行するかどうかで与党内が分裂している。景気後退になると、この混乱が世界に波及することは、確実である。

80~100年程度に1回程度の世界混乱とハイインフレは、国民の満足を支える必要がある民主国家として仕方がないのかもしれない。

さあ、どうなりますか?

image by: viewimage / Shutterstock.com

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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