接客は丁寧に。どの業界であっても基本となることですが、販売員によっては丁寧にやっているつもりの「へりくだり」が卑屈になってしまう場合もあるようです。それによって顧客が嫌な思いをする場合も多いそうで、決してやってはいけないものについて、接客販売コンサルタント&トレーナーの坂本りゅういちさんが、自身の無料メルマガ『販売力向上講座メールマガジン』でその理由を記しています。
丁寧と卑屈
接客で、お客様に丁寧に接すること。これは、どんな商売でも変わらずに求められることではないでしょうか。
「丁寧」の対義語は、「粗略」とか「ぞんざい」という言葉になるわけですが、これらには、やり方や取り扱いがいい加減という意味があり、それを接客でやっていると、必ずお客様に不快な思いをさせてしまいます。だから、どんなお客様が相手でも、丁寧な接し方は求められるはずです。
ですがごく稀に、一見、丁寧なようで、実は全くそうではない販売員を見かけることがあります。それは、「卑屈」な態度を取ってしまう販売員です。
「卑屈」という言葉には、「自分を賤しめて、服従・妥協しようとする、意気地のない態度」「いじけて、必定以上に自分を卑しめること」のような意味があります。「謙虚」に近いのですが、似て非なるもので、異様なほど、自分を蔑んでみたり(自虐)、やたらと劣等感に苛まれているようなワードを連発するようなことですね。
接客の中では、「いえいえ、私なんて全然ダメですから…」「どうせ自分なんて、これしかできませんから」みたいな言葉を放ってしまいます。その影響で、とても自信なさげに見えてしまうのも、卑屈な人の典型です。
本人は、へりくだって、丁寧な対応をしているつもりなのかもしれませんが、この「卑屈」な接し方というのは、ものすごく気分が悪くなります。さも、いじめられているかのような雰囲気を出されてしまうので、嫌な思いをしてしまうのです。
実際、ちょっとしたことで、やたらとヘコヘコとしてしまうなんて販売員は少なくないのですが、それは、別に丁寧でもなんでもなくて、ただ卑屈なだけなんですね。それで、気持ちよく接客を受けられたと思うお客様なんて、いやしません。
これまでにも何度も言ってきましたが、レベルの高い販売員の方々は、自信に満ち溢れています。自分のサービスは良いものなんだ、と自信を持って、お客様と接しているのです。どれだけ丁寧な応対をしていても、それが決して嫌味に感じることはなくて、むしろ、信頼できる自信を見せてくれます。
これがわかりやすいのが、特殊クレームの応対時です。やたらと卑屈になってしまう販売員は、明らかにお客様に問題があるクレームが起こった時も、延々と卑屈な態度で接してしまいます。「自分たちが全部悪いんです」とでも言わんばかりに、お客様に謝り続けて、余計に火に油を注ぎます。
一方で、丁寧でありながらも、自信あふれる販売員は、妙なクレームが起こった時の対応に違いが出ます。明らかにお客様に問題があるような場合などは、きちんと丁寧に、突っぱねることができますし、ただただ謝って、事を収めるのではなくて、きちんと自分たちのサービスや商品を理解してもらうことを意識します。だから、妙なクレームをつける人も減っていき、ちゃんとしたお客様が残ってくれるようになります。
いつの頃からか、日本人の接客サービスは、とても丁寧なものだとされています。しかし、それはあくまでも「丁寧」ということであって、決して、誰にでもヘコヘコするような「卑屈」なものではないのです。
それを勘違いしている人たち(店側もお客様側も)が、「お客様は神様」だとか、わけのわからない事を言い出します。そもそも、「お客様は神様」の意味すら履き違えていて、恥ずかしいことなのだということにも気づいていません。
あなたの店の接客は、きちんと正しく「丁寧」でしょうか? 一つ間違えば、それは単なる「卑屈」になりかねないポイントです。注意しておきたいところですね。
今日の質問です。
・「丁寧」な対応と、「卑屈」な対応には、どんな違いがありますか?
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