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日経平均2万円割れの衝撃。このまま日本は沈んでしまうのか?

連休明けの25日、1年3ヶ月ぶりに2万円を割り込んだ日経平均株価。実にこの2ヶ月間で5,000円以上も下落したこととなりますが、株価は、そして景気はどのように変化してゆくのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では著者の津田慶治さんが、国内外の様々な要因を分析し今後の世界の行く末を占っています。

日米株価暴落

FOMCで、利上げ決定して日米株価が一段と下がり、今年の最安値になってきた。今後を検討しよう。

NY株価

NYダウは、12月12日2万4,828ドルまで戻り、その後、12月19日2万3,162ドルまで下げ、4月2日の2万3,344.52より安く年初来安値になり、さらに、12月21日2万2,445ドルと下げた

日経平均は12月14日2万1,871円から下がり、NY株に連動したのと円高111円台に入り、12月20日2万0,282円まで下げ、3月26日の2万0,347円より安く年初来安値になり、12月21日2万0,166円と一段安になった。一時2万0,006円まで下がり、2万円割れ寸前まで行った。そして25日ついに2万円割れとなった。

ハイイールド債よりリスクが少し低い「レバレッジローン債」のスプレッドが急上昇し大暴落している。この債権を日本は7割も持っている。そして、その債権を大量に買っているのが、日本の地方銀行であり、今後、この損も地方銀行は被ることになる。ゆうちょ銀行の貯蓄限度額の引き上げなどの要因もあり、地方銀行の倒産や救済合併が増えることになりそうである。

再三注意をしてきたが、日銀のマイナス金利継続は、金利での収益を見込めないことで、リスクの高い海外債権を持ち、その損も膨らみ、日本の地方銀行を潰すことになっている。早く金利を上げないと地方銀行の存立危機になっていく。

株暴落の原因

市場の期待を裏切りFOMCが、利上げを行ない、来年も2回程度の利上げを見込むことで、失望売りになったようだ。その上に米国政府閉鎖のリスクも出て、しかもトランプ大統領が長期閉鎖を示唆したので株価は下がった。米国の景気は、資産価格に連動しているが、その株が値下がりすると、景気は落ちることになる。法律家のパウエル議長の限界で、トランプ大統領はFRB議長解任を検討したと報道される事態である。

一方、日本も日銀や財務省などは、株価が下がる方向を認識しながら、こちらも何も手当てをしなかった。このため、日銀失望売りの側面もある。日経平均ETFを買入れ増を行うとして、株価を維持するべきでだった。金融資産は、どこかでハイ・インフレして価値を減価させるしかないから、資産を株などに移すべきであるが、それを促進しないのは、おかしい。

老人層の金融資産価値は減価しても、若い層の資産を株に移すような誘導が、絶対必要である。現時点の日経平均は、PER10.5倍程度と非常に安価な水準である。ここで株から金融資産に移動したら、将来、若い将来ある人たちに大きな禍根を残すことになる。

今後の見通し

そして、日米株価共に、2018年は陰線で終わることが確実になった。3月、4月の安値を抜けて値下がったことで、トレンドも下げ方向が確定。来年前半も大荒れの相場になるだろう。

日米ともに景気指標はまだ悪くないが、株価が下がり、今後逆資産効果が出て景気は下降することが確実である。株価下落の先行指標である住宅指数は、2017年11月にピークをつけている。約1年後に株価が下がり始めると言われているが、今回も同様な様相になってきた。まだ下がるが、どこまで下がるかが次の問題になる。そして、いつ底値になり、上がり始めるのかでしょうね。

日銀が日経平均ETFを買い増すと、早期に現物株が少なくなり、空売り比率50%以上を行うと、買戻し時現物が少ないので、値上がりの速度が高まり、簡単に空売りができなくなる。そうすれば、底値を付ける時期が早まるし株価の下落も少なくできる。国債買取は少なくして、その分、日経平均を買い増すことだ。特に2万円割れ時が狙い目である。

トランプ大統領の政策期待に

FRBの利上げでパウエル議長が、市場との対話に失敗して、大幅な株価下落になり、これを受けて、NY連銀ウィリアムズ総裁が、FRBとして政策を再考する用意あり、市場が示すシグナルを注視していくとしたが、それでも株価は400ドル下落。株価の維持・上昇にはトランプ大統領の政策に期待するしかない。トランプ大統領は、事前にFRBに対して利上げをするなとのツイートで、利上げで株価暴落とFRBに責任押付けに成功したが、その後、政府の閉鎖が長期になるとして、株価を下げている。

しかし、今後の任期中にグレート・リセッションになったら、再選がないことを、トランプ大統領は良くわかっている。

このため、今後、株価を上げる政策を打つことで、2年後の再選に向けて有利な立場を作ると見る。

現時点の米国経済は、7月-9月米国GDP成長率で前期比+3.4%であり、失業率が3.6%と史上初めての水準にあり、完全雇用状態でもある。米国経済は絶好調な状態であり、リスク・プレミアムの原因は、米中貿易摩擦による景気減速を見ているからである。このリスクを軽減すれば、株価は上昇することになる。

