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小銭を盗まず、裸も見ない。モースが驚いた日本人の類稀なる美徳

日本人同士なら当たり前で誰も書き記したりしないため、忘れ去られてしまった文化や習慣は案外多いのではないでしょうか?遠い昔にやってきた外国人が見た日本には、私たちが知らない「普通の日本人」が描かれているかもしれません。『武田邦彦メールマガジン『テレビが伝えない真実』』の武田邦彦中部大学教授が今回紹介してくれるのは、大森貝塚の発見者としても有名なエドワード・モースが驚き不思議に思った明治時代の日本人の様子です。

親日家エドワード・モースが驚いた日本人の類稀な道徳性

大森貝塚を発見したエドワード・モースは、ことのほか日本びいきで、明治10年6月に横浜に上陸して、開通したばかりの横浜─汐留間の汽車に乗り、大森を過ぎたあたりで貝塚を発見しました。その後も彼は日本に特別の親近感を持ち、家族と一度、さらにお一人で一度、来日され、日本の文化を正しくアメリカに伝える努力をした親日家でした。

そのモース、貝塚のモースとして知られている彼は、来日中に観察した日本を巧みな絵と文で記録し、「日本人の住まい」などの著作物を残していますが、その中に、「鍵を掛けぬ部屋の机の上に、私は小銭を置いたままにするのだが、日本人の子供や召使は一日に数十回出入りをしても、触っていけないものは決して手を触れぬ…」とあります。

明治の初めの日本の家屋といえばもちろん木造で、家の中は障子と襖(ふすま)、鍵などはまったくかからない、というより、日本は亜熱帯気候で少し湿度が高い土地柄であることから、朝起きたら雨戸をあけ、障子や襖は日中は開けっ放しにするのが常でした。

その意味では現代にいうプライバシーというのはありませんでしたが、その代わり「他人の部屋をのぞいてはいけない」という不文律もあったのです。例えば、女性が部屋で着かえるときにはそっと襖を閉めるだけでよく、もし男性の不心得者が、女性が着かえるところを覗き見ようとして襖でも明けようものなら、同僚の男性に殴られるということで社会の規律が守られていたのです。「女が着替えるところを見ようなんて!男の風上にも置けぬっ!」というわけです。

でも、江戸時代の男性と女性の関係については、また別の機会に詳しく書きますが、極めて厳密にTPO(time=時、place=場所、occasion=場合)が守られていました。いくら昔でも男性と女性だから、お互いに知りたいし、特に男性は女性の容姿や裸体に興味があることは今も昔も変わりません。そんな記録は文章でも春本(色本)にも浮世絵にも書かれていることです。

でも、男女の夜の密会とか、夫婦の秘め事などの場合はそれなりなのですが、昼間とか、共同の場所などでは、まったくその素振りを見せないのが日本男児だったのです。

エドワード・モースも同じように日本人の男性の「奇妙な行動」に驚いています。

E.モースが驚いた、明治時代の日本人男性の行動とは

ある時、モースとアメリカから日本に来た女性の医師とが、明治の初めの東京を二人で一人乗りの人力車に乗って目的地に向かっていました。当時の東京は現在と全く違い、日本橋からちょっと離れると、もちろん道は舗装されていませんし、自動車がない時代ですから、細い道の両側にはわずかに雑草の生えた側道がある、そんな街道でした。

そんな場所を人力車で走っていると、モースの左側の道端で若い女性が盥(たらい)で湯あみ(お風呂)に入っているではありませんか!しかも、もちろんなにも身には着けていません。それに驚いたモースは、その女医に向かって「ちょっと、ちょっと、あれを見てよ。女性が…」と話しかけたのです。二人が驚いたのは想像に難くありません。

ところがその後、モースたちはさらに驚き、感心したことが起こったのです。自分たちは道端で湯あみする若い女性に驚いてそちらを見たのですが、自分たちの人力車を引いていた車夫は二人ともまったく女性の方を見なかったということに気が付いたのです。その女性の方もちょっと体をひねっただけで、声を上げたり、隠したりはしなかった。

モースは後にこの時の経験を「最初は日本人の若い女性が裸で、こともあろうに道端で体を洗っているのを見て、「野蛮だな」と思ったが、よくよく考えていると、アメリカでは女性が海水浴で肌が見えるような水着を着て男性に見せようとしている。それに比べると、我々だけが気が付いた。もしかすると、野蛮なのは日本人ではなく、我々じゃなかったのか?」と書いています。

四方を海で囲まれていた日本人は、きわめて高い道徳性を持ち、それは外国の人が理解できないレベルだったのです。最初に書いた部屋の机の上に置いた小銭がなくならない…そこにはお腹を減らした子供や、貧乏な召使が出入りするのに、小銭はいつもそのままになっている!!そんな国は世界で日本しかなかったのです。

image by: John Leung, shutterstock.com

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中部大学教授の武田邦彦です。主に環境問題や資源に関して研究を行っております。 私のメルマガでは、テレビや雑誌新聞、ブログでは語ることが出来なかった原発やエネルギー問題に鋭く切り込みます。

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