MAG2 NEWS MENU

中国ファーストぶりに米国激怒、「中華思想」で崖っぷちの習近平

米中貿易戦争の勃発をはじめ、大きな動きを見せた2018年の世界情勢。日本もそのうねりに巻き込まれた1年となりました。台湾出身の評論家・黄文雄さんが自身のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』で、激動の2018年を総括しています。

※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2018年12月18日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

世界の分断が進む中で中国の独善が明らかになった2018年

今年も早くも12月半ばとなりました。皆さんも年末のいろいろなご用事に忙殺されていらっしゃる方も多いでしょう。今回は、少し早いのですが1年の総括第一弾ということで、私がこの1年を振り返って、今年はどんな1年だと感じたのか、そして、それを象徴するような出来事はどんなことだったのかを挙げてみたいと思います。

まずは、やはりアメリカのトランプ政権から始まった自国ファースト的な世界の潮流です。トランプ政権になってからオバマ路線とは大きく違う政策を次々と打ち出し、結果的に米中貿易戦争が起こり、華為技術ファーウェイの孟晩舟副会長兼最高財務責任者CFOが逮捕されることとなりました。

アメリカ国内の大学に併設されている孔子学院も次々と閉鎖が決まっています。諸外国に存在する孔子学院は、表向きは中国語学校ですが、その実は中国政府のプロパガンダ機関として知られています。

もちろん、中国はこうしたアメリカの態度に対して猛烈に抗議しています。華為技術の孟晩舟逮捕のこともそうですが、華為技術製品を排除する動きを見せていることにも怒り心頭です。その報復としてカナダ人二人を中国国内で難癖をつけて拘束し、人質合戦になっています。

トランプ政権の功罪は今後検証されるべきではありますが、中国のスパイ活動を公に批判し華為技術と中国政府の関係にメスを入れることができたのはトランプ政権ならではの動きではないかとも思います。

台湾もトランプ旋風の後押しを受けて、独自路線をぐいぐいと進んだ年でした。先だっての選挙では民進党は大敗したとはいえ、蔡英文政権が舵取りをしてからというもの、中国とは一線を画した存在として国際的に活動してきました。

中国が、台湾と国交のある国に資金援助を申し出て台湾と断交させたり、スポーツの国際大会を台湾で開催できないようにしたりと、様々な手段で妨害してくるのは、裏を返せば台湾という存在が世界的に認められつつあるからです。

11月末の統一地方選挙については、今回のメルマガで総括していますが、民進党が大敗したといっても、大事なのはこれからです。台湾は、これからもその歩みを止めることなく前進あるのみです。

しかし、自国ファーストがあまりに広がると、自分ファーストという思考が蔓延することにもなります。それは、公共心や道徳心とは真逆のものであり、そうした社会にはギスギスした空気が流れ、些細なことで争いが起こり、暴力や犯罪が蔓延する社会となります。

もともと中華思想こそ究極の自国ファーストであり、国家を背景に国有企業が過剰生産を繰り返し、世界市場でダンピングを行うという、非常に不公正な競争をしてきたからこそ、アメリカの怒りを買うことになりました。中国への貿易戦争は、トランプ大統領が勝手に仕掛けたのではなく、アメリカ議会も中国に対して非常に厳しい姿勢で臨んでいます。

今年の1月には、成田空港で悪天候のためフライトが欠航になったことに怒った中国人観光客が、中国国歌を歌いながら大暴れするという事件が発生しました。日本人には理解のできない行動に、日本メディアも大々的に報じましたが、中国でもあまりに幼稚な行動に、中国政府が苦言を呈するほどでした。

その中国自身、途上国への中国式支援が「借金漬け」による新たな植民地政策だと批判され、警戒されるようになった1年でもありました。

すでに、中国の支援によって建設されたスリランカのハンバントタ港は、中国への借金が返済できなくなり、経営権を中国企業に99年間譲渡せざるをえなくなりましたが、こうした事実を目の当たりにして、各国は中国との間で結んだ経済協力やインフラ建設を見直すようになりました。

中国の盟友であり、中国の一帯一路計画にとって重要な位置にあるパキスタンですら、中国が提示するインフラ建設の膨大なコストと融資条件に尻込みし、計画を再考するようになっています。このように、中国のやり方に対して、とくにアジア諸国は反発が強まっており、アメリカの対中姿勢と歩調を合わせる国も出てきています。