ということは、3月までに米中貿易戦争を一時休戦に持っていくことが必要になる。市場も流動性相場から実績相場への転換ができず、株価上昇には、FRBが利上げをしない流動性相場の継続と貿易戦争の一時的な緩和しかないと見ている。

このため、今までの関税UPは持続させるかもしれないし、ネット問題などの交渉も持続させるが、新たな関税UPは当分しないような気がする。

しかし、トランプ大統領は、劇的な合意を演出するために、中国が妥協の方向であるにもかかわらず、中国に妥協できないような強烈な要求をしている。これもシナリオで、事前には希望なしと国民に思わせるようだ。そして、株価を大幅に下げておき、びっくりさせて、株価上昇を大きくしたいようである。

このため、ウィリアムズ総裁の発言で300ドル株価を上げた時点で、トランプ大統領は、政府の長期閉鎖という発言で株価を400ドルも下げさせた。都合700ドル分も下げたことになる。

トランプ大統領の優先項目は、支持層を維持して再選を果たすことと米国の財政破綻を防ぐことであり、遠隔地の安全保障などは、それより優先順位が低いし、金食い虫の覇権維持の順位はもっと低い。

トランプ大統領が中東から撤退へ

トルコのエルドアン大統領は、シリアのクルド人地域で攻勢に出るとしたことで、クルド人地域にいた米軍を完全撤退するとトランプ大統領は命令し、それに対して同盟を重視して反対するマティス国防長官は辞任することになった。そして、シリアには完全不介入政策にシフトするという。

シリアのクルド人は、米軍の支援なく、トルコ軍との戦闘に入ることになるし、イスラエルもシリアに米地上軍が居なくなることで、イラン軍の攻撃を受けやすくなる。中東の米国同盟国は慌てている。サウジは、事前にロシアにすり寄ったが、イスラエルはロシアと問題を起こしている。

アフガニスタンからも米軍を徐々に撤退する方向であり、米国は今後、中東から撤退することになる。そして、この地域覇権をロシアに渡す

ペンス副大統領が信仰する福音派は、聖書に書かれているようにするために、ここで米軍を中東から撤退して、ハルマゲドンを期待しているように感じる。聖書に記述されているように歴史を作る義務があると思っているのが、福音派である。

そして、トランプ大統領は、今後、軍事予算を削減して、日本以外のアジアからも撤退と言い出すことが想定できる。しかし、日本に駐留する米軍は増えている。これは、軍人の給与以外の駐留経費を日本が負担しているので、米軍経費削減のためには日本に米軍を置くことは米国にとって有利だからである。しかし、それでも物足りないと、駐留経費の全て(軍人の給与も出せと日本に要求している。

しかし、韓国は日本ほどには米軍駐留経費を出さないので、米軍は韓国からは撤退することになる。米軍は欧州からも撤退しているし、世界各地から撤退している。

自国の安全保障のために、米軍は太平洋と大西洋を守るが、ユーラシア大陸からは撤退で、日本から英国までを守りそれ以外は不介入政策にシフトすると見ている。マティス国防長官を切ったことで、トランプ大統領は自分の世界観、他国の思惑を無視した米国第一主義を実現できることになった。

トランプ大統領が目指す方向

トランプ政権の高官離職率は6割にもなり、トランプ大統領と違う意見の高官たちは次々に辞任している。結局、トランプ大統領が、すべてを決めて、各省の長官はトランプ大統領の命令に従うしかないようである。今までのエリートたちが作った米国を潰して、庶民の白人たちが安心して暮らせる社会にすることを目指している。

エリートが好きな理念とか人権保護という観点はない。米国の国益しか目にないのがトランプ大統領であることを確認した方が良い。

このためには、世界の覇権やグローバル化などの今まで正義だとしてきた世界観を潰すしかないようだ。貿易赤字もゼロにして、米国に製造業を戻すようだ。反グローバルが正義に変わったと見る。

日米貿易協議でも、今までのような自動車の輸出ができるかどうか分からないと思う。今後もトランプ大統領に相場も社会も大きく影響されることになる。

米国第一主義のために、世界の中心ではなくなった米国に対して、ラガルドIMF専務理事は、ドル基軸通貨制度に代わる通貨制度の構築が必要と述べているし、米国中心の体系からの脱却を急ぐことになる。

もう1つには、グローバルを促進したのは、インターネットであるが、そのネット空間でも中国が優位になり、空間を流れる情報を盗めることで、中国のインターネットと米国のインターネットは接続しない可能性が出てきた。ハイテク分野を死守するのが米国経済には必要であるからだ。このため、2つのネット・ブロック経済圏ができることになる。この準備で、中国は「デジタル・シルクロード」計画で中国のインターネット範囲をユーラシア大陸全体で拡大している。

また、米国は「チベット相互入国法」を成立させたことで、政府機関の中国人が米国入国できなくなる。人の移動も制限する方向である。しかし、トランプ大統領は、これも取引(ディール)材料としか見ていない。

次の世界秩序を確立するまで、時間が必要になるが、今までの理念やグローバル化が正義ではなくなる。そして、人、物や情報が自由に移動できた今までの社会とは違う世界が待っているかもしれない。

さあ、どうなりますか?

image by: shutterstock

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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