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ヒアリングに臆するな。ニューヨーカーも大した話はしていない

海外で生活していても、現地の人同士の会話を聞き取るというのは、外国語習得の中でも大きく高いハードルです。しかし、そのハードルを超える日はある日突然やってくると、メルマガ『NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明』の著者の高橋克明さんは言います。そして、ニューヨーカー同士が話しながら爆笑しているのも、内容は他愛のないことだと知ることで、外国語習得に臆する気持ちは不必要だと気づいたのだそうです。

知っておくべき外国語習得の最初の1歩

まったく英語も話せない状態で渡米して、いちおうは、今、ハリウッドスターにインタビューするようにまでにはなりましたが、ハッキリ言って、相変わらず僕は英語が苦手です。

以前もここで書いたように、この街は、第2外国語としての英語であふれている。ニューヨーカー、みんな世界各国からその国独自の訛りを持って、寄り合って、成り立ってる状態です。

特にハリウッドスターなんて、世界各国の記者からの訛りだらけの英語を聞き取るのに慣れている。なので、僕の日本語訛りのカタコト英語にも笑顔で答えてくれる。トム・クルーズも、レオナルド・ディカプリオも、キャメロン・ディアズも、リチャード・ギアもそうでした。で、僕の後は、めちゃくちゃアイルランド訛りの英語の質問を、韓国訛りの英語の記者の言うことを、変わらない笑顔で聞いている。

まず、英語が話せない状態の時って、「アメリカ人は何を話しているだろう」って、いつも思っていました。それに彼ら特有の大爆笑がついてくる。「ナントカ、カントカ…ワーハッハ!ワハハ!!!」って感じで。一体、どんなオチで、どんなおもしろ話なんだろう、と勝手に妄想が膨らんでいました。

結論から言うと、連中、大したことしゃべってません。いや、これ、本当の話。自分の理解できない外国語に直面すると(特に日本人は)誇大妄想して、とても有益な情報を、とてもハイクオリティなジョークを、とても思慮深い真理を、話し合ってるに違いない、と思い込んでしまう。

僕が、初めて、彼らの英語を本当の意味で最初から、最後までクリアーに理解できた瞬間を今でも覚えています。それはある日、急にやってきます。渡米して数年経った頃でした。意識せず、無意識の中で、あれ?オレ、全部、聞き取れている。全部、理解している、と気づく瞬間がある。

そう、意識している段階で、耳がついて行ってない。無意識下で理解できているときこそ、本当の意味で言葉を理解しているとき。気づく、感じです。それはふいにやってきます

ある日のお昼休み。ランチを食べて、編集部に戻る際、1階ロビーからエレベーターに乗った時のことでした。たまたま同じようにお昼のランチ休憩から戻ってきた同世代の白人4人組の男性とエレベーターが一緒になりました。4人はエレベーター内の四隅に位置し、ちょうど遅れて入ってきた僕が真ん中に、彼らに囲まれるように中央で立っている状態でした。

4つのコーナーの彼らをそれぞれA、B、C、Dとします。僕はお昼を食べてお腹いっぱいで、少し眠気もある中、何も考えずぼーっと上部の各階を示す上がっていくランプを見ていました。

AがBに話しかけています。「お昼なに食べたの?」

Bが答えます。「いつものサブウェイサンドイッチさ(チェーン店)」

Cが割り込みます。「あそこのパストラミサンドイッチ、最高だよね!」

Dが呼応します。「そうそうそうそう!パストラミはもちろんエキストラ(増量)でね!」

B「オレも毎日でも飽きないよ、あそこなら」

A「粗挽きマスタードもつけるよね?」

D「もちろん!」

B「サワークリームも?」

Dはウインクしながら答えます。「あったりまえだろ♪」

AとBとC「ワーハッハハ!アハハ!」

………どおおおおでもええわっ!!!!!

無意識すぎたのでしょう。それに加えて長年、彼らの言葉を理解できなかった悔しさとストレスと、そしてそれをついに理解できた瞬間の嬉しさと、でも、想像と違ってあまりの内容の薄さに憤りも感じたのかもしれません。つい大声で、日本語で言い放ってました。

さっきまで黙っていた中央に立っているアジア人が、いきなりわけのわからない外国語で叫んだので、4人は唖然としていました。謝るべきところ、僕は逆に(気まずさも手伝って)ちょっと4人をにらみ気味で、エレベーターをでました。(勝手に)こっちは長年の間、とてつもなくハイセンスでハイクオリティーな内容を(勝手に)想像してたんだぞ!なにが粗挽きマスタードだバカヤロウ。

連中、大したことしゃべってません。外国語の習得の最初の最初の最初の1歩は、そこからです。ただのサンドイッチ屋をミシュラン3つ星くらいに言ってる連中です。誇大妄想で、すっごいこと喋ってるって勝手に思い込むことをまずやめること。

難しそうな顔して話をしていても、どうせサワームリームをつける、つけない、そんなことだ、くらいに思った方がいい。

image by:wavebreakmedia, shutterstock.com

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全米発刊邦字紙「NEWYORK BIZ」CEO 兼発行人。同時にプロインタビュアーとしてハリウッドスターをはじめ1000人のインタビュー記事を世に出す。メルマガでは毎週エキサイティングなNY生活やインタビューのウラ話などほかでは記事にできないイシューを届けてくれる。初の著書『武器は走りながら拾え!』が2019年11月11日に発売。

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【著者】 高橋克明 【月額】 初月無料!月額586円(税込) 【発行周期】 毎週水曜日

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