焦点:「借金の罠」恐れるパキスタン、中国一帯一路計画を再考

もちろん身勝手さでは小中華の韓国も負けていません。今年、韓国では財閥のスキャンダルが相次ぎました。「ナッツ姫」と「水かけ姫」の姉妹、その姉妹の母「暴言女王」と娘の「ミニナッツ姫」。韓国では特に、持てる者と持たざる者の差が激しくあります。持てる者たちのスキャンダルは、持たざる者たちにとっては痛快かもしれません。それにしても、この一連のスキャンダルで改めて、持てる者たちの傲慢さを目の当たりにしました。

日本との関連でいえば、日韓慰安婦合意をもとに設立された慰安婦財団を一方的に解散し、さらに徴用工問題で韓国最高裁が日本企業の賠償責任を認める判決を出し、国家間の合意や約束をことごとく破ってきた1年でもありました。

加えて、韓国で行われた国際観艦式では、日本の海上自衛隊への旭日旗掲揚の自粛を求めるという、国際的に非常識な要求をしてきました。言うまでもありませんが、韓国では旭日旗が「戦犯旗」だとされて、日本の朝鮮侵略のシンボルだとされているからです。その結果、日本は国際観艦式の不参加を決めましたが、その一方で、韓国海軍は、韓国人が抗日英雄として崇める李舜臣を象徴する旗を掲揚するという、非礼に非礼を重ねる行為を示したのでした。

国際観艦式で韓国海軍が抗日旗を掲揚 海自OB「政府の命令か」

このメルマガでも何回も述べていますが、「旭日旗=戦犯旗」という韓国側の主張は以前からのものではなく、2011年のサッカーアジア杯の日韓戦において、韓国人選手が日本人を馬鹿にするような「猿のマネ」をしたところ、それが大問題となり、韓国人選手が苦し紛れに「会場に旭日旗が掲げられていたためカッとなってやった」などと発言したことが発端でした。

結局、サッカー会場に旭日旗が掲げられた事実はなく、韓国人選手の嘘だったことが判明したのですが、なぜか韓国ではこれ以来、旭日旗に対して異様な反感を示すようになったのです。

しかも、日本に対してのみならず、海外でも旭日旗に近いデザインに対して、いちいち抗議やイチャモンをつけるという、信じられない行為を繰り返しています。つい先日も、ロサンゼルスのある地区の公立学校の体育館に描かれた絵が旭日旗を想起させるということで、韓国系の地元団体が抗議し、絵が消される寸前のところまでいきました。。

旭日旗を想起すると言われていた米学校の壁画 批判受け撤去を保留

韓国系の人々が問題視する絵は、単に人物の横顔から放射状に光が伸びていく図案ですが、これを旭日旗と結びつけて抗議していたのです。しかし、さすがに作者やロサンゼルスの人々からも疑問の声が噴出、「表現の自由を犯す」との批判が相次ぎ、絵の消去はペンディングとなりました。

もしも光が放射状に伸びる図案を韓国人の求めに応じて消さなくてはならないなら、今後、すべてのデザインにおいて、同様の図案は使用不可となってしまいます。韓国人の嘘から始まった利己的なイチャモンに対して、いちいち真面目に対応する必要があるのかという疑問が出始めているわけです。

利己的といえば、先日、香港でビル最上階から札束をまき散らした24歳の男性が、秩序を乱したという理由で逮捕されました。この男性は、貧しい人たちに何かしたかったと、札束をばらまいた理由を述べたそうですが、その様子をネットで中継したり、予告したりという行動から見ると、ただ話題づくりがしたかったのか、あるいは注目を浴びたかったのか、どちらにしてもその理由は利己的なものとしか思えません。

屋上から大量紙幣“秩序乱す”男逮捕 香港

世界各地で様々なデモもありました。今年は「me too運動が世界的潮流となりました。イギリスはEU離脱でもめています。フランスでは最近燃料増税に対する大規模なデモがあり、パリの中心部、凱旋門付近で大規模な暴動がありました。

ハンガリーでは、時間外労働を大幅に引き上げ、残業手当の支払いを最大3年延長できるという法案が通り、これに反対する人々によって大規模なデモが行われました。これは内容的にあまりにひどいことから「奴隷法」と言われているそうですが、この法案を可決させた政府の言い分としては、人員不足に苦しむ雇用主に必要な法改正で、長時間勤務を希望する労働者にも恩恵をもたらすということです。

