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「試験結果で落ち込む子ども」を復活させるための3つのステップ

さまざまな家庭の教育の悩みにアドバイスを送る柳川由紀さん。今回、メルマガ『子どもを伸ばす 親力アップの家庭教育』に寄せられたのは、センター試験の結果に落ち込む息子さんを立ち直らせたいというものでした。柳川さんが伝授する復活させる力「レジリエンス」を鍛えるための心理学的なアプローチとは?

折れない心を作るには?

Q:息子はセンター試験の結果が良くなかったようで、ひどい落ち込みようです。何と声を掛けても落ち込みから抜け出せず、「もうダメだ、終わった」と二次試験への準備もままなりません。落ち込みから回復させるための魔法があればいいのにと思います。親としてどうサポートできるでしょう?(受験生の保護者様より)

柳川さんからの回答:復活する力「レジリエンス」の鍛え方

A:頑張ったからこそ、実力を出せなかった場合は落ち込みが激しくなるのでしょう。人がなんと言おうと、無力感や喪失感が大きく、それはなかなか消えません。

今後の人生についてアドバイスすることや、慰めの言葉は、再スタートを切った後に幾らでも言う機会があります。ですから、何も言わずに「お疲れ様」とこれまでの努力を労うのが一番です。

失敗や挫折から立ち直る力、復活する力レジリエンスと言います。このレジリエンスを磨けば、落ち込んでもその「落ち込み」を引きずらず、立ち直りのスピードも速くなります。ポジティブ心理学、認知心理学の面からこのレジリエンスの鍛え方をお伝えします。

1.思考の罠に気づく

落ち込みの原因が正しい場合はともかく、実はただの思いこみや考えすぎ、的外れである場合が多いのです。これを「思考の罠」=心理学では「認知の歪み」と言います。挫折から立ち直る力を阻害する最も有害な罠=認知の歪みを7つご紹介します。

  1. 個人化:問題が起きると自分のせいにして自己評価を下げ、自分を責める
  2. 他人化:問題が起きたのは他人のせい、と他人を批判したり非難したり周囲に不満を持つ
  3. 正義化:自分の意見を曲げずに、「○○べき」と思いこむ
  4. 過剰思考:一つの出来事を「いつも」「すべて」のように一般化し、将来を悲観する
  5. 無力感思考:自分は何もできない非力な人間だと思いこむ
  6. 視野狭窄:ネガティブな事ばかりに注目する
  7. ラベリング:一つの事象でものごとを決めつける

落ち込んでいるお子さまが、どの罠にはまっているのかを振り返ってみましょう。

2.ABC分析をする

現実的で前向きな考え方を養うために「ABC理論」をご紹介します。これはアルバートエリスという心理学者が提唱した理論です。この理論を知ると、困難に立ち向かう力を養うことができます。

A=Activating event 出来事

B=Belief system 信念(捉え方)

C=Consequence 結果(沸き起こる感情や行動)

例えば、

A:センター試験の出来が悪かった

B:もうだめだ、行きたい大学に行けない、終わった。

C:諦めて勉強をしない

人の心理はこのような段階を踏んでいきます。ここでBの信念のうち、落ち込みに繋がる信念をイラショナルビリーフ(不合理な信念)と言います。

反対にAの出来事を成長の糧にするような考え方をラショナルビリーフ(合理的な信念)と言います。例えば、「今回の出来は悪かったが、理想とギャップがあったのかもしれない、自分と向き合うチャンスだ」と捉えたらどうなるでしょう?

C:自分と向き合い、行動を起こす(再挑戦や別の受験先に変更)

というように、自分自身の心をマイナスにするのではなく前向きに捉え、ずるずるとマイナスに考えることから抜け出し、行動を起こすまでが早まります。

自分の心を客観的に把握し、環境に適応するよう整えていくのに役に立つのがABC理論です。この理論をおぼえて「心のコントロール力」をつけましょう。

3.正のストロークを自分に向ける

「正のストローク」とは、心理学者のエリックバーンが考案した、肯定的で温かみのある考え方、態度、発言のことを言います。例えば「頑張ってるね」「すごくいいよ」と認めたり、励ましたりする言動です。

本来は他者に向けられる場合が多いのですが、これを自分に向けることでレジリエンスを発揮する力が高まります。「自分はダメだ」と落ち込むばかりではなく、「精一杯頑張った、これまでの努力はすごい」と自分を認める言葉を自分に向けましょう。

家庭教育アドバイス…「ソーシャルサポートの効用」

「辛い」「苦しい」という気持ちを吐き出す場所を作ることが大切です。また、吐き出した時に、そのままを受容してくれる環境にあることがとても大事です。つまり励まされたり、アドバイスされたりする前に、まずは「そうだったんだね」とありのまま受け入れてくれる場所です。

心理学の研究ではコミュニティに所属し、ソーシャルサポートを得られる人は精神が安定することが判明しています。ソーシャルサポートとは、周囲からの心理的な援助を意味します。コミュニティとは、3人以上の集まりで、少なくとも月に1回、1時間以上一緒に過ごす時間がある集まりを言います。

例えば、家族、職場、学校、部活、同好会、塾仲間、習い事仲間などがあります。こうしたコミュニティに3つ以上所属しているのが理想です。一つだけのコミュニティでは人間関係が広がらず、お互いに依存し合う関係で問題が発生しやすいからです。

コミュニティに所属することでレジリエンスを高めることができますから、積極的に所属するよう意識しましょう。

image by: milatas, shutterstock.com

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家庭教育のプロとして、教育相談員の経験を生かしながら、親としての接し方のコツをお伝えします。子どもは、親のサポートの仕方でずいぶん変わります。子どもの能力を最大限に引き出せるよう、まずは親力をアップさせましょう。専門である教育心理学、家庭教育学をベースに家庭の中でできる「子どもを伸ばすためのコミュニケーション術」を「親の力」に視点を置き配信予定です。乳幼児、小学生、中学生、高校生、大学生など発達段階に応じた子どもへの声掛けを具体的にご紹介します。

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【著者】 家庭教育アドバイザー 柳川由紀 【月額】 初月無料!月額508円(税込) 【発行周期】 毎月 第1月曜日・第2月曜日・第3月曜日・第4月曜日(年末年始を除く) 発行予定

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