日本への言及はゼロ。発表スタイルが変わった金正恩「新年の辞」

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北朝鮮が毎年1月1日に発表する「新年の辞」。2019年はその発表スタイルに大きな変化があり驚いたと語るのは、メルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』の著者で北朝鮮研究の第一人者、宮塚利雄さんです。祖父も父もなし得なかった米朝首脳会談を実現した金正恩が「新年の辞」で語った内容を分析し、その発言の背景を鋭く解説しています。

恒例の北朝鮮「新年の辞」分析

「一年の計は元旦にあり」ではないが、北朝鮮研究者の新年の作業は1月1日に発表される「新年の辞」の分析から始まる

今年の新年の辞を朝鮮中央テレビで拝見したが、今までの新年の辞と発表スタイルが違っていることに驚いた。

テレビではなんと労働党庁舎の接見室とみられる部屋に向かうところから始まったが、これにいつものとおりの妹の金与正が笑顔で従った。映し出された部屋には金日成主席と金正日総書記の肖像画が掲げられ、壁の書架には本がぎっしり並べられていたが、棚のサイズがみな同じであることなどから推測すると、我が資料室にもある『金日成選集』か『世紀とともに』のような本類である。

重厚なソファーにゆったりと座り、画面に向かって話し始めたこれまでは立ったままで読み上げるのが普通であり、父の金正日はそれすら拒み、三紙合同社説という形で新年の辞を紹介し、自らの顔と肉声を出すことはなかった。

金正恩は朝鮮半島の最高指導者なら正月くらいは男性の民族服(パジチョゴリ)で登場するのかと思ったが、背広にネクタイ姿である。韓国の大統領はたいてい民族服を着用するのが通例であるが、北朝鮮の金王朝三代が民族服姿で国民の前に出てきたことは思い出せない。

昨年、金正恩は父も祖父もなしえなかった「にっくき米帝の首魁」とシンガポールで会談を実現させたこともあってか、新年の辞の発表スタイルは、まったく新しい金正恩スタイルであり、「金正恩時代の到来」を知らしめるかのようであった。

さて、肝心の新年の辞であるが、金正恩は肉声で国民に「朝鮮半島に恒久的な平和体制を構築し、完全な非核化を進もうとすることは、党と政府の不変の立場で、私の確固たる意志だ」と強調し、「これ以上、核兵器を作りも実験もせず、使いも拡散もしない」と述べた。

これを額面通りに受け取るならば、北朝鮮はアメリカや国際社会の圧力に屈して、「核兵器作らず」と言わざるを得なかった、とも受け取れるが、国内の経済的困窮や国民に蔓延する戦争緊張感の継続した圧力に対する拒絶=嫌金正恩政権ムードも背景にあったのではないか。

しかし、アメリカのトランプ大統領に対しては「いつでも再び対座する準備ができており、必ず国際社会が歓迎する結果を出すために努力する」と再会談に意欲を示したが、一方で、「米国が約束を守らず、我が人民の忍耐心を読み誤って制裁・圧迫に出るなら、仕方なく平和と安定のための新たな道を模索せざるを得なくなる」という文言を付け加えることも忘れなかった。

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