ハンガリー、「奴隷法」可決で超党派が大規模デモ 参加者1万5000人超

日本人にとってはデモはあまり身近なことではないかもしれません。東京では、小規模なデモが結構頻繁に行われていますが、道行く人は我関せず状態です。地方にいけばデモの数は少なく、デモに参加するということもほとんどないでしょう。しかし、日本も多くの問題を抱えています。中国や韓国など外交問題も重要です。世界は混沌としています。

富の偏りが進み、地球規模では貧しい途上国と豊な先進国という構図が、それぞれの国内では持てる者と持たざる者という構図がより鮮明になってきています。地球規模での視点が何よりも必要です。

イギリスのEU離脱、アメリカのトランプ大統領の登場だけでなく、ロシア帝国の復活、中国の夢など、自国中心の考えは確実にオバマ時代の理想とは違う世界を生みました。印象としては、世界全体が後退しており、ナショナリズムが相対的に上昇した感があります。

冷戦終結後、パックスアメリカーナの時代が到来し、中国ではアメリカの「独覇」と言われる状況となりました。その後、世界は構造的に変化し、各国の問題や課題は国境を越え、一国だけでは解決できないような問題もあるように見えます。

台湾の外交を見るだけでも、中国がいかに対外工作に腐心したところで、アメリカの思惑が絡めば一筋縄ではいかないような状況です。例えば、台湾との断交を決めたラテンアメリカの小国(ドミニカ、エルサルバドル、パナマ)に対して、アメリカ政府はわざわざ駐在大使を召還して、台湾との交際拒否はアメリカの権益損害と同等だとの意を表明しましたが、アメリカが強硬策に出れば小国は震え上がります。

米政府、台湾と断交の中南米3カ国の大使を召還 中国の影響力拡大に対抗策協議

こうした国際力学に各国の国内問題も連動して、世界が影響を与えあっているのです。もちろん、米中の貿易経済戦争も連動して、少なからず中国国内の政治に影響を及ぼしているはずです。

習近平の時代になってから、パックスアメリカーナに対する公然とした挑戦が続いています。南シナ海の軍事要塞化のほか、「一帯一路」もその動きのシンボルと言われています。

もちろんそれは、習近平の思い込みや暴走だけではありません。内部には不協和音や派閥の内ゲバなどがあります。また、全員一致ではないにしても、習近平の権力集中には共産党員は全員賛成しています。しかも、その背後には中華思想のベースがあります。それは、自己中心、自国中心の思想から「華」という優越意識、「自大」の自信過剰です。

大中華には自大の中華思想は欠かせません。もしも、習近平の時代にその自大の自信過剰が出なかったとしても、第二、第三の習近平の時代に必ず出ます。それは中華の「宿命」「さだめ」なのです。

しかし、中華の弱味も多くあります。中国が世界各国の大学に開設を進めてきた孔子学院について、欧米では「諜報センター」とまでいわれ、「中国共産党の宣伝機関」「学問の自由の敵」だとまで批判され始めています。

中国語学習の孔子学院、米で閉鎖続く 対立で排除の動き

中華の最大の弱味は人類が最も魅力を感じる「ソフトウエア」「ソフトパワーがないことなのです。

image by:  photocosmos1 / Shutterstock.com

※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2018年12月18日号の一部抜粋です。初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込648円)。

こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー

※ 初月無料の定期購読手続きを完了後、各月バックナンバーをお求めください。

2018年11月配信分

2018年11月のバックナンバーを購入する

2018年10月配信分

2018年10月のバックナンバーを購入する

2018年9月配信分

2018年9月のバックナンバーを購入する

2018年8月配信分

2018年8月のバックナンバーを購入する

2018年7月配信分

2018年7月のバックナンバーを購入する

2018年6月配信分

2018年6月のバックナンバーを購入する

※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2018年12月18日号の一部抜粋です。

黄文雄この著者の記事一覧

台湾出身の評論家・黄文雄が、歪められた日本の歴史を正し、中国・韓国・台湾などアジアの最新情報を解説。歴史を見る目が変われば、いま日本周辺で何が起きているかがわかる!

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」 』

【著者】 黄文雄 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎週 火曜日 発